礼記 / 緇衣
子曰:『民以君爲心,君以民爲體。心莊則體舒,心肅則容敬。心好之,身必安之;君好之,民必欲之。心以體全,亦以體傷,君以民存,亦以民亡。《詩》云:「昔吾有先正,其言明且清,國家以寧,都邑以成,庶民以生。誰能秉國成,不自爲正,卒勞百姓。」《君雅》曰:「夏日暑雨,小民惟曰怨,資冬祁寒,小民亦惟曰怨。」』
新字:子曰:『民以君為心,君以民為体。心荘則体舒,心粛則容敬。心好之,身必安之;君好之,民必欲之。心以体全,亦以体傷,君以民存,亦以民亡。《詩》云:「昔吾有先正,其言明且清,国家以寧,都邑以成,庶民以生。誰能秉国成,不自為正,卒労百姓。」《君雅》曰:「夏日暑雨,小民惟曰怨,資冬祁寒,小民亦惟曰怨。」』
書き下し
子曰く、「民は君を以て心と為し、君は民を以て体と為す。心荘(そう)なれば則ち体舒(の)び、心肅(しゅく)なれば則ち容敬す。心これを好めば身必ずこれに安んじ、君これを好めば民必ずこれを欲す。心は体を以て全く、亦体を以て傷つく。君は民を以て存し、亦民を以て亡ぶ。詩に云う、『昔吾に先正(せんせい)有り、その言明らかにして且つ清し。国家以て寧(やす)く、都邑以て成り、庶民以て生く。誰か能く国の成(せい)を秉(と)る、自ら正を為さず、卒(つい)に百姓を労す』と。君雅(くんが)に曰く、『夏日の暑雨には、小民惟(こ)れ日(ひび)に怨み、冬の祁寒(きかん)に資(いた)りては、小民も亦惟れ曰(ここ)に怨む』」と。
現代語訳
先生は言われた。「民は君主を自らの心とし、君主は民を自らの体とする。心が荘重であれば体はのびやかになり、心が厳粛であれば姿も慎み深くなる。心が好むものには身も必ず安んじ、君主が好むものは民も必ず欲するようになる。心は体によって全うされるが、また体によって傷つけられもする。君主は民によって存立するが、また民によって滅びもする。『詩』に『昔、我らには先代の賢い長官がいて、その言葉は明らかで清らかであった。国家はそれによって安らぎ、都邑はそれによって成り立ち、民はそれによって生きることができた。いま誰が国の政をとっているのか。自ら正しくあろうとせず、ついには民を苦しめている』とある。『書』の君雅(くんが、周の穆王が君牙に命じた書)に『夏の暑さと長雨には、民はただ日々怨み言を言い、冬の厳しい寒さに至れば、民はまたここでも怨み言を言う』とある」。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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貞観政要・君臣鑑戒臣聞く、君は元首と為り、臣は股肱と作(な)る。契を斉しくし心を同じくし、合して体を成す。体或いは備わらずんば、未だ成人有らず。然らば則ち首は尊高なりと雖も、必ず手足を資(と)りて以て体を成す。君は明哲なりと雖も、必ず股肱を藉りて以て治を致す。『礼』に云う、「民は君を以て心と為し、君は民を以て体と為す。心荘なれば則ち体舒(の)び、心粛なれば則ち容敬なり」と。『書』に云う、「元首明らかなるかな、股肱良きかな、庶事康きかな」と。「元首叢脞(そうさ)なるかな、股肱惰るかな、万事墮つるかな」と。然らば則ち股肱を委棄し、独り胸臆に任じて、体を具え理を成すは、聞く所に非ざるなり。
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礼記・緇衣子これを言いて曰く、「上たるもの事(つか)え易く、下たるもの知り易ければ、則ち刑煩(わずら)わしからず」と。 子曰く、「賢を好むこと緇衣(しい)の如く、悪を悪(にく)むこと巷伯(こうはく)の如くなれば、則ち爵瀆(けが)れずして民は願(すなお)を作し、刑試みずして民咸(みな)服す。大雅に曰く、『文王に儀刑(ぎけい)すれば、万国孚(まこと)を作す』」と。 子曰く、「夫れ民は、これを教うるに徳を以てし、これを斉(ととの)うるに礼を以てすれば、則ち民に格(いた)る心有り。これを教うるに政を以てし、これを斉うるに刑を以てすれば、則ち民に遁(のが)るる心有り。故に民に君たる者は、子としてこれを愛すれば則ち民これに親しみ、信を以てこれを結べば則ち民倍(そむ)かず、恭を以てこれに蒞(のぞ)めば則ち民に孫(したが)う心有り。甫刑(ほけい)に曰く、『苗民は命を用いず、制するに刑を以てし、惟(こ)れ五虐の刑を作りて法と曰う』と。是を以て民に悪徳有りて、遂にその世を絶つなり」と。
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礼記・緇衣子曰く、「上人疑わしければ則ち百姓惑い、下知り難ければ則ち君長労す。故に民に君たる者は、好む所を章(あき)らかにして以て民の俗に示し、悪む所を慎みて以て民の淫(いん)を禦(ふせ)げば、則ち民惑わず。臣は儀行して、辞を重んぜず、その及ばざる所を援(ひ)かず、その知らざる所を煩わさざれば、則ち君労せず。詩に云う、『上帝板板(ばんばん)たり、下民卒(ことごと)く𤺺(や)む』と。小雅に曰く、『その止共(しきょう)するに匪(あら)ず、惟(こ)れ王の邛(やまい)なり』」と。
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礼記・緇衣子曰く、「君子は人を道(みちび)くに言を以てし、人を禁ずるに行いを以てす。故に言は必ずその終わる所を慮り、行いは必ずその敝(やぶ)るる所を稽(かんが)う。則ち民は言に謹みて行いに慎む。詩に云う、『爾の出話(しゅつわ)を慎み、爾の威儀を敬せよ』と。大雅に曰く、『穆穆(ぼくぼく)たる文王、於(ああ)緝熙(しゅうき)して敬止す』」と。 子曰く、「民に長たる者は、衣服貳(たが)わず、従容(しょうよう)常有り、以てその民を斉うれば、則ち民の徳一なり。詩に云う、『彼の都の人士、狐裘(こきゅう)黄黄たり。その容改まらず、言を出だすこと章(あや)有り。行きて周に帰れば、万民の望む所なり』」と。
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礼記・礼運故に君は明らかにせらるる所なり、人を明らかにする者に非ざるなり。君は養わるる所なり、人を養う者に非ざるなり。君は事(つか)えらるる所なり、人に事うる者に非ざるなり。故に君人を明らかにすれば則ち過ち有り、人を養えば則ち足らず、人に事うれば則ち位を失う。故に百姓は君に則(のっと)りて以て自ら治め、君を養いて以て自ら安んじ、君に事えて以て自ら顕わる。故に礼達して分定まる。故に人皆其の死を愛して其の生を患う。
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礼記・坊記子云う、「上民の言を酌めば、則ち下上の施しを天とす。上民の言を酌まざれば、則ち犯すなり。下上の施しを天とせざれば、則ち乱るるなり。故に君子信譲以て百姓に蒞(のぞ)めば、則ち民の報礼重し。《詩》に云う、『先民言える有り、芻蕘(すうじょう)に詢(はか)る』と」。 子云う、「善は則ち人に称し、過ちは則ち己に称すれば、則ち民争わず。善は則ち人に称し、過ちは則ち己に称すれば、則ち怨益々亡し。《詩》に云う、『爾(なんじ)卜し爾筮するに、履(ふ)むこと咎言無し』と」。
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