言志四録 / 南洲手抄
取信於人難也。人不信於口、而信於躬。不信於躬、而信於心。是以難。
書き下し
信を人に取るは難し。人は口を信ぜずして躬を信ず。躬を信ぜずして心を信ず。是を以て難し。
現代語訳
人から信頼を得ることは難しい。人は言葉(口)を信じるのではなく、行い(躬)を信じる。いや、行いを信じるというより、その奥の心を信じる。だから信頼を得ることは難しいのだ。
解説
信頼の本質を三段で掘り下げた一条です。人は、うまい言葉では動かない。まず行動を見て信じ、さらにその行動の奥にある「心」を見て信じる。つまり、信頼とは言葉でも実績でもなく、最終的には動機の誠実さにかかっている——だからこそ得るのが難しい、というのです。口先の説明や、体裁だけの実績では、人の心は見抜いてしまう。信頼を築こうと発信や成果を急ぐ現代のリーダーに、問われているのは技術ではなく心根だと突きつける、厳しくも的確な洞察です。
この章句が説くこと
信頼言行心誠実
関連する章句
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『初学訓』巻之二一人の身のわざは、言行の二にあり。是をつつしみて、過すくなくするは、身を修むる道なり。およそ人は、言は常に余あり、行は常に足らず、言を信にし、行を篤くつつしむべし。言は、過ぎやすく誤りやすし。つつしみて、みだりに言ふべからず。行は、常に怠りやすく、不足多し、怠りなくするどにつとめ、余りある程あつく行ふべし。一心を天官といふ。身の主にて、思を以て官とす。耳、目、口、鼻、形を五官といふ。耳に聴き、目に見、口に物いひ、物をくひ、鼻に香をかぎ、形はうごく。是、五のつかさどりなり。官とはつかさどるなり、役を勤むるをいふ。心は五官の君なり、五官は心の使ふものなり。心によく思案して、五官のひがごとを禁じ、五官の役を勤めしむるは、たとへば、主人の臣下を使ふに、各其官をいひつけて、勤めしむるが如し。
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『講孟余話』告子下 第二章此の章、徐行疾行を以て孝弟を論じ、言行衣服を以て堯桀を分つ。言浅近なりと云へども、其の然る所以の故を求めば、性の本然道の全体具に茲に存するは勿論なり。然れども心を舎てて言行を論ずるは至論に非ず。若し此の論のみを信ぜば、巧言令色、足恭色荘の者を以て孝弟とし、堯舜とするの誤りあらん。又或は義外の説に陥り、道を以て偽となすに近からん。是れ亦思はざるべからず。故に註に「詳らかにするに曹交の間、浅陋麤率、必ず其の進見の時、礼貌衣冠言動の間、多く礼に循はず、故に孟子之に告ぐること此の両節の如し」と云ふとあり。然れども曹交の浅陋麤率専ら言語上に於て求むべからず。唯言語外に於て其の精神を想像すべし。然らずんば十尺九尺の言浅陋の如しと云へども、上篇第七章足口耳目の喩の如きも亦相類すと云ふべし。故に其の浅陋の所は十尺九尺に非ず、其の言語動作の間少しも精神なきのみ。又梁襄王を以て曹交に比し、其の優劣を臆度せんに、襄王は小才ありて絶えて実心なし。曹交は遅鈍の極みと云へども、却つて少しの実心あり。故に襄王は必ず事を誤る人なり。曹交に至りては却つて大誤なかるべし。千古の人を懸空に論ずるは無益なれども、亦致格の一端ならんか。
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孟子・離婁章句下孟子曰く、「言に実無きは、不詳(ふしやう)なり。不詳の実は、賢を蔽ふ者之に当たる。」
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『慎思録』巻之四言は心の声なり。外に発して聞くべし。心は身の主なり。中に在りて見るべからず。故に人に接する時、人は唯だ吾が言を聞きて、吾が心を見ず。然らば則ち外に発する者は、只だ言のみ。言豈に慎まざるべけんや。
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『初学訓』巻之二一人の心は、身の主なり。心の官は、思ふことを司る。思案なければ、心の官を失ひて、職分空しくなり、家に主なく、軍に大将なきが如し。耳、目、口、体の欲にひかれ、悪にながれ、乱れて治まらず。毎日、口に言ふこと身に行ふことを、事ごとに心に思案し、慎みて言を出しわざを行へば、誤すくなく、後悔すくなし。人の誤をなし悪を行ふは、皆思案せざればなり。よく思へば過悪なし、過悪なければ後悔なし。凡、身の行は、後悔なからんことを思ふべし。
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『新書』大政上夫れ一たび出でて反す可からざる者は、言なり。一たび見われて揜うを得可からざる者は、行なり。故に夫れ言と行とは、知愚の表にして、賢不肖の別なり。是を以て智者は言を慎み行を慎み、以て身の福と為す。愚者は言を易くし行を易くし、以て身の菑と為す。故に君子は言うこと必ず行う可くして、然る後に之を言い、行うこと必ず言う可くして、然る後に之を行う。嗚呼、之を戒めよ、之を戒めよ。之を行う者は身に在り、之を命ずる者は人に在り、此れ福菑の本なり。道は、福の本なり。祥は、福の栄なり。道無き者は必ず福の本を失い、祥ならざる者は必ず福の楽を失う。故に行いて道に縁らざる者は、其の言必ず義を顧みず。故に紂は自ら天と謂い、桀は自ら天子と謂うも、已に滅びて後、民は以て相い罵る。此れを以て之を観れば、則ち位は以て尊しと為すに足らず、而して号は以て栄と為すに足らず。故に君子の貴きや、士民之を貴ぶ、故に之を貴しと謂うなり。故に君子の富めるや、士民之を楽しむ、故に之を富むと謂うなり。故に君子の貴きや、民に与うるに福を以てす、故に士民之を貴ぶ。故に君子の富めるや、民に与うるに財を以てす、故に士民之を楽しむ。

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