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礼記 / 曲礼上

客車不入大門。婦人不立乘。犬馬不上於堂。 故君子式黃髮,下卿位;入國不馳,入里必式。君命召,雖賤人,大夫士必自御之。介者不拜,為其拜而蓌拜。祥車曠左,乘君之乘車不敢曠左;左必式。僕御婦人,則進左手,後右手;御國君,則進右手,後左手而俯。國君不乘奇車。車上不廣欬,不妄指。立視五巂,式視馬尾,顧不過轂。國中以策彗卹勿驅。塵不出軌。國君下齊牛,式宗廟。大夫士下公門,式路馬。乘路馬,必朝服載鞭策,不敢授綏,左必式。步路馬,必中道。以足蹙路馬芻,有誅;齒路馬,有誅。

新字:客車不入大門。婦人不立乗。犬馬不上於堂。 故君子式黄髪,下卿位;入国不馳,入里必式。君命召,雖賤人,大夫士必自御之。介者不拝,為其拝而蓌拝。祥車曠左,乗君之乗車不敢曠左;左必式。僕御婦人,則進左手,後右手;御国君,則進右手,後左手而俯。国君不乗奇車。車上不広欬,不妄指。立視五巂,式視馬尾,顧不過轂。国中以策彗卹勿駆。塵不出軌。国君下斉牛,式宗廟。大夫士下公門,式路馬。乗路馬,必朝服載鞭策,不敢授綏,左必式。歩路馬,必中道。以足蹙路馬芻,有誅;歯路馬,有誅。

書き下し

客車は大門に入らず。婦人は立乗せず。犬馬は堂に上らず。 故に君子は黄髪に式(しょく)し、卿位に下る。国に入りては馳せず、里に入りては必ず式す。君命じて召せば、賤人と雖も、大夫・士必ず自らこれを御す。介者は拝せず、其の拝して蓌拝(ざはい)するが為なり。祥車は左を曠(むな)しくし、君の乗車に乗りては敢えて左を曠しくせず。左には必ず式す。僕、婦人を御するには、則ち左手を進め、右手を後にす。国君を御するには、則ち右手を進め、左手を後にして俯す。国君は奇車に乗らず。車上には広く欬(しわぶ)かず、妄りに指ささず。立ちては五巂(ごけい)を視、式しては馬尾を視、顧みるに轂(こしき)を過ぎず。国中には策彗(さくすい)を以て卹勿(じゅつぶつ)し、駆ること勿かれ、駆ること勿かれ。塵は軌を出でず。国君は斉牛に下り、宗廟に式す。大夫・士は公門に下り、路馬に式す。路馬に乗るには、必ず朝服して鞭策を載せ、敢えて綏を授けず、左には必ず式す。路馬を歩ませるには、必ず道に中す。足を以て路馬の芻(まぐさ)を蹙(け)れば、誅有り。路馬を歯(よわい)すれば、誅有り。

現代語訳

客の車は主人の家の大門の内には乗り入れない。婦人は車に立って乗らない。犬や馬は堂に上げない。 だから君子は、白髪が黄ばむほどの老人に出会えば車の横木に手をかけて敬礼し、卿の位の前を通るときは車を下りる。都に入ったら車を走らせず、村に入ったら必ず横木に手をかけて敬礼する。君が命じて呼び寄せる者であれば、たとえ身分の低い人であっても、大夫や士が必ず自分で車を御して迎えに行く。鎧を着た者は拝礼をしない。鎧を着たまま拝礼すると、身をかがめきれずに形だけの崩れた拝礼になるからである。葬儀の後の祥祭で死者の霊のために用いる車は左の席を空けておくが、君の車に陪乗するときは左の席を空けたままにはしない。左に乗る者は必ず横木に手をかけて身を慎む。御者が婦人を乗せて御するときは、左手を前に、右手を後ろにする。国君を乗せて御するときは、右手を前に、左手を後ろにして身をかがめる。国君は規格外の車には乗らない。車の上では大きな咳をせず、みだりに指ささない。立って乗っているときは車の前方五巂(馬が引く車輪の回り五つ分ほど)の距離を見、横木に手をかけて身をかがめているときは馬の尾を見、振り返っても車の轂(こしき、車輪の軸受け)より後ろは見ない。都の中では、竹の鞭の先で馬に軽く触れるだけにして、走らせてはならない、決して走らせてはならない。車の立てる土ぼこりが轍の外に出ないようにする。国君は祭りに用いる牛に出会えば車を下り、宗廟の前では横木に手をかけて敬礼する。大夫や士は君の門の前で車を下り、君の車を引く馬に出会えば横木に手をかけて敬礼する。君の車馬に乗るときは、必ず朝服を着て鞭を携え、人に乗車用の綱を渡させず、左に乗る者は必ず横木に手をかけて身を慎む。君の馬を歩かせるときは、必ず道の真ん中を行く。君の馬の飼い葉を足で蹴ったら罰せられる。君の馬の歯を見て年齢をはかったら罰せられる。

解説

曲礼上篇の結びで、車に乗るときの礼、とりわけ敬礼の仕方と、君の車馬への敬意を定めた段である。古代の車には前に横木(式)があり、手をかけて身をかがめるのが車上での敬礼であった。白髪の老人には式し、卿の位の前では車を下りるという規定は、年齢と位の双方を敬う礼の構えを示している。都に入れば走らず、村に入れば式すというのも、人の多い所で威を振るわず、住む人々に敬意を払うためである。鎧を着た者が拝礼しないのは、鄭玄が注するとおり、身をかがめられずに崩れた拝礼になり容節を失うからで、形の整わない礼ならしないほうがよいという考えである。後半では君の車馬そのものが敬意の対象となり、君の馬の飼い葉を蹴ることや馬の歯で年齢をはかることまで罰せられる。主人に属するものを大切に扱うことが主人への敬意だという論理である。車上で大きな咳をせず、みだりに指ささない、振り返りすぎないといった戒めは、公共の場での振る舞いの心得として今も通じる。

この章句が説くこと

礼記車礼敬老公共曲礼

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