楽訓 / 巻之上・総論
一世の人、まどしくしては憂ひ苦み、富貴をうらやみて樂なく、富貴にしてはおごり怠りて、欲をほしいまゝにし、財をつひやして、樂を求むれど、欲にやぶられて、かへりて自らくるしみ、人を苦ましむ。すべて富貴も貧賤も、其ねがひ外にありて、內に道を得ざれば、苦のみにて樂なし。
新字:一世の人、まどしくしては憂ひ苦み、富貴をうらやみて楽なく、富貴にしてはおごり怠りて、欲をほしいまゝにし、財をつひやして、楽を求むれど、欲にやぶられて、かへりて自らくるしみ、人を苦ましむ。すべて富貴も貧賤も、其ねがひ外にありて、内に道を得ざれば、苦のみにて楽なし。
書き下し
一世の人、まどしくしては憂ひ苦み、富貴をうらやみて楽なく、富貴にしてはおごり怠りて、欲をほしいままにし、財をつひやして、楽を求むれど、欲にやぶられて、かへりて自らくるしみ、人を苦ましむ。すべて富貴も貧賤も、其ねがひ外にありて、内に道を得ざれば、苦のみにて楽なし。
現代語訳
世の人は貧しいときには憂え苦しみ、富貴をうらやんで楽しみがなく、富貴になるとおごり怠けて欲をほしいままにし、財を費やして楽しみを求めますが、欲に破られてかえって自ら苦しみ、人をも苦しめます。すべて富貴であっても貧賤であっても、その願いが外にあって、内に道を得ていなければ、苦しみばかりで楽しみはありません。
解説
貧しければ富をうらやみ、富めばおごって欲に振り回される。どちらにしても、願いが外にばかり向いていれば苦しみしかないと益軒は言います。楽しみの有無を決めるのは財産ではなく、内に道を得ているかどうかです。収入が上がっても満たされない、もっと欲しくなるという経験は多くの人にあるでしょう。お金は大切ですが、それだけで幸せは測れません。自分の内に何を大切にするかを持つことが、豊かさの本当の土台です。
この章句が説くこと
富貴貧賤欲楽しみ道
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