礼記 / 楽記
樂也者,動於內者也;禮也者,動於外者也。故禮主其減,樂主其盈。禮減而進,以進為文;樂盈而反,以反為文。禮減而不進則銷,樂盈而不反則放;故禮有報而樂有反。禮得其報則樂,樂得其反則安;禮之報,樂之反,其義一也。
新字:楽也者,動於内者也;礼也者,動於外者也。故礼主其減,楽主其盈。礼減而進,以進為文;楽盈而反,以反為文。礼減而不進則銷,楽盈而不反則放;故礼有報而楽有反。礼得其報則楽,楽得其反則安;礼之報,楽之反,其義一也。
書き下し
楽なる者は、内に動く者なり。礼なる者は、外に動く者なり。故に礼はその減を主とし、楽はその盈(えい)を主とす。礼は減じて進む、進むを以て文と為す。楽は盈ちて反る、反るを以て文と為す。礼減じて進まざれば則ち銷(き)え、楽盈ちて反らざれば則ち放たる。故に礼に報有りて楽に反有り。礼その報を得れば則ち楽しみ、楽その反を得れば則ち安し。礼の報、楽の反、その義一なり。
現代語訳
楽とは、内側に働きかけるものである。礼とは、外側に働きかけるものである。それゆえ礼は控えめに減らすことを主とし、楽は満ちあふれることを主とする。礼は控えめであるから、努めて前へ進めることを美しさとする。楽は満ちあふれるから、引き返して抑えることを美しさとする。礼が控えめなままで進めなければ消えうせてしまい、楽が満ちあふれて引き返さなければ放縦に流れてしまう。だから礼には進める働きがあり、楽には引き返す働きがある。礼がその進める働きを得れば楽しくなり、楽がその引き返す働きを得れば安らかになる。礼の進めることと楽の引き返すこと、その意味するところは一つである。
解説
礼と楽の性質の違いと、それぞれに必要な補いを論じた段である。礼は身を慎み欲を減らすことを本とするので、放っておけば人は倦み、形だけが残って消えていく。そこで礼には努めて前へ進める働きが要る。鄭玄はこの「進」を自ら勉め励むことと注している。一方、楽は人の歓びを満たすものなので、放っておけば際限なく流れて放縦になる。そこで楽には引き返して節する働きが要る。礼と楽は正反対の方向を向きながら、どちらも行き過ぎや欠けを補って中ほどに落ち着かせるという点で「その義一なり」とされる。儒家が重んじる中和の考えが、ここでは礼楽の運動として語られている。規律ばかりの場は活気を失い、楽しさばかりの場は崩れていく。組織の決まりと楽しみのそれぞれに、押し進める力と引き戻す力を用意しておくことは、今の運営にもそのまま通じる。
この章句が説くこと
礼記楽記中和節度礼楽
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