礼記 / 月令
是月也,土潤溽暑,大雨時行,燒薙行水,利以殺草,如以熱湯。可以糞田疇,可以美土彊。 季夏行春令,則穀實鮮落,國多風欬,民乃遷徙。行秋令,則丘隰水潦,禾稼不熟,乃多女災。行冬令,則風寒不時,鷹隼蚤鷙,四鄙入保。
新字:是月也,土潤溽暑,大雨時行,焼薙行水,利以殺草,如以熱湯。可以糞田疇,可以美土彊。 季夏行春令,則穀実鮮落,国多風欬,民乃遷徙。行秋令,則丘隰水潦,禾稼不熟,乃多女災。行冬令,則風寒不時,鷹隼蚤鷙,四鄙入保。
書き下し
是の月や、土潤いて溽暑(じょくしょ)し、大雨時に行わる。薙(てい)を焼きて水を行(や)れば、利(よろ)しく以て草を殺すこと、熱湯を以てするが如し。以て田疇(でんちゅう)を糞(こや)すべく、以て土彊(どきょう)を美(よ)くすべし。 季夏に春の令を行えば、則ち穀実鮮(すくな)く落ち、国に風欬(ふうがい)多く、民乃ち遷徙す。秋の令を行えば、則ち丘隰(きゅうしゅう)水潦あり、禾稼(かか)熟さず、乃ち女災多し。冬の令を行えば、則ち風寒時ならず、鷹隼(ようしゅん)蚤く鷙(し)し、四鄙保に入る。
現代語訳
この月、土は湿り気を帯びて蒸し暑く、大雨がときどき降る。刈り取った草を焼いてから水を引き入れると、草を枯らすのに効き目があり、熱湯をかけたようである。こうして田畑に肥料を施すことができ、硬い土地を良い土にすることができる。 夏の終わりの月に春の政令を行えば、穀物の実が少なくなって落ちてしまい、国に風邪や咳が多くはやり、民は他の土地へ移り住む。秋の政令を行えば、丘も湿地も水びたしになり、穀物が実らず、女性の災い(出産の障り)が多くなる。冬の政令を行えば、風や寒さが時節はずれに起こり、鷹やはやぶさが早くから獲物を襲い、四方の辺境の民は城や砦に逃げ込む。
解説
季夏の農作業の工夫と、この月に誤った政令を行った場合の災異を述べる段である。蒸し暑く大雨の降るこの時期に、刈った草を焼き、そこへ水を引き入れると、熱湯をかけたように雑草が枯れ、その灰と腐った草が田の肥料となり、硬い土が柔らかく肥えるという。暑さと雨という季節の条件をそのまま農作業の力として生かす、きわめて実際的な知恵である。後半の災異では、季夏に春の令を行えば穀物が落ちて風邪がはやり、民が土地を離れ、秋の令を行えば水びたしで作物が実らず出産の障りが多くなり、冬の令を行えば寒さが時ならず来て辺境が乱れるとされる。厳しい暑さや長雨といった避けがたい条件を、嘆くのではなく仕事に役立てるという発想は、制約の多い今日の仕事の場でも大いに学ぶべきところがある。
この章句が説くこと
礼記月令農事季夏工夫
関連する章句
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礼記・月令是の月や、草木黄落し、乃ち薪を伐りて炭と為す。 蟄虫咸(みな)俯(ふ)して内に在り、皆其の戸を墐(ぬ)る。乃ち獄刑を趣(うなが)し、有罪を留むること毋し。禄秩の当たらざるもの、供養の宜しからざる者を収む。 是の月や、天子乃ち犬を以て稲を嘗み、先ず寝廟に薦む。 季秋に夏の令を行えば、則ち其の国大いに水あり、冬蔵殃敗(おうはい)し、民に鼽嚏(きゅうてい)多し。冬の令を行えば、則ち国に盗賊多く、辺竟(へんきょう)寧からず、土地分裂す。春の令を行えば、則ち煖風来たり至り、民気解惰し、師興りて居らず。
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礼記・月令孟春に夏の令を行えば、則ち雨水時ならず、草木蚤(はや)く落ち、国時に恐れ有り。秋の令を行えば、則ち其の民大いに疫(えき)し、猋風(ひょうふう)暴雨総(すべ)て至り、藜(あかざ)・莠(はぐさ)・蓬(よもぎ)・蒿(よもぎ)並び興る。冬の令を行えば、則ち水潦(すいろう)敗を為し、雪霜大いに摯(いた)り、首種(しゅしゅ)入らず。 仲春の月、日は奎(けい)に在り、昏に弧(こ)中し、旦に建星中す。其の日は甲乙、其の帝は大皞、其の神は句芒。其の虫は鱗。其の音は角、律は夾鍾(きょうしょう)に中る。其の数は八。其の味は酸、其の臭は羶、其の祀りは戸、祭るに脾を先にす。
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礼記・月令季冬に秋の令を行えば、則ち白露蚤(はや)く降り、介虫妖を為し、四鄙(しひ)保に入る。春の令を行えば、則ち胎夭(たいよう)多く傷(そこな)われ、国に固疾(こしつ)多し、之に命じて逆と曰う。夏の令を行えば、則ち水潦(すいろう)国を敗り、時雪降らず、冰凍消釈す。
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礼記・月令凡そ大事を挙ぐるには、大数に逆らうこと毋く、必ず其の時に順い、慎んで其の類に因れ。 仲秋に春の令を行えば、則ち秋雨降らず、草木生栄し、国乃ち恐れ有り。夏の令を行えば、則ち其の国乃ち旱し、蟄虫蔵れず、五穀復た生ず。冬の令を行えば、則ち風災数(しばしば)起こり、収雷先んじて行われ、草木蚤く死す。
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礼記・月令是の月や、生気方(まさ)に盛んに、陽気発泄(はっせつ)し、句(こう)なる者畢(ことごと)く出で、萌ゆる者尽く達す。以て内(い)るべからず。天子徳を布き恵みを行い、有司に命じて倉廩(そうりん)を発し、貧窮に賜い、乏絶を振(すく)い、府庫を開き、幣帛(へいはく)を出だし、天下に周(あまね)くせしむ。諸侯を勉め、名士を聘(へい)し、賢者を礼す。 是の月や、司空(しくう)に命じて曰く、「時雨将に降らんとし、下水上騰せん。国邑を循行し、原野を周視し、隄防(ていぼう)を修利し、溝瀆(こうとく)を道達し、道路を開通して、障塞有ること毋かれ。田猟の罝罘(しょふ)・羅罔(らもう)・畢翳(ひつえい)・餧獣(いじゅう)の薬は、九門を出だすこと毋かれ」と。
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礼記・月令孟秋に冬の令を行えば、則ち陰気大いに勝ち、介虫(かいちゅう)穀を敗り、戎兵乃ち来たる。春の令を行えば、則ち其の国乃ち旱し、陽気復た還り、五穀実無し。夏の令を行えば、則ち国に火災多く、寒熱節ならず、民に瘧疾(ぎゃくしつ)多し。 仲秋の月、日は角(かく)に在り、昏に牽牛中し、旦に觜觿(しけい)中す。其の日は庚辛、其の帝は少暭、其の礼は蓐収。其の虫は毛。其の音は商、律は南呂(なんりょ)に中る。其の数は九。其の味は辛、其の臭は腥。其の祀りは門、祭るに肝を先にす。
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