導師導古典を学びたいすべての人に

礼記 / 玉藻

君無故不殺牛,大夫無故不殺羊,士無故不殺犬、豕。君子遠庖廚,凡有血氣之類,弗身踐也。至於八月不雨,君不舉。年不順成,君衣布搢本,關梁不租,山澤列而不賦,土功不興,大夫不得造車馬。卜人定龜,史定墨,君定體。君羔幦虎犆;大夫齊車,鹿幦豹犆,朝車;士齊車,鹿幦豹犆。君子之居恒當戶,寢恒東首。若有疾風迅雷甚雨,則必變,雖夜必興,衣服冠而坐。日五盥,沐稷而靧粱,櫛用樿櫛,髮晞用象櫛,進禨進羞,工乃升歌。浴用二巾,上絺下綌,出杅,履蒯席,連用湯,履蒲席,衣布晞身,乃屨進飲。將適公所,宿齊戒,居外寢,沐浴,史進象笏,書思對命;既服,習容觀玉聲,乃出,揖私朝,煇如也,登車則有光矣。天子搢珽,方正於天下也,諸侯荼,前詘後直,讓於天子也,大夫前詘後詘,無所不讓也。

新字:君無故不殺牛,大夫無故不殺羊,士無故不殺犬、豕。君子遠庖廚,凡有血気之類,弗身践也。至於八月不雨,君不舉。年不順成,君衣布搢本,関梁不租,山沢列而不賦,土功不興,大夫不得造車馬。卜人定亀,史定墨,君定体。君羔幦虎犆;大夫斉車,鹿幦豹犆,朝車;士斉車,鹿幦豹犆。君子之居恒当戸,寝恒東首。若有疾風迅雷甚雨,則必変,雖夜必興,衣服冠而坐。日五盥,沐稷而靧粱,櫛用樿櫛,髪晞用象櫛,進禨進羞,工乃升歌。浴用二巾,上絺下綌,出杅,履蒯席,連用湯,履蒲席,衣布晞身,乃屨進飲。将適公所,宿斉戒,居外寝,沐浴,史進象笏,書思対命;既服,習容観玉声,乃出,揖私朝,煇如也,登車則有光矣。天子搢珽,方正於天下也,諸侯荼,前詘後直,譲於天子也,大夫前詘後詘,無所不譲也。

書き下し

君は故無くして牛を殺さず、大夫は故無くして羊を殺さず、士は故無くして犬豕(けんし)を殺さず。君子は庖廚(ほうちゅう)を遠ざく。凡そ血気有るの類は、身ずから践(ふ)まざるなり。八月に至りて雨ふらざれば、君は挙(きょ)せず。年順成せざれば、君は布を衣て本(ほん)を搢(さしはさ)み、関梁は租せず、山沢は列して賦せず、土功は興さず、大夫は車馬を造ることを得ず。卜人は亀を定め、史は墨を定め、君は体を定む。君は羔幦(こうべき)虎犆(こしょく)。大夫は斉車(さいしゃ)に鹿幦豹犆、朝車。士は斉車に鹿幦豹犆。君子の居るや恒に戸に当たり、寝ぬるや恒に東首す。若し疾風迅雷甚雨有らば、則ち必ず変じ、夜と雖も必ず興(お)き、衣服冠して坐す。日に五たび盥(てあら)い、沐には稷(しょく)、靧(かい)には粱(りょう)、櫛には樿櫛(せんしつ)を用い、髪晞(かわ)けば象櫛を用い、禨(き)を進め羞を進め、工乃ち升りて歌う。浴には二巾を用い、上は絺(ち)下は綌(げき)、杅(う)を出でて蒯席(かいせき)を履み、湯を連用し、蒲席を履み、布を衣て身を晞かし、乃ち屨(くつ)して飲を進む。将に公所に適(ゆ)かんとすれば、宿(しゅく)して斉戒し、外寝に居り、沐浴す。史は象笏(ぞうこつ)を進め、思対命を書す。既に服して、容を習い玉声を観、乃ち出で、私朝に揖す。煇如(きじょ)たり、車に登れば則ち光有り。天子は珽(てい)を搢み、天下に方正なればなり。諸侯は荼(じょ)、前は詘(くっ)し後は直なり、天子に譲ればなり。大夫は前詘後詘、譲らざる所無ければなり。

現代語訳

君は理由もなく牛を殺さず、大夫は理由もなく羊を殺さず、士は理由もなく犬や豚を殺さない。君子は厨房から身を遠ざける。およそ血の通う生き物を、自分の手で殺すことはしない。八月になっても雨が降らなければ、君は盛大な膳をやめる。その年の作物が実らなければ、君は麻布の服を着て、笏(こつ)の代わりに木の笏を帯に挿し、関所や橋では通行税を取らず、山林や沼沢は立ち入りの区域を定めるだけで賦税を課さず、土木工事を起こさず、大夫は車馬を新たに作ることを許されない。卜い(うらない)では、卜人が用いる亀甲を定め、史官が焼いてできた墨の筋を見定め、君がそのひび割れの形から吉凶を定める。君の車は子羊の皮で車前の横木を覆い、虎の皮で縁取る。大夫の斎車(祭祀に乗る車)は鹿の皮で覆って豹の皮で縁取り、朝廷に出る車も同じである。士の斎車も鹿の皮で覆って豹の皮で縁取る。君子がふだん居るときは常に戸口に向かい、寝るときは常に頭を東に向ける。激しい風、急な雷、ひどい雨があれば、必ず顔色を改め、夜であっても必ず起きて、衣服を着け冠をかぶって坐る。日に五回手を洗い、髪を洗うには稷(きび)のとぎ汁を、顔を洗うには粱(あわ)のとぎ汁を用い、櫛は樿(せん、白い木)の櫛を使い、髪が乾いたら象牙の櫛を使う。そのあと酒と肴を進め、楽工が堂に上って歌う。沐浴には二枚の手ぬぐいを用い、上半身には細い葛布、下半身には粗い葛布を使う。浴槽を出ると蒯(かい、草)の敷物を踏み、湯をかけて洗い流し、次に蒲の敷物を踏み、布の衣を着て身体を乾かしてから、履物をはいて飲み物をとる。公の所に出向こうとするときは、前夜から斎戒して外寝(正殿の外の部屋)に泊まり、沐浴する。史官が象牙の笏を差し出し、君に申し上げることや、君の問いへの答え、君から受けた命を書きつけておく。衣服を整えると、容儀を練習して佩玉の鳴る音を確かめ、それから出て、家の私的な朝廷で家臣たちに揖(ゆう、会釈)をする。その姿は輝くようで、車に乗れば光があふれるようである。天子は珽(てい、玉の大笏)を帯に挿す。天下に対して方正であることを示すからである。諸侯は荼(じょ)という笏を用い、上端が丸く曲がり、下端がまっすぐである。天子に譲る意を示すからである。大夫の笏は上端も下端も曲がっている。譲らない相手がないことを示すからである。

解説

この段は、君主と君子の日常の節度を幾つもの面から定めている。理由なく牛羊を殺さないこと、凶作の年に税を免じ工事を止めること、嵐の夜に衣冠を正して坐ることは、いずれも自分の欲や安楽よりも、天の変化と民の暮らしを先に置く姿勢である。「君子は庖廚を遠ざく」の句は『孟子』梁恵王上にも見え、牛の哀れな様子を見て羊に替えさせた斉の宣王に、孟子が仁の芽生えを見いだす話と響き合う。出仕の前夜に斎戒し、言うべきことを笏に書き留め、玉の鳴る音で歩みを確かめるくだりは、公の場に臨む準備の細やかさを伝える。笏の形が天子・諸侯・大夫で違うのも、身分に応じて譲る相手が増えることを形で表したものである。大事な会議の前夜に何を用意し、どう身を整えるかという、今日の働き方にも通じる教えである。

この章句が説くこと

礼記玉藻節度君子斎戒

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る