楽訓 / 巻之上・総論
一人のうれひ苦みを慮りて、人の妨となる事を施すべからず。常に心にあはれみありて、人を救ひめぐみ、かりにも人を妨け苦むべからず。我ひとり樂みて、人を苦むるは、天の惡み給ふ所おそるべし。人と共に樂むは、天のよろこび給ふ理にして、誠の樂なり。
新字:一人のうれひ苦みを慮りて、人の妨となる事を施すべからず。常に心にあはれみありて、人を救ひめぐみ、かりにも人を妨け苦むべからず。我ひとり楽みて、人を苦むるは、天の悪み給ふ所おそるべし。人と共に楽むは、天のよろこび給ふ理にして、誠の楽なり。
書き下し
一人のうれひ苦みを慮りて、人の妨となる事を施すべからず。常に心にあはれみありて、人を救ひめぐみ、かりにも人を妨け苦むべからず。我ひとり楽みて、人を苦むるは、天の悪み給ふ所おそるべし。人と共に楽むは、天のよろこび給ふ理にして、誠の楽なり。
現代語訳
人の悲しみや苦しみを思いやって、人の妨げとなることをしてはなりません。常に心に哀れみを持って人を救い恵み、かりそめにも人を妨げ苦しめてはなりません。自分一人が楽しんで人を苦しめるのは、天が憎まれるところで、恐れるべきことです。人と共に楽しむのは、天が喜ばれる理であって、誠の楽しみです。
解説
短い一条ですが、『楽訓』全体を貫く考えがはっきり示されています。自分だけが楽しみ、そのために人を苦しめる楽しみは天に憎まれ、人と共に楽しむことこそが誠の楽しみだというのです。『孟子』梁恵王篇の「民と偕に楽しむ」という考えが下敷きにあります。騒音やごみ、周囲への迷惑をかえりみない遊びは、今でも人の楽しみを奪います。自分の楽しみが誰かの負担になっていないか、ときどき立ち止まって考えたいものです。
この章句が説くこと
楽しみ思いやり天孟子共生
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