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礼記 / 表記

子曰:君子不以口譽人,則民作忠。故君子問人之寒,則衣之;問人之饑,則食之;稱人之美,則爵之。《國風》曰:「心之憂矣,於我歸說。」 子曰:口惠而實不至,怨菑及其身,是故君子與其有諾責也,寧有已怨。《國風》曰:「言笑晏晏,信誓旦旦。不思其反,反是不思,亦已焉哉!」

新字:子曰:君子不以口誉人,則民作忠。故君子問人之寒,則衣之;問人之饑,則食之;称人之美,則爵之。《国風》曰:「心之憂矣,於我帰説。」 子曰:口恵而実不至,怨菑及其身,是故君子与其有諾責也,寧有已怨。《国風》曰:「言笑晏晏,信誓旦旦。不思其反,反是不思,亦已焉哉!」

書き下し

子曰く、「君子は口を以て人を誉めざれば、則ち民は忠を作(おこ)す。故に君子は人の寒きを問えば則ちこれに衣(き)せ、人の饑(う)えを問えば則ちこれに食(くら)わせ、人の美を称すれば則ちこれに爵す。国風に曰く、『心の憂い、我に於いて帰り説(やど)れ』」と。 子曰く、「口に恵みて実至らざれば、怨菑(えんさい)その身に及ぶ。是の故に君子はその諾(だく)の責め有らんよりは、寧ろ已(や)むるの怨み有らん。国風に曰く、『言笑晏晏(あんあん)たり、信誓旦旦(たんたん)たり。その反(かえ)るを思わず。反ること是れ思わず、亦已(や)んぬるかな』」と。

現代語訳

先生は言われた。「君子が口先だけで人を褒めることをしなければ、民は誠実さを起こす。だから君子は、人が寒がっていないかと尋ねたならば着物を与え、飢えていないかと尋ねたならば食べ物を与え、人の美点を称えたならばその人に爵位を与える。『詩』の国風に『心の憂いよ、わがもとに帰って身を寄せよ』とある」。 先生は言われた。「口先では恵みを約束しながら実際には何も届かなければ、怨みや災いがわが身に及ぶ。だから君子は、引き受けておきながら果たせずに責められるよりは、むしろ初めから断って恨まれるほうを選ぶ。『詩』の国風に『語らい笑うさまはなごやかで、誓いの言葉はまことに明らかであった。それがくつがえることなど思いもしなかった。くつがえるなど思いもしなかったのに、もうすべては終わってしまった』とある」。

解説

言葉と実行を一致させることを、恵みの約束という具体的な場面で説く段である。前半は、口で人を褒めるだけで終わらせるな、という教えで、寒さを尋ねたら衣を与え、飢えを尋ねたら食を与え、美点を称えたら爵位で報いる。尋ねたり褒めたりした以上は、それに見合う実を伴わせるのである。後半はその裏側で、口先の恵みが実行されなければ怨みを招くから、君子は「諾の責め」よりも「已むるの怨み」を選ぶ、という。できない約束をして後で責められるより、その場で断って一時の不興を買う方がまだよい、という判断である。引かれた「言笑晏晏、信誓旦旦」は『詩経』衛風「氓」の一節で、誓いを交わした男に捨てられた女の嘆きであり、甘い約束が破られたときの怨みの深さを印象づける。『論語』の「言を先にせず行いを先にせよ」という訓えとも通じ合う。頼まれごとを安請け合いしがちな人にとって、断ることもまた誠実さの一つだと気づかせる段である。

この章句が説くこと

礼記表記約束誠実言行

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