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童子問 / 卷中

問應世之道。曰。莫如讓。讓者實德也。凡犯上好勝。與人爭奪。皆生於忘讓。故一讓立。而衆德聚。非徒不與世乖戾。於應事接物之間。最爲要道。人焉而無禮讓之心。則雖有他美。皆不足觀焉。故天下莫善於讓。莫不善於不知讓。

新字:問応世之道。曰。莫如譲。譲者実徳也。凡犯上好勝。与人争奪。皆生於忘譲。故一譲立。而衆徳聚。非徒不与世乖戻。於応事接物之間。最為要道。人焉而無礼譲之心。則雖有他美。皆不足観焉。故天下莫善於譲。莫不善於不知譲。

書き下し

世に応ずるの道を問ふ。曰く、譲に如くは莫し。譲は実徳なり。凡そ上を犯し勝つことを好み、人と争奪するは、皆譲を忘るるより生ず。故に一たび譲立ちて、衆徳聚まる。徒に世と乖戻せざるのみに非ず、事に応じ物に接するの間に於て、最も要道為り。人にして礼譲の心無ければ、則ち他の美有りと雖も、皆観るに足らず。故に天下譲より善きは莫く、譲を知らざるより不善なるは莫し。

現代語訳

世の中に応じて生きる道を問うた。答えていう。譲ることに及ぶものはない。譲とは実のある徳である。およそ目上に逆らい、勝つことを好み、人と争って奪い合うのは、みな譲ることを忘れることから生じる。だからひとたび譲が立てば、多くの徳が集まってくる。ただ世間と仲たがいしないというだけではない。物事に応じ人に接するあいだにおいて、最も肝要な道である。人でありながら礼譲の心がなければ、ほかに美点があっても、みな見るに足りない。だから天下に譲ほど善いものはなく、譲を知らないことほど不善なものはない。

解説

世に処する道を問われ、仁斎は「譲」の一字を挙げる。上に逆らい勝ちを好み人と奪い合うことは、すべて譲を忘れることから生じ、逆に譲が立てば多くの徳が集まってくるという。譲は単に摩擦を避ける処世術ではなく、実のある徳だというのが要点である。どれほど才能や美点があっても、礼譲の心がなければ見るに足りないとまで言い切る。仁斎は道を日常の人づきあいのなかに見たので、譲は最も身近で実践的な徳となる。競争の激しい職場でこそ、一歩譲る余裕が人の信頼を集め、結果として多くを得させるという教えとして読める。

この章句が説くこと

譲礼譲徳処世争い実徳

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