礼記 / 檀弓上
穆公之母卒,使人問於曾子曰:「如之何?」對曰:「申也聞諸申之父曰:哭泣之哀,齊、斬之情,饘粥之食,自天子達。布幕,衛也;縿幕,魯也。」 晉獻公將殺其世子申生,公子重耳謂之曰:「子蓋言子之志於公乎?」世子曰:「不可,君安驪姬,是我傷公之心也。」曰:「然則蓋行乎?」世子曰:「不可,君謂我欲弒君也,天下豈有無父之國哉!吾何行如之?」使人辭於狐突曰:「申生有罪,不念伯氏之言也,以至于死。申生不敢愛其死,雖然,吾君老矣,子少,國家多難,伯氏不出而圖吾君,伯氏苟出而圖吾君,申生受賜而死。」再拜稽首,乃卒。是以為恭世子也。
新字:穆公之母卒,使人問於曽子曰:「如之何?」対曰:「申也聞諸申之父曰:哭泣之哀,斉、斬之情,饘粥之食,自天子達。布幕,衛也;縿幕,魯也。」 晋献公将殺其世子申生,公子重耳謂之曰:「子蓋言子之志於公乎?」世子曰:「不可,君安驪姫,是我傷公之心也。」曰:「然則蓋行乎?」世子曰:「不可,君謂我欲弒君也,天下豈有無父之国哉!吾何行如之?」使人辞於狐突曰:「申生有罪,不念伯氏之言也,以至于死。申生不敢愛其死,雖然,吾君老矣,子少,国家多難,伯氏不出而図吾君,伯氏苟出而図吾君,申生受賜而死。」再拝稽首,乃卒。是以為恭世子也。
書き下し
穆公の母卒す。人をして曾子に問わしめて曰く、「これを如何(いかん)せん」と。対えて曰く、「申や諸(これ)を申の父に聞けり。曰く、哭泣の哀、斉・斬の情、饘粥(せんしゅく)の食は、天子より達す。布幕は衛なり、縿幕(しょうばく)は魯なり」と。 晋の献公将に其の世子申生を殺さんとす。公子重耳これに謂いて曰く、「子蓋(なん)ぞ子の志を公に言わざるか」と。世子曰く、「不可なり。君は驪姫(りき)に安んず。是れ我公の心を傷つくるなり」と。曰く、「然らば則ち蓋ぞ行らざるか」と。世子曰く、「不可なり。君我を君を弑せんと欲すと謂うなり。天下豈に父無きの国有らんや。吾何くにか行きてこれを如(ゆ)かん」と。人をして狐突(ことつ)に辞せしめて曰く、「申生罪有り、伯氏の言を念わず、以て死に至る。申生敢えて其の死を愛(お)しまず。然りと雖も、吾が君老いたり、子少(わか)し、国家難多し。伯氏出でて吾が君を図らず。伯氏苟(いやし)くも出でて吾が君を図らば、申生賜を受けて死せん」と。再拝稽首して、乃ち卒す。是を以て恭世子と為すなり。
現代語訳
魯の穆公の母が亡くなった。穆公は人をやって曾申(曾子の子)に「どのようにすべきか」と尋ねさせた。曾申は答えた。「私は父(曾子)からこう聞いております。哭き悲しむ哀しみ、斉衰(しさい、二番目に重い喪服)・斬衰(ざんさい、最も重い喪服)を着る心、粥をすするだけの食事は、天子から庶人まで同じである。棺を覆う幕を布で作るのは衛(諸侯の礼)であり、絹で作るのは魯(天子の礼)である、と」。 晋の献公は、世継ぎの申生を殺そうとしていた。弟の公子重耳(後の文公)が申生に言った。「兄上はどうしてご自分の本心を父君に申し上げないのですか」。申生は言った。「それはできない。父君は驪姫(献公の寵妃)がいてこそ心安らかでおられる。私が申し開きをすれば、父君の心を傷つけることになる」。重耳は言った。「それならどうして国外に逃れないのですか」。申生は言った。「それもできない。父君は私が君を殺そうとしたと思っておられる。天下のどこに父のない国があろうか。私はどこへ行けばよいのか」。申生は人をやって狐突(申生の傅役)に別れを告げさせた。「申生には罪があります。伯氏(狐突)の忠告を心にかけなかったために、死ぬことになりました。申生は死を惜しみはしません。けれども、わが君は年老い、跡継ぎは幼く、国には難事が多い。伯氏が出仕してわが君のために計らってくださらないのが気がかりです。伯氏がもし出仕してわが君のために計らってくださるなら、申生はそのご恩を受けて死にましょう」。そして再拝し額を地につけて礼をし、死んだ。それゆえ彼は「恭世子」と諡されたのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
尚書・太甲中先を奉じては孝を思い、下に接しては恭を思う。遠きを視るは惟れ明、徳を聴くは惟れ聡。
-
論語・為政篇子夏孝を問う。子曰く、「色難し。事有れば弟子其の労に服し、酒食有れば先生に饌(まかな)う。曾て是を以て孝と為さんや。」
-
論語・為政篇孟懿子孝を問う。子曰く、「違(たが)うこと無かれ。」樊遅御(ぎょ)す。子之に告げて曰く、「孟孫我に孝を問う。我対えて曰く、違(たが)うこと無かれと。」樊遅が曰く、「何の謂(いい)ぞや。」子曰く、「生きては之に事(つか)うるに礼を以てし、死しては之を葬るに礼を以てし、之を祭るに礼を以てす。」
-
論語・学而篇子曰く、「父在せば其の志を観、父没すれば其の行いを観る。三年父の道を改むること無くんば、孝と謂う可し。」
-
論語・為政篇孟武伯孝を問う。子曰く、「父母は唯其の疾(やまい)を之憂う。」
-
論語・為政篇子游孝を問う。子曰く、「今の孝者は、是れ能く養うと謂う。犬馬に至るまで、皆能く養うこと有り。敬せずんば、何を以て別たんや。」
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る