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礼記 / 曲礼上

大上貴德,其次務施報。禮尚往來:往而不來,非禮也;來而不往,亦非禮也。人有禮則安,無禮則危。故曰:「禮者不可不學也。」夫禮者,自卑而尊人。雖負販者,必有尊也,而況富貴乎?富貴而知好禮,則不驕不淫;貧賤而知好禮,則志不懾。

新字:大上貴徳,其次務施報。礼尚往来:往而不来,非礼也;来而不往,亦非礼也。人有礼則安,無礼則危。故曰:「礼者不可不学也。」夫礼者,自卑而尊人。雖負販者,必有尊也,而況富貴乎?富貴而知好礼,則不驕不淫;貧賤而知好礼,則志不懾。

書き下し

大上(たいじょう)は徳を貴び、其の次は施報に務む。礼は往来を尚(たっと)ぶ。往きて来たらざるは、礼に非ざるなり。来たりて往かざるも、亦た礼に非ざるなり。人、礼有れば則ち安く、礼無ければ則ち危うし。故に曰く、「礼は学ばざるべからず」と。夫れ礼は、自ら卑(ひく)くして人を尊ぶ。負販(ふはん)の者と雖も、必ず尊ぶこと有り、而るを況(いわ)んや富貴をや。富貴にして礼を好むを知れば、則ち驕らず淫せず。貧賤にして礼を好むを知れば、則ち志懾(おそ)れず。

現代語訳

太古の最上の世には徳そのものが尊ばれ、その次の世には施しとその返礼に努めるようになった。礼はやりとりを重んじる。こちらから贈って相手から返ってこないのは礼ではなく、相手から贈られてこちらから返さないのもまた礼ではない。人は礼があれば安らかであり、礼がなければ危うい。だから「礼は学ばないわけにはいかない」というのである。そもそも礼とは、自分をへりくだらせて人を尊ぶことである。荷を背負って行商するような身分の低い者にも、必ず尊ぶべきところがある。まして富貴な人においてはなおさらである。富貴であっても礼を好むことを知っていれば、驕らず、度を越して乱れることもない。貧賤であっても礼を好むことを知っていれば、志がおじけることはない。

解説

「礼は往来を尚ぶ」という名高い句を含む段である。冒頭は時代の推移を語り、太古には徳そのものが重んじられたが、その後は施しと返礼という相互のやりとりが礼の中心になったとする。鄭玄はこの「大上」を帝皇の世と注している。往って来ないのも、来て往かないのも礼ではないという言い方は、贈答や訪問に限らず、あらゆる人間関係が一方通行では成り立たないことを簡潔に言い当てている。後半では礼の核心を「自ら卑くして人を尊ぶ」とまとめ、行商人のような身分の低い者にも尊ぶべきものがあると説く。富貴な者は礼によって驕りを抑え、貧賤な者は礼によって卑屈にならずにすむという対比は、論語の「貧しくして諂うこと無く、富みて驕ること無し」という子貢の問答を思わせる。立場の上下にかかわらず、礼は人を支える背骨になるという主張であり、恩を受けたら返すという日々の小さな往来にこそ、その実践がある。

この章句が説くこと

礼記往来返礼謙譲曲礼

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