礼記 / 礼器
故禮有擯詔,樂有相步,溫之至也。禮也者,反本脩古,不忘其初者也。故凶事不詔,朝事以樂。醴酒之用,玄酒之尚。割刀之用,鸞刀之貴。莞簟之安,而稾鞂之設。是故先王之制禮也,必有主也,故可述而多學也。
新字:故礼有擯詔,楽有相歩,温之至也。礼也者,反本脩古,不忘其初者也。故凶事不詔,朝事以楽。醴酒之用,玄酒之尚。割刀之用,鸞刀之貴。莞簟之安,而稾鞂之設。是故先王之制礼也,必有主也,故可述而多学也。
書き下し
故に礼に擯詔(ひんしょう)有り、楽に相歩(しょうほ)有るは、温の至りなり。礼なる者は、本に反り古を脩め、其の初めを忘れざる者なり。故に凶事は詔げず、朝事は楽を以てす。醴酒の用ありて、玄酒を之れ尚ぶ。割刀の用ありて、鸞刀(らんとう)を之れ貴ぶ。莞簟(かんてん)の安きありて、稾鞂(こうかつ)を之れ設く。是の故に先王の礼を制するや、必ず主有り、故に述べて多く学ぶべきなり。
現代語訳
だから礼には擯(ひん、取り次ぎ役)が作法を告げ知らせる仕組みがあり、音楽には目の不自由な楽師の手を引く相(しょう、介添え役)がいる。これは穏やかさの極みである。礼とは、根本に立ち返り、古を修め、その始まりを忘れないものである。だから喪のような凶事には介添えが作法を告げず、朝廷の儀式には音楽を用いる。甘酒や清酒を実際には用いながら、祭りでは玄酒(水)を尊ぶ。切れ味のよい包丁を実際には用いながら、祭りでは鈴のついた古式の鸞刀(らんとう)を尊ぶ。莞(い草)の席や竹の敷物の心地よさがありながら、祭りでは藁や稲わらの敷物を設ける。だから先王が礼を定めるときには必ず根本となる主旨があり、それゆえ礼を述べ伝え、多くを学ぶことができるのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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礼記・楽記楽なる者は施すなり。礼なる者は報ゆるなり。楽は其の自りて生ずる所を楽しみ、礼は其の自りて始まる所に反る。楽は徳を章(あきら)かにし、礼は情に報いて始めに反る。所謂大輅(たいろ)なる者は、天子の車なり。龍旗(りゅうき)九旒(きゅうりゅう)は、天子の旌(はた)なり。青黒の縁(ふち)ある者は、天子の宝亀なり。之に従うるに牛羊の群を以てするは、則ち諸侯に贈る所以なり。
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礼記・楽記楽なる者は、黄鐘(こうしょう)大呂(たいりょ)弦歌干揚の謂いに非ざるなり。楽の末節なり、故に童者之を舞う。筵席を鋪(し)き、尊俎(そんそ)を陳(つら)ね、籩豆(へんとう)を列ね、升降を以て礼と為す者は、礼の末節なり、故に有司之を掌る。楽師は声詩を辨ず、故に北面して弦す。宗祝は宗廟の礼を辨ず、故に尸に後(おく)る。商祝は喪礼を辨ず、故に主人に後る。是の故に徳成りて上り、芸成りて下り、行成りて先んじ、事成りて後る。是の故に先王は上有り下有り、先有り後有りて、然る後に以て天下に制有るべきなり。
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史記 楽書楽なる者は、情の変ずべからざる者なり。礼なる者は、理の易ふべからざる者なり。楽は同を統べ、礼は異を別つ、礼楽の説は人情を貫く。本を窮め変を知るは、楽の情なり。誠を著し偽を去るは、礼の経なり。礼楽は天地の誠に順ひ、神明の徳に達し、上下の神を降興し、而して精粗の体を凝らし、父子君臣の節を領む。是の故に大人礼楽を挙ぐれば、則ち天地将に為に昭らかならんとす。天地欣合し、陰陽相得て、万物を煦嫗覆育し、然る後に草木茂り、区萌達し、羽翮奮ひ、角觡生じ、蟄虫昭穌し、羽ある者は嫗伏し、毛ある者は孕鬻し、胎生する者は殰せずして卵生する者は殈せず、則ち楽の道焉に帰するのみ。楽とは、黄鐘大呂弦歌干揚を謂ふに非ざるなり、楽の末節なり、故に童者之を舞ふ。筵席を布き、樽俎を陳ね、籩豆を列ね、升降を以て礼と為す者は、礼の末節なり、故に有司之を掌る。楽師は声詩を辯ず、故に北面して弦す。宗祝は宗廟の礼を辯ず、故に尸に後る。商祝は喪礼を辯ず、故に主人に後る。是の故に徳成りて上り、芸成りて下る。行ひ成りて先んじ、事成りて後る。是の故に先王は上有り下有り、先有り後有りて、然る後に以て天下に制有るべきなり。楽とは、聖人の楽しむ所なり、而して以て民心を善くすべし。其の人を感ぜしむること深く、其の風を移し俗を易ふ、故に先王其の教へを著す。夫れ人に血気心知の性有りて、哀楽喜怒の常無く、感に応じて物に起こりて動き、然る後に心術形はる。
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礼記・礼器先王の礼を立つるや、本有り文有り。忠信は、礼の本なり。義理は、礼の文なり。本無ければ立たず、文無ければ行われず。 礼なる者は、天の時に合い、地の財に設け、鬼神に順い、人心に合い、万物を理(おさ)むる者なり。是の故に天の時に生有り、地の理に宜有り、人の官に能有り、物の曲に利有り。故に天の生ぜず、地の養わざるものは、君子以て礼と為さず、鬼神も饗(う)けざるなり。山に居りて魚鼈(ぎょべつ)を以て礼と為し、沢に居りて鹿豕を以て礼と為すは、君子之を礼を知らずと謂う。故に必ず其の定国の数を挙げて、以て礼の大経と為す。礼の大倫は、地の広狭を以てし、礼の薄厚は、年の上下と与(とも)にす。是の故に年大いに殺(そ)がると雖も、衆匡懼(きょうく)せず。則ち上の礼を制するや節なり。
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礼記・楽記夫れ豕(いのこ)を豢(やしな)い酒を為るは、以て禍を為すに非ざるなり。而るに獄訟益々繁きは、則ち酒の流れ禍を生ずるなり。是の故に先王因りて酒礼を為る。壱献の礼は、賓主百拝し、終日酒を飲むも酔うことを得ず。此れ先王の酒禍に備うる所以なり。故に酒食なる者は、歓を合わする所以なり。楽なる者は、徳に象る所以なり。礼なる者は、淫を綴(とど)むる所以なり。是の故に先王は、大事有れば、必ず礼有りて以て之を哀しみ、大福有れば、必ず礼有りて以て之を楽しむ。哀楽の分は、皆礼を以て終わる。楽なる者は、聖人の楽しむ所なり。而して以て民心を善くすべし。其の人を感ぜしむること深く、其の風を移し俗を易う。故に先王其の教えを著(た)つ。
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史記 楽書情を合し貌を飾るは、礼楽の事なり。礼義立てば、則ち貴賤等し。楽文同じければ、則ち上下和す。好悪著らかなれば、則ち賢不肖別る。刑暴を禁じ、爵賢を挙ぐれば、則ち政均し。仁以て之を愛し、義以て之を正す、此くの如くなれば則ち民治行はる。楽は中より出で、礼は外より作る。楽は中より出づ、故に静かなり。礼は外より作る、故に文あり。大楽は必ず易く、大礼は必ず簡なり。楽至れば則ち怨み無く、礼至れば則ち争はず。揖譲して天下を治むるとは、礼楽の謂ひなり。暴民作らず、諸侯賓服し、兵革試みず、五刑用ひず、百姓患ひ無く、天子怒らず、此くの如くなれば則ち楽達す。父子の親しみを合し、長幼の序を明らかにし、以て四海の内を敬せしむ。天子此くの如くなれば、則ち礼行はる。大楽は天地と和を同じくし、大礼は天地と節を同じくす。和す、故に百物失はず。節あり、故に天を祀り地を祭る。明には則ち礼楽有り、幽には則ち鬼神有り、此くの如くなれば則ち四海の内、敬を合し愛を同じくす。礼とは、事を殊にして敬を合する者なり。楽とは、文を異にして愛を合する者なり。礼楽の情同じ、故に明王以て相沿ふ。故に事は時と并び、名は功と偕にす。故に鐘鼓管磬羽籥干戚は、楽の器なり。詘信俯仰級兆舒疾は、楽の文なり。簠簋俎豆制度文章は、礼の器なり。升降上下周旋裼襲は、礼の文なり。故に礼楽の情を知る者は能く作り、礼楽の文を識る者は能く術ぶ。作る者之を聖と謂ひ、術ぶる者之を明と謂ふ。明聖とは、術作の謂ひなり。楽とは、天地の和なり。礼とは、天地の序なり。和す、故に百物皆化す。序あり、故に群物皆別る。楽は天に由りて作り、礼は地を以て制す。制を過ぐれば則ち乱れ、作を過ぐれば則ち暴なり。天地に明らかにして、然る後に能く礼楽を興すなり。
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