楽訓 / 巻之上・総論
一いにしへの郢曲早歌の類、聲をかしく氤氳としてつゞしりうたふも、いさゝか心ゆくばかりなるは、湮鬱を開きて、氣をやしなふ助となりぬべし。古人は、詠歌舞蹈して、其血脈をやしなへり。是心を樂ましめ、氣をやしなふ術なるべし。
新字:一いにしへの郢曲早歌の類、声をかしく氤氳としてつゞしりうたふも、いさゝか心ゆくばかりなるは、湮鬱を開きて、気をやしなふ助となりぬべし。古人は、詠歌舞蹈して、其血脈をやしなへり。是心を楽ましめ、気をやしなふ術なるべし。
書き下し
一いにしへの郢曲早歌の類、声をかしく氤氳としてつづしりうたふも、いささか心ゆくばかりなるは、湮鬱を開きて、気をやしなふ助となりぬべし。古人は、詠歌舞蹈して、其血脈をやしなへり。是心を楽ましめ、気をやしなふ術なるべし。
現代語訳
昔の郢曲や早歌の類を、声おもしろく、ゆったりと口ずさんで歌うのも、少し心が晴れる程度であれば、ふさいだ気分を開いて気を養う助けとなるでしょう。古人は歌を詠み、舞い踊って、その血脈を養いました。これは心を楽しませ、気を養う術なのでしょう。
解説
郢曲は平安時代以来の宮廷の歌謡、早歌は鎌倉時代に武家の間で流行した宴曲を指します。益軒は、こうした歌を程よく口ずさむことがふさいだ気分を晴らし、気を養う助けになると言います。歌い舞うことで血のめぐりを養うという見方は、心と体を一体として考える益軒の養生観そのものです。カラオケや合唱、鼻歌でも、声を出して歌うと気分が軽くなるのは多くの人が経験していることでしょう。楽しみを暮らしに取り入れる知恵です。
この章句が説くこと
歌気養生楽しみ心身
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