導師導古典を学びたいすべての人に

楽訓 / 巻之上・総論

この故に、人は幼より、古の聖の道をまなび、我が心に天地より生れ得たる仁を行ひて、みづから樂み、人に仁を施して、樂ましむべし。仁とは何ぞや。あはれみの心を本として行ひ出せる諸の善を、すべて仁と云ふ。仁とは善の惣名なり。仁を行ふは是天地の御心にしたがへる也。是すなはち古の聖人のをしへ行ふ人の道なり。此道にしたがひて、みづから樂み、人を樂ましめて、人の道を行はんこそ、人と生れたるかひ有りて、顏之推が云ひけん空しく過すの恨なかるべけれ。

新字:この故に、人は幼より、古の聖の道をまなび、我が心に天地より生れ得たる仁を行ひて、みづから楽み、人に仁を施して、楽ましむべし。仁とは何ぞや。あはれみの心を本として行ひ出せる諸の善を、すべて仁と云ふ。仁とは善の惣名なり。仁を行ふは是天地の御心にしたがへる也。是すなはち古の聖人のをしへ行ふ人の道なり。此道にしたがひて、みづから楽み、人を楽ましめて、人の道を行はんこそ、人と生れたるかひ有りて、顔之推が云ひけん空しく過すの恨なかるべけれ。

書き下し

この故に、人は幼より、古の聖の道をまなび、我が心に天地より生れ得たる仁を行ひて、みづから楽み、人に仁を施して、楽ましむべし。仁とは何ぞや。あはれみの心を本として行ひ出せる諸の善を、すべて仁と云ふ。仁とは善の惣名なり。仁を行ふは是天地の御心にしたがへる也。是すなはち古の聖人のをしへ行ふ人の道なり。此道にしたがひて、みづから楽み、人を楽ましめて、人の道を行はんこそ、人と生れたるかひ有りて、顔之推が云ひけん空しく過すの恨なかるべけれ。

現代語訳

このために、人は幼いころから昔の聖人の道を学び、自分の心に天地から授かった仁を行って、自ら楽しみ、人にも仁を施して楽しませるべきです。仁とは何でしょうか。思いやりの心を本として行い出すさまざまな善を、すべて仁と言います。仁とは善の総称です。仁を行うことは天地の御心に従うことです。これこそ昔の聖人が教え、行った人の道です。この道に従って自ら楽しみ、人を楽しませて、人の道を行ってこそ、人と生まれたかいがあり、顔之推が言った「むなしく過ごす」という恨みもなくなるでしょう。

解説

益軒は楽しみの根を「仁」に置きます。仁とは思いやりの心から出るあらゆる善の総称で、朱子学を学んだ益軒にとって、天地が万物を生み育てる心そのものでした。ここで大事なのは、楽しみが自分一人のものではなく「自ら楽しみ、人を楽しませる」ものとして語られていることです。家庭でも職場でも、自分だけが得をする楽しさは長続きしません。相手を喜ばせることが自分の喜びになる関係を作ることが、人と生まれたかいだと益軒は教えています。

この章句が説くこと

仁楽しみ善思いやり聖人の道

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る