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礼記 / 祭統

夫鼎有銘。銘者,自名也。自名,以稱揚其先祖之美,而明著之後世者也。為先祖者,莫不有美焉,莫不有惡焉;銘之義,稱美而不稱惡。此孝子、孝孫之心也。唯賢者能之。銘者,論譔其先祖之有德善、功烈、勳勞、慶賞、聲名,列於天下,而酌之祭器,自成其名焉,以祀其先祖者也。顯揚先祖,所以崇孝也。身比焉,順也;明示後世,教也。夫銘者,一稱而上下皆得焉耳矣。是故,君子之觀於銘也,既美其所稱,又美其所為。為之者,明足以見之,仁足以與之,知足以利之;可謂賢矣。賢而勿伐,可謂恭矣。

新字:夫鼎有銘。銘者,自名也。自名,以称揚其先祖之美,而明著之後世者也。為先祖者,莫不有美焉,莫不有悪焉;銘之義,称美而不称悪。此孝子、孝孫之心也。唯賢者能之。銘者,論譔其先祖之有徳善、功烈、勲労、慶賞、声名,列於天下,而酌之祭器,自成其名焉,以祀其先祖者也。顕揚先祖,所以崇孝也。身比焉,順也;明示後世,教也。夫銘者,一称而上下皆得焉耳矣。是故,君子之観於銘也,既美其所称,又美其所為。為之者,明足以見之,仁足以与之,知足以利之;可謂賢矣。賢而勿伐,可謂恭矣。

書き下し

夫れ鼎に銘有り。銘は、自ら名づくるなり。自ら名づけて、以てその先祖の美を称揚し、而してこれを後世に明著する者なり。先祖為る者、美有らざるは莫く、悪有らざるは莫し。銘の義は、美を称して悪を称せず。此れ孝子・孝孫の心なり。唯だ賢者のみこれを能くす。銘は、その先祖の徳善・功烈・勲労・慶賞・声名有りて、天下に列する者を論譔(ろんせん)し、而してこれを祭器に酌(く)み、自らその名を成して、以てその先祖を祀る者なり。先祖を顕揚するは、孝を崇ぶ所以なり。身の比(なら)ぶは、順なり。明らかに後世に示すは、教えなり。夫れ銘は、一たび称して上下皆得るのみ。是の故に、君子の銘を観るや、既にその称する所を美とし、又たその為す所を美とす。これを為る者は、明は以てこれを見るに足り、仁は以てこれに与(くみ)するに足り、知は以てこれを利するに足る。賢と謂うべし。賢にして伐らず、恭と謂うべし。

現代語訳

そもそも鼎には銘がある。銘とは自ら名を記すことである。自ら名を記して先祖の美徳をたたえ、それを後世にはっきりと示すものである。先祖であれば、誰でも美点があり、誰でも欠点がある。銘の意義は、美点をたたえて欠点をいわないことにある。これが孝子・孝孫の心である。ただ賢者だけがこれをよくすることができる。銘とは、先祖の徳と善行、功績、勲功と労苦、褒賞、名声が天下に知られているものを論じて記し、それを斟酌して祭器に刻み、自分の名をそこに記して、先祖を祀るものである。先祖を顕彰するのは孝を尊ぶためであり、自分の身をそこに並べるのは順であり、はっきりと後世に示すのは教えである。そもそも銘は、一度たたえることで、上の先祖も下の子孫もともに益を得るものである。それゆえ君子は銘を見るとき、そこにたたえられている先祖を立派だと思い、またそれを作った者の行いを立派だと思う。銘を作る者は、明察は先祖の美を見抜くに足り、仁はそれを尊ぶ心に足り、知恵はそれを生かすに足る。賢いというべきである。賢くて誇らないのは、恭しいというべきである。

解説

鼎に刻む銘の意義を説く段である。銘は「自ら名づくる」もので、先祖の徳や功績をたたえ、同時に作った子孫の名も刻む。どの先祖にも美点と欠点があるが、銘は美を称して悪を称さない。それを偽りとせず孝子・孝孫の心とするのは、先祖のよいところを見出し後世に伝えることこそ子孫の務めだと考えるからである。先祖を顕すことは孝、自分の名をそこに並べることは順、後世に示すことは教えであり、一つの銘で先祖も子孫もともに益を得るという。さらに銘を作る者には、先祖の美を見抜く明、それを尊ぶ仁、それを生かす知が求められ、しかも誇らない恭が要るとされる。周代の青銅器には、祖先の功績と作器者の名を記した銘文が実際に多く残っている。故人をしのぶ弔辞や家の歴史、社史を書くときにも、何をたたえ何を語らずにおくかという判断の拠り所になる。

この章句が説くこと

礼記祭統銘孝先祖

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