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礼記 / 坊記

子云:「君子不盡利以遺民。《詩》云:『彼有遺秉,此有不斂穧,伊寡婦之利。』故君子仕則不稼,田則不漁,食時不力珍。大夫不坐羊,士不坐犬。《詩》云:『采葑采菲,無以下體,德音莫違,及爾同死。』以此坊民,民猶忘義而爭利,以亡其身。」

新字:子云:「君子不尽利以遺民。《詩》云:『彼有遺秉,此有不斂穧,伊寡婦之利。』故君子仕則不稼,田則不漁,食時不力珍。大夫不坐羊,士不坐犬。《詩》云:『采葑采菲,無以下体,徳音莫違,及爾同死。』以此坊民,民猶忘義而争利,以亡其身。」

書き下し

子云う、「君子は利を尽くさずして以て民に遺(のこ)す。《詩》に云う、『彼に遺秉(いへい)有り、此に斂めざる穧(せい)有り、伊(こ)れ寡婦の利なり』と。故に君子は仕うれば則ち稼せず、田(かり)すれば則ち漁せず、時を食らいて珍を力めず。大夫は羊に坐せず、士は犬に坐せず。《詩》に云う、『葑(ほう)を采り菲(ひ)を采るに、下体を以てすること無かれ。徳音違うこと莫くんば、爾と死を同じくせん』と。此を以て民を坊ぐも、民猶お義を忘れて利を争い、以て其の身を亡ぼす」と。

現代語訳

孔子は言った。「君子は利を取り尽くさず、余りを民に残す。『詩経』に『あちらには刈り残した稲束があり、こちらには束ねずに置いた稲がある。これは寡婦の拾う利である』とある。それゆえ君子は、仕官していれば自ら田を耕さず、狩りをするときは漁をしない。四季の食膳をとっても、ことさらに珍味を求めない。大夫は理由なく羊を殺してその皮に坐ることをせず、士は犬の皮に坐ることをしない。『詩経』に『かぶらや大根を摘むのに、根が悪いからといって葉まで捨ててはならない。よい評判に背くことがなければ、あなたと死ぬまで共にしよう』とある。こうして民を防いでも、民はなお義を忘れて利を争い、身を滅ぼす」。

解説

利を取り尽くさず、余りを民に残すことを説く段である。『詩経』小雅・大田の句は、豊作の年に刈り残された稲束を寡婦が拾って暮らしの足しにする光景を歌い、上の者が利を独占しないことの例とされる。仕官する者が農耕をせず、狩りをする者が漁までしないのは、民の生業を奪わないためである。大夫が羊の皮に、士が犬の皮に坐らないことについて、鄭玄は、古くは牲を殺してその肉を食べ皮に坐ったので、これはゆえなく殺さないことだと注している。後半の詩は邶風・谷風の句で、鄭玄は、葑や菲を摘むのに根の良し悪しで葉まで捨てないように、人との交わりでも一つの善を取り、一人に完全を求めないことだと解し、『論語』の「故旧は大故無ければ棄てず」を引く。取れるものをすべて取らず、他人の取り分を残しておく配慮は、商いでも人付き合いでも長く信頼を保つ知恵である。

この章句が説くこと

礼記坊記義利寡婦詩経

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