礼記 / 月令
是月也,日夜分,雷始收聲。蟄蟲坏戶,殺氣浸盛,陽氣日衰,水始涸。 日夜分,則同度量,平權衡,正鈞石,角斗甬。是月也,易關市,來商旅,納貨賄,以便民事。四方來集,遠鄉皆至,則財不匱,上無乏用,百事乃遂。
新字:是月也,日夜分,雷始収声。蟄虫坏戸,殺気浸盛,陽気日衰,水始涸。 日夜分,則同度量,平権衡,正鈞石,角斗甬。是月也,易関市,来商旅,納貨賄,以便民事。四方来集,遠郷皆至,則財不匱,上無乏用,百事乃遂。
書き下し
是の月や、日夜分かれ、雷始めて声を収む。蟄虫戸を坏(つちか)い、殺気浸(ようや)く盛んに、陽気日に衰え、水始めて涸(か)る。 日夜分かるれば、則ち度量を同じくし、権衡を平らかにし、鈞石を正し、斗甬を角る。是の月や、関市を易(やす)くし、商旅を来たし、貨賄(かわい)を納れ、以て民事を便にす。四方来集し、遠郷皆至れば、則ち財匱(とぼ)しからず、上に乏用無く、百事乃ち遂ぐ。
現代語訳
この月、昼と夜の長さが等しくなり(秋分)、雷がはじめて声をおさめる。冬ごもりの虫は穴の入口に土を盛ってふさぎ、万物を枯らす殺気がしだいに盛んになり、陽の気は日ごとに衰え、水が涸れはじめる。 昼夜が等しくなったときには、長さと容量の単位をそろえ、はかりを公平にし、重さの基準の鈞と石を正し、斗や甬(ます)を比べ正す。この月、関所や市場の決まりをゆるやかにし、商人や旅人を呼び寄せ、財貨を受け入れ、民の暮らしを便利にする。四方から人が集まり、遠い村からも皆やって来れば、財は乏しくならず、上の者も用に困ることがなく、あらゆることがうまく成し遂げられる。
解説
秋分の物候と、度量衡の整備、そして交易を盛んにする政令を述べる段である。雷が声をおさめ、虫が穴の入口をふさぎ、水が涸れはじめるという三つの物候は、日本の七十二候でもそのまま秋分の三候とされている。昼夜の長さが等しくなる秋分には、春分と同じく度量衡の基準をそろえる。天地が均衡する日に、人の世の基準も均しく正すのである。続いて関所や市場の決まりをゆるやかにし、商人や旅人を呼び寄せ、財貨を受け入れて民の暮らしを便利にせよと命じる。『孟子』が関所や市場は取り調べはしても税を取らないのが理想の政治だと説いたのと、同じ方向の考えである。基準を正しく保ったうえで人と物の流れを妨げないことが豊かさを生むという指摘は、今日の経済政策や商いの場でも変わらぬ要点である。
この章句が説くこと
礼記月令秋分交易度量衡
関連する章句
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呂氏春秋・仲秋⑤是の月や、日夜分しく、雷乃ち始めて聲を収め、蟄蟲戸に俯す。殺氣浸く盛にして、陽氣日衰え、水始めて涸る。日夜分しければ、則ち度量を一にし、權衡を平らかにし、鈞石を正しくし、斗甬を齊しくす。
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礼記・月令是の月や、玄鳥(げんちょう)至る。至るの日、大牢(たいろう)を以て高禖(こうばい)に祠(まつ)る。天子親ら往き、后妃は九嬪(きゅうひん)を帥いて御す。乃ち天子の御する所を礼し、帯ぶるに弓韣(きゅうとく)を以てし、授くるに弓矢を以てす、高禖の前に于(おい)てす。 是の月や、日夜分かる。雷乃ち声を発し、始めて電(いなびかり)し、蟄虫咸(みな)動き、戸を啓きて始めて出づ。雷に先だつこと三日、木鐸(ぼくたく)を奮いて以て兆民に令して曰く、「雷将に声を発せんとす。其の容止を戒めざる者有らば、子を生むこと備わらず、必ず凶災有らん」と。日夜分かるれば、則ち度量を同じくし、衡石(こうせき)を鈞(ひと)しくし、斗甬(とよう)を角(はか)り、権概(けんがい)を正す。
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呂氏春秋・仲春④是の月や、日夜分しく、雷乃ち聲を發し、始めて電し、蟄蟲咸な動き、戸を開きて、始めて出づ。雷に先だつこと三日、鐸を奮いて、以て兆民に令して曰く、「雷且に聲を發せんとす。其の容止を戒めざる者有らば、生子備わらず、必ず凶災有らん。」日夜分しければ、則ち度量を同じくし、衡石を鈞しくし、斗桶を角にし、權概を正しくす。
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礼記・月令孟秋に冬の令を行えば、則ち陰気大いに勝ち、介虫(かいちゅう)穀を敗り、戎兵乃ち来たる。春の令を行えば、則ち其の国乃ち旱し、陽気復た還り、五穀実無し。夏の令を行えば、則ち国に火災多く、寒熱節ならず、民に瘧疾(ぎゃくしつ)多し。 仲秋の月、日は角(かく)に在り、昏に牽牛中し、旦に觜觿(しけい)中す。其の日は庚辛、其の帝は少暭、其の礼は蓐収。其の虫は毛。其の音は商、律は南呂(なんりょ)に中る。其の数は九。其の味は辛、其の臭は腥。其の祀りは門、祭るに肝を先にす。
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礼記・月令天子は総章(そうしょう)の左个に居り、戎路(じゅうろ)に乗り、白駱(はくらく)に駕し、白旂を載せ、白衣を衣、白玉を服び、麻と犬とを食らい、其の器は廉(かど)ありて以て深し。 是の月や、以て秋を立つ。立秋に先だつこと三日、大史之を天子に謁げて曰く、「某日立秋なり、盛徳は金に在り」と。天子乃ち斉す。立秋の日、天子親ら三公・九卿・諸侯・大夫を帥いて以て秋を西郊に迎う。還り反りて、軍帥・武人を朝に賞す。天子乃ち将帥に命じて士を選び兵を厲(と)ぎ、桀俊を簡練し、有功に専任し、以て不義を征せしむ。暴慢を詰誅(きっちゅう)し、以て好悪を明らかにし、彼の遠方を順わしむ。是の月や、有司に命じて法制を脩め、囹圄を繕い、桎梏を具え、姦を禁止し、罪邪を慎み、搏執(はくしつ)に務めしむ。理に命じて傷を瞻(み)、創を察し、折を視、断を審らかにし、獄訟を決するに、必ず端平ならしむ。有罪を戮し、刑を断ずるを厳にす。天地始めて粛(しゅく)す、以て贏(えい)すべからず。是の月や、農乃ち穀を登らせ、天子新を嘗み、先ず寝廟に薦む。百官に命じて始めて収斂し、隄坊(ていぼう)を完くし、壅塞(ようそく)を謹み、以て水潦に備えしむ。宮室を脩め、牆垣(しょうえん)を坏(つちか)い、城郭を補う。是の月や、以て諸侯を封じ、大官を立つること毋かれ。以て地を割き、大使を行い、大幣を出だすこと毋かれ。
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礼記・月令天子、有司に命じて四海・大川・名源・淵沢・井泉を祈祀せしむ。 是の月や、農に収蔵積聚せざる者有り、馬牛畜獣に放佚(ほういつ)する者有らば、之を取るも詰(とが)めず。山林藪沢(そうたく)に、能く蔬食(そし)を取り、禽獣を田猟する者有らば、野虞(やぐ)之を教道す。其の相侵奪する者有らば、之を罪して赦さず。是の月や、日短至る。陰陽争い、諸生蕩(うご)く。君子は斉戒(さいかい)し、処(お)るに必ず身を掩(おお)う。身は寧(やす)からんことを欲し、声色を去り、耆慾(しよく)を禁ず。形性を安んじ、事は静かならんことを欲し、以て陰陽の定まる所を待つ。
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