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楽訓 / 巻之上・総論

一天地の御惠をうけて人となり、天地の御心をうけて心とせし人にしあれば、天地の御心にしたがひ、我が仁心をたもちて、常に樂み、溫和慈愛にして情ふかく、人をあはれみ惠み、善を行ふを以て樂とすべし。人の惡を戒めんため、怒り詈るは、已む事を得ざればなり。常には和樂にして、其氣を養ふべし。されど又和に專一にして禮なければ、一偏に流れ亂れて、樂をうしなふ。

新字:一天地の御恵をうけて人となり、天地の御心をうけて心とせし人にしあれば、天地の御心にしたがひ、我が仁心をたもちて、常に楽み、温和慈愛にして情ふかく、人をあはれみ恵み、善を行ふを以て楽とすべし。人の悪を戒めんため、怒り詈るは、已む事を得ざればなり。常には和楽にして、其気を養ふべし。されど又和に専一にして礼なければ、一偏に流れ乱れて、楽をうしなふ。

書き下し

一天地の御恵をうけて人となり、天地の御心をうけて心とせし人にしあれば、天地の御心にしたがひ、我が仁心をたもちて、常に楽み、温和慈愛にして情ふかく、人をあはれみ恵み、善を行ふを以て楽とすべし。人の悪を戒めんため、怒り詈るは、已む事を得ざればなり。常には和楽にして、其気を養ふべし。されど又和に専一にして礼なければ、一偏に流れ乱れて、楽をうしなふ。

現代語訳

天地の恵みを受けて人となり、天地の御心を受けて心とした人なのですから、天地の御心に従い、自分の仁の心を保って、常に楽しみ、穏やかで慈しみ深く情け深くして、人を哀れみ恵み、善を行うことを楽しみとすべきです。人の悪を戒めるために怒りののしるのは、やむを得ないからです。ふだんは和やかに楽しんで、その気を養うべきです。しかしまた和やかさ一辺倒で礼がなければ、一方に偏って流れ乱れ、楽しみを失います。

解説

益軒は、常に和やかに楽しむことを勧めながら、和やかさだけでは足りないと付け加えます。これは『論語』学而篇の「和を知りて和すれども、礼を以て之を節せざれば、亦行うべからず」と同じ考え方です。仲のよさに甘えてけじめを失うと、かえって関係は乱れ、楽しみも失われます。親子や職場の人間関係でも、穏やかさと節度の両方があってこそ長く心地よく続きます。叱るのはやむを得ないときだけ、という一文も子育てに通じる言葉です。

この章句が説くこと

和楽礼仁節度怒り

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