礼記 / 少儀
僕於君子,君子升下則授綏;始乘則式;君子下行,然後還立。乘貳車則式,佐車則否。貳車者,諸侯七乘,上大夫五乘,下大夫三乘。有貳車者之乘馬服車不齒。觀君子之衣服,服劍,乘馬,弗賈。
新字:僕於君子,君子升下則授綏;始乗則式;君子下行,然後還立。乗貳車則式,佐車則否。貳車者,諸侯七乗,上大夫五乗,下大夫三乗。有貳車者之乗馬服車不歯。観君子之衣服,服剣,乗馬,弗賈。
書き下し
君子に僕たるには、君子升下すれば則ち綏(すい)を授く。始めて乗れば則ち式す。君子下りて行けば、然る後に還りて立つ。貳車に乗れば則ち式し、佐車には則ち否らず。貳車は、諸侯は七乗、上大夫は五乗、下大夫は三乗。貳車有る者の乗馬・服車は歯せず。君子の衣服・服剣・乗馬を観て、賈(あたい)せず。
現代語訳
君子の車の御者となるときは、君子が乗り降りするたびに綏(すい、つかまるための綱)を手渡す。君子が乗り込んだばかりのときは、式(しょく、車の横木に手をかけて身をかがめる礼)をする。君子が車を降りて歩いて行ったら、そのあとで車を回して立って待つ。儀礼や祭祀の副車である貳車(じしゃ)に乗るときは式をするが、戦や狩りの副車である佐車(さしゃ)ではしない。貳車の数は、諸侯は七台、上大夫は五台、下大夫は三台である。貳車を持つような身分の人の乗る馬や車について、その年齢や新旧をあれこれと言わない。君子の衣服や佩びている剣、乗っている馬を見ても、値踏みをしない。
解説
君子の車を御するときの作法と、副車の数、そして尊い人の持ち物に対する態度を定めた段である。乗り降りのたびに綏を渡し、君子が歩み去ってから車を回すという手順は、仕える者が主人の動きの一歩後ろで動くという、少儀篇全体に通じる姿勢を示している。貳車と佐車の違いについて、鄭玄は朝見や祭祀の副車を貳、戦や狩りの副車を佐というと注し、平時の礼の車では式をして敬いを表すが、戦の場では礼の動作より実務が優先されるとする。後半の、爵位ある人の馬の歯を数えず、君子の衣服や剣を値踏みしないという戒めについて、鄭玄は、尊い者の持ち物を値踏みするのは敬いではないと注する。人の持ち物の値段や新しさを話題にすることは、今でも品のない振る舞いとされる。相手の持ち物ではなく人柄に目を向けよという教えは、時代を越えて通じる。
この章句が説くこと
礼記少儀御者車敬
関連する章句
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『呻吟語』内篇・談道・敬は人を擇ばず、事を擇ばず、時を擇ばず或ひと敬の道を問ふ。曰く、「外面整齊嚴肅、内面齊莊中正なるは、是れ靜時涵養底の敬なり。書を讀めば則ち心讀む所に在り、事を治むれば則ち心治むる所に在るは、是れ主一無適底の敬なり。門を出づれば大賓を見るがごとく、民を使ふには大祭を承くるがごとくなるは、是れ隨事小心底の敬なり」と。或ひと曰く、「若し笑談歌詠、宴息造次の時ならば、恐らくは是くのごとくんば則ち矜持して泰然ならざらん」と。曰く、「敬は端嚴を以て體と為し、虛活を以て用と為し、正を離れざるを以て主と為す。齋日に衣冠して寢ぬるは、祭る所の者を夢寐すればなり。齋せざるの寢は、則ち衣を解き冕を脫ぐ。未だ衣冕を釋きて敬を持する者有らず。然り而して心邪僻に流れず、事道義に詭らざれば、則ち其の敬為るを害せず。君若し專ら端嚴の上に去きて敬を求めば、則ち鋤を荷ひ畚を負ひ、轡を執り車を御し、鄙事賤役、古の聖賢も皆之を為せり。豈に能く日日手容恭しく足容重からんや。又孔子の肱を曲げ掌を指し、及び居るに容らざる、點の沂に浴するがごときも、何ぞ其の敬為るを害せんや。大端心と正と依り、事と道と合へば、端嚴に拘拘たらずと雖も、其の敬為るを害せず。苟くも心千里に游び、意百欲を逐ひて、此の身は卻つて兀然として端嚴に此に在らば、這れは敬なりや否や。譬へば謹んで避け深く藏れ、燭を秉り珮を鳴らし、緩やかに步み輕く聲するは、女教の『内則』原と是くのごとし。貞信を養ふ所以なり。若し饁婦汲妻及び顛沛奔走の際に當たらば、自ら是れ迴避し得ず。然り而して貞信の守は深藏謹避する者と同じ。是れ何ぞ其の女教為るを害せんや。是の故に敬は人を擇ばず、敬は事を擇ばず、敬は時を擇ばず、敬は地を擇ばず。只だ個の心と正と依り、事と道と合ふを要するのみ」と。
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『呻吟語』内篇・修身・苟を反して敬と為す敬なる者は、苟せざるの謂ひなり。故に苟を反して敬と為す。
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