礼記 / 文王世子
公與族燕則以齒,而孝弟之道達矣。其族食世降一等,親親之殺也。 戰則守於公禰,孝愛之深也。正室守大廟,尊宗室,而君臣之道著矣。諸父諸兄守貴室,子弟守下室,而讓道達矣。
新字:公与族燕則以歯,而孝弟之道達矣。其族食世降一等,親親之殺也。 戦則守於公祢,孝愛之深也。正室守大廟,尊宗室,而君臣之道著矣。諸父諸兄守貴室,子弟守下室,而譲道達矣。
書き下し
公、族と燕するに則ち歯を以てして、孝弟の道達す。其の族食は世ごとに一等を降す、親を親しむの殺(さい)なり。 戦えば則ち公禰を守るは、孝愛の深きなり。正室大廟を守るは、宗室を尊びて、君臣の道著(あら)わる。諸父諸兄は貴室を守り、子弟は下室を守りて、譲道達す。
現代語訳
君主が一族と酒宴をするときに年齢の順に並ぶことで、孝行と兄弟の親しみの道が広く行きわたる。一族との会食が世代ごとに一段ずつ減るのは、親族を親しむ情に親疎の差をつけるものである。 戦のときに公族が君主の携える祖先の位牌を守るのは、孝と愛の情が深いことを示す。嫡子が太祖の廟を守るのは、宗家を尊ぶことであり、これによって君臣の道が明らかになる。おじや兄たちが正殿を守り、子や弟たちがその他の部屋を守ることで、譲り合いの道が行きわたる。
解説
前段に続いて、公族の宴・会食・軍中・留守の務めの意味を説く。君主が一族との宴で年齢順に並ぶのは、至尊の君が自らを親族の列から切り離さないことで、孝弟の道を一族に広めるためである。会食が世代ごとに減るのは「親を親しむの殺」で、鄭玄は殺を差と注する。戦で位牌を守るのは孝愛の深さを示し、鄭玄は行主を君父の象と注する。嫡子が太祖の廟を守るのは宗家を尊ぶためで、鄭玄は庶子に君の重んずる所を守らせないからだとする。おじや兄が上の部屋を、子弟が下の部屋を守ることを、鄭玄は貴い者が貴い所を、賤しい者が賤しい所を守るのだと注し、そこに譲り合いの道が現れるとする。役割の割り振りそのものが、一族に徳を教える仕組みになっているという見方は、組織の配置を考えるうえでも参考になる。
この章句が説くこと
礼記文王世子公族親親譲
関連する章句
-
『春秋左氏伝』襄公十三年 譲は礼の主なり君子曰く、「讓は禮の主なり。范宣子讓りて、其の下皆讓る。欒黶汰(おご)ると為すも、敢へて違はず。晉國以て平らかにして、數世之に賴る。善に刑(のつと)ればなり。一人善に刑れば、百姓休和す。務めざるべけんや。書に曰く、『一人慶有れば、兆民之に賴る。其の寧きこと惟れ永し』と。其れ是の謂ひか。周の興るや、其の詩に曰く、『文王に儀刑すれば、萬邦孚を作す』と。善に刑るを言ふなり。其の衰ふるに及びてや、其の詩に曰く、『大夫均しからず、我事に從ひて獨り賢(らう)す』と。讓らざるを言ふなり。世の治まるや、君子は能を尚びて其の下に讓り、小人は農力して以て其の上に事ふ。是を以て上下禮有りて、讒慝黜遠せらる。爭はざるに由るなり。之を懿德と謂ふ。其の亂るるに及びてや、君子は其の功を稱して以て小人に加へ、小人は其の技を伐(ほこ)りて以て君子を馮(しの)ぐ。是を以て上下禮無く、亂虐並び生ず。善を爭ふに由るなり。之を昏德と謂ふ。國家の敝るるは、恆に必ず之に由る」と。
-
司馬法・嚴位自ら子(よ)するに循わざるを以てし、賢を争うに以て為し、人其の心を説(よろこ)ばしめ、其の力を效(いた)す。
-
司馬法・天子之義上苟も善を伐(ほこ)らざれば、則ち驕らず。下苟も善を伐らざれば、必ず等を亡(な)くす。上下善を伐らざること此くの若きは、譲の至りなり。
-
司馬法・天子之義上苟も不善を以て己に在りとせば、必ず其の過ちを悔ゆ。下苟も不善を以て己に在りとせば、必ず其の罪に遠ざかる。上下悪を分かつこと此くの若きは、譲の至りなり。
-
『忍経』拔藩益地陳囂、民の紀伯と鄰を為す。伯夜竊かに囂の地を藩して自ら益す。囂之を見、伯の去るを伺ひて後、密かに其の藩一丈を拔き、地を以て伯に益す。伯之を覺り、慚惶して、自ら侵す所を還し、又卻くこと一丈。太守周府君、囂の德義を高しとし、石に刻みて其の閭を旌表し、號して「義里」と曰ふ。
-
『忍経』謝罪敦睦・能く忍ぶと忍ぶ能はざるとの間蘇子曰く「高帝の勝つ所以、項籍の敗るる所以は、能く忍ぶと忍ぶ能はざるとの間に在るのみ。項籍は忍ぶ能はず、是を以て百戰百勝して輕しく其の鋒を用ふ。高祖は之を忍び、其の全鋒を養ひて其の弊を待つ」と。 孝友先生朱仁軌、隱居して親を養ひ、常に子弟に誨へて曰く「終身路を讓るも、百步を枉げず。終身畔を讓るも、一段を失はず」と。 吳湊、僚吏は大過に非ずんば榜責せず、召して廷に至らしめて詰り、厚くして之を去らしむ。其の下傳へて相訓勉し、舉げて稽事無し。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る