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礼記 / 聘義

聘、射之禮,至大禮也。質明而始行事,日幾中而後禮成,非強有力者弗能行也。故強有力者,將以行禮也。酒清,人渴而不敢飲也;肉乾,人饑而不敢食也;日莫人倦,齊莊正齊,而不敢解惰。以成禮節,以正君臣,以親父子,以和長幼。此眾人之所難,而君子行之,故謂之有行;有行之謂有義,有義之謂勇敢。故所貴於勇敢者,貴其能以立義也;所貴於立義者,貴其有行也;所貴於有行者,貴其行禮也。故所貴於勇敢者,貴其敢行禮義也。故勇敢強有力者,天下無事,則用之於禮義;天下有事,則用之於戰勝。用之於戰勝則無敵,用之於禮義則順治;外無敵,內順治,此之謂盛德。故聖王之貴勇敢強有力如此也。勇敢強有力而不用之於禮義戰勝,而用之於爭鬬,則謂之亂人。刑罰行於國,所誅者亂人也。如此則民順治而國安也。

新字:聘、射之礼,至大礼也。質明而始行事,日幾中而後礼成,非強有力者弗能行也。故強有力者,将以行礼也。酒清,人渇而不敢飲也;肉乾,人饑而不敢食也;日莫人倦,斉荘正斉,而不敢解惰。以成礼節,以正君臣,以親父子,以和長幼。此衆人之所難,而君子行之,故謂之有行;有行之謂有義,有義之謂勇敢。故所貴於勇敢者,貴其能以立義也;所貴於立義者,貴其有行也;所貴於有行者,貴其行礼也。故所貴於勇敢者,貴其敢行礼義也。故勇敢強有力者,天下無事,則用之於礼義;天下有事,則用之於戦勝。用之於戦勝則無敵,用之於礼義則順治;外無敵,内順治,此之謂盛徳。故聖王之貴勇敢強有力如此也。勇敢強有力而不用之於礼義戦勝,而用之於争闘,則謂之乱人。刑罰行於国,所誅者乱人也。如此則民順治而国安也。

書き下し

聘・射の礼は、至大の礼なり。質明にして始めて事を行い、日幾(ほと)んど中して而る後に礼成る。強有力なる者に非ざれば行う能わざるなり。故に強有力なる者は、将に以て礼を行わんとするなり。酒清みて、人渇すれども敢えて飲まざるなり。肉乾きて、人饑うれども敢えて食わざるなり。日莫(く)れて人倦めども、斉荘正斉(せいそうせいせい)にして、敢えて解惰(かいだ)せず。以て礼節を成し、以て君臣を正し、以て父子を親しみ、以て長幼を和す。此れ衆人の難んずる所にして、君子これを行う。故にこれを行い有りと謂う。行い有るをこれ義有りと謂い、義有るをこれ勇敢と謂う。故に勇敢に貴ぶ所の者は、其の能く以て義を立つるを貴ぶなり。義を立つるに貴ぶ所の者は、其の行い有るを貴ぶなり。行い有るに貴ぶ所の者は、其の礼を行うを貴ぶなり。故に勇敢に貴ぶ所の者は、其の敢えて礼義を行うを貴ぶなり。故に勇敢強有力なる者は、天下事無ければ、則ちこれを礼義に用い、天下事有れば、則ちこれを戦勝に用う。これを戦勝に用うれば則ち敵無く、これを礼義に用うれば則ち順治す。外に敵無く、内に順治す。此れをこれ盛徳と謂う。故に聖王の勇敢強有力を貴ぶこと此くの如きなり。勇敢強有力にしてこれを礼義戦勝に用いずして、これを争闘に用うれば、則ちこれを乱人と謂う。刑罰国に行わるるは、誅する所の者は乱人なり。此くの如くなれば則ち民順治して国安きなり。

現代語訳

聘の礼と射の礼は、最も大きな礼である。夜がすっかり明けてから始め、日がほとんど南中する頃になってようやく礼が終わる。強く力のある者でなければ、行い通すことはできない。だから強く力のある者は、それを礼を行うために用いるのである。酒は澄んでいて、喉が渇いていても勝手に飲まない。肉は乾いていて、腹が減っていても勝手に食べない。日が暮れて疲れても、身を慎み整え正して、怠ることがない。こうして礼の節目を成し遂げ、君臣の間を正し、父子を親しませ、長幼を和ませる。これは多くの人には難しいことだが、君子はこれを行う。だから行いがあるという。行いがあることを義があるといい、義があることを勇敢という。だから勇敢において貴ぶのは、それによって義を立てられることである。義を立てることにおいて貴ぶのは、行いがあることである。行いがあることにおいて貴ぶのは、礼を行うことである。だから勇敢において貴ぶのは、あえて礼義を行うことである。それゆえ勇敢で強く力のある者は、天下に事がなければその力を礼義に用い、天下に事があれば戦いに勝つことに用いる。戦いに用いれば敵はなく、礼義に用いれば国はよく従い治まる。外に敵がなく、内がよく治まる。これを盛んなる徳という。だから聖王が勇敢で強く力のある者を貴んだのは、このようなわけである。勇敢で強く力がありながら、それを礼義にも戦いにも用いず、私的な争いに用いる者は、乱人という。国で刑罰が行われるとき、誅されるのは乱人である。こうすれば民はよく従い治まり、国は安らかになる。

解説

聘と射の礼の厳しさから説き起こし、勇敢の本当の意味を論じる段である。朝から昼近くまで続く礼の間、澄んだ酒も乾いた肉も口にせず、日が暮れて疲れても姿勢を崩さない。それを貫くには強い体力と意志が要る。ここから篇は、勇敢とは腕力の強さではなく、困難な礼をあえて行い通す力であると定義し直す。勇敢・義・有行・行礼を順に結びつけ、最後に「勇敢に貴ぶ所の者は、其の敢えて礼義を行うを貴ぶなり」とまとめる。そのうえで、同じ力が平時には礼義に、有事には戦勝に用いられれば盛徳となり、私闘に向かえば乱人となると説く。『論語』陽貨篇の「君子勇ありて義なければ乱を為す」と響き合う考えである。力そのものに善悪はなく、何に用いるかで人の値打ちが決まるという指摘は、能力の高い人ほど心に留めておきたい。

この章句が説くこと

礼記聘義勇敢義忍耐

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