遠羅天釜 / 『遠羅天釜』白幽仙人と気海丹田の養生
只返す〱も內觀の秘要を捨をかず熟鍊是あるべし內觀の眞修は第一養生の秘術にして仙人鍊丹の大事に契へりその初めは金仙氏に起つて中頃天台の智者に至つて摩訶止觀の中に精しく口授し玉へり吾壯年の頃をひ是を道士白幽先生に聞けり白幽は城州白川の巖窟に隱れて聞壽齢二百四十歲を閱すと時の人是を稱して白幽仙人と云故の丈山氏の師範なりと幽が言に曰く大凡の生を養ふの術上部は常に清涼ならん事を要し下部は常に溫煖ならん事を要す須らく知るべし元氣をして下に充しむるは是生を養ふ至要なる事を往々に神丹は五行合せて鍊と云事をのみ聞て水火木金土の五行は即ち眼耳鼻舌身の五根なる事を知らず五根を聚て神丹を鍊とは如何なる事ぞとならば蓋し五無漏の法あり眼妄りに見ず耳妄りに聞かず舌妄りに言ず身妄りに觸ず意妄りに思慮せざる時は混然たる本元の一氣湛然として目前に充是即ち彼孟軻氏の謂ゆる浩然の一氣なり是を引て臍輪氣海丹田の間に收て歲月を重ね是を守つて守一にし去り是を養つて無適にし去時覺へず丹竈を掀翻して內外中間八紘四維總に是一枚の大還丹自己即ち是天地に先つて生ぜず虛空に後れて死せざる底の長生久視の大神仙なる事を覺得せん玆に於て大洋を攪て酥酪となし厚土を變じて黃金とす是故に言ふ還丹の一粒點鐵成金と白玉蟾曰養生之要先不若鍊形鍊形之妙在乎凝神神凝則氣聚氣聚則丹成丹成則形固形固則神全と須らく知るべし丹は果して外物に非る事を蓋し地に玉田あり粱田あり玉田は珠玉を產するの地粱田は禾稼を成ずるの場人に氣海丹田あり氣海は元氣を收養ふの寶所丹田は神丹を精鍊し壽算を保護するの城府なり古云江海所以能爲百谷王者以其善下之と滄海既に萬水の下を占て百川を含容して增減なし氣海既に五內の下に居して眞氣を收めて飽事なし終に神丹を成就し仙都に入る丹田なる者一身三處吾謂ゆる丹田は下丹田なる者なり氣海丹田各々臍下に居す一寶にして二名あるが如し丹田は臍下二寸氣海は寸半眞氣常に此內に充寶して身心常に平坦なる時は世壽百歲を閱すと云とも鬢髮枯ず齒牙動かず眼力うたゝ鮮明にして皮膚次第に光澤あり是即ち元氣を養ひ得て神丹成熟したる効驗なり壽算限り有べからず但し修養の功の精麤如何に在らくのみ
新字:只返す〱も内観の秘要を捨をかず熟錬是あるべし内観の真修は第一養生の秘術にして仙人錬丹の大事に契へりその初めは金仙氏に起つて中頃天台の智者に至つて摩訶止観の中に精しく口授し玉へり吾壮年の頃をひ是を道士白幽先生に聞けり白幽は城州白川の巖窟に隠れて聞寿齢二百四十歳を閲すと時の人是を称して白幽仙人と云故の丈山氏の師範なりと幽が言に曰く大凡の生を養ふの術上部は常に清涼ならん事を要し下部は常に温煖ならん事を要す須らく知るべし元気をして下に充しむるは是生を養ふ至要なる事を往々に神丹は五行合せて錬と云事をのみ聞て水火木金土の五行は即ち眼耳鼻舌身の五根なる事を知らず五根を聚て神丹を錬とは如何なる事ぞとならば蓋し五無漏の法あり眼妄りに見ず耳妄りに聞かず舌妄りに言ず身妄りに触ず意妄りに思慮せざる時は混然たる本元の一気湛然として目前に充是即ち彼孟軻氏の謂ゆる浩然の一気なり是を引て臍輪気海丹田の間に収て歳月を重ね是を守つて守一にし去り是を養つて無適にし去時覚へず丹竈を掀翻して内外中間八紘四維総に是一枚の大還丹自己即ち是天地に先つて生ぜず虚空に後れて死せざる底の長生久視の大神仙なる事を覚得せん玆に於て大洋を攪て酥酪となし厚土を変じて黄金とす是故に言ふ還丹の一粒点鉄成金と白玉蟾曰養生之要先不若錬形錬形之妙在乎凝神神凝則気聚気聚則丹成丹成則形固形固則神全と須らく知るべし丹は果して外物に非る事を蓋し地に玉田あり粱田あり玉田は珠玉を産するの地粱田は禾稼を成ずるの場人に気海丹田あり気海は元気を収養ふの宝所丹田は神丹を精錬し寿算を保護するの城府なり古云江海所以能為百谷王者以其善下之と滄海既に万水の下を占て百川を含容して增減なし気海既に五内の下に居して真気を収めて飽事なし終に神丹を成就し仙都に入る丹田なる者一身三処吾謂ゆる丹田は下丹田なる者なり気海丹田各々臍下に居す一宝にして二名あるが如し丹田は臍下二寸気海は寸半真気常に此内に充宝して身心常に平坦なる時は世寿百歳を閲すと云とも鬢髪枯ず歯牙動かず眼力うたゝ鮮明にして皮膚次第に光沢あり是即ち元気を養ひ得て神丹成熟したる効験なり寿算限り有べからず但し修養の功の精麤如何に在らくのみ
書き下し
只返す〱も內觀の秘要を捨をかず熟鍊是あるべし內觀の眞修は第一養生の秘術にして仙人鍊丹の大事に契へりその初めは金仙氏に起つて中頃天台の智者に至つて摩訶止觀の中に精しく口授し玉へり吾壯年の頃をひ是を道士白幽先生に聞けり白幽は城州白川の巖窟に隱れて聞壽齢二百四十歲を閱すと時の人是を稱して白幽仙人と云故の丈山氏の師範なりと幽が言に曰く大凡の生を養ふの術上部は常に清涼ならん事を要し下部は常に溫煖ならん事を要す須らく知るべし元氣をして下に充しむるは是生を養ふ至要なる事を往々に神丹は五行合せて鍊と云事をのみ聞て水火木金土の五行は即ち眼耳鼻舌身の五根なる事を知らず五根を聚て神丹を鍊とは如何なる事ぞとならば蓋し五無漏の法あり眼妄りに見ず耳妄りに聞かず舌妄りに言ず身妄りに觸ず意妄りに思慮せざる時は混然たる本元の一氣湛然として目前に充是即ち彼孟軻氏の謂ゆる浩然の一氣なり是を引て臍輪氣海丹田の間に收て歲月を重ね是を守つて守一にし去り是を養つて無適にし去時覺へず丹竈を掀翻して內外中間八紘四維總に是一枚の大還丹自己即ち是天地に先つて生ぜず虛空に後れて死せざる底の長生久視の大神仙なる事を覺得せん玆に於て大洋を攪て酥酪となし厚土を變じて黃金とす是故に言ふ還丹の一粒點鐵成金と白玉蟾曰養生之要先不若鍊形鍊形之妙在乎凝神神凝則氣聚氣聚則丹成丹成則形固形固則神全と須らく知るべし丹は果して外物に非る事を蓋し地に玉田あり粱田あり玉田は珠玉を產するの地粱田は禾稼を成ずるの場人に氣海丹田あり氣海は元氣を收養ふの寶所丹田は神丹を精鍊し壽算を保護するの城府なり古云江海所以能爲百谷王者以其善下之と滄海既に萬水の下を占て百川を含容して增減なし氣海既に五內の下に居して眞氣を收めて飽事なし終に神丹を成就し仙都に入る丹田なる者一身三處吾謂ゆる丹田は下丹田なる者なり氣海丹田各々臍下に居す一寶にして二名あるが如し丹田は臍下二寸氣海は寸半眞氣常に此內に充寶して身心常に平坦なる時は世壽百歲を閱すと云とも鬢髮枯ず齒牙動かず眼力うたゝ鮮明にして皮膚次第に光澤あり是即ち元氣を養ひ得て神丹成熟したる効驗なり壽算限り有べからず但し修養の功の精麤如何に在らくのみ
現代語訳
重ね重ね、内観の秘要を見捨てず、熟練しなさい。内観の真の修行は、第一に養生の秘術であり、仙人の練丹の大事にもかなっている。その初めは釈迦仏に起こり、中ごろ天台の智者大師に至って『摩訶止観』の中に詳しく口授なさった。私は壮年のころ、これを道士の白幽先生に聞いた。白幽は城州白川の岩窟に隠れ、聞くところ年齢二百四十歳を過ぎたという。当時の人はこれを称して白幽仙人といった。故丈山氏の師範である。白幽の言葉にいう。「おおよそ生を養う術は、上部は常に清涼であることを要し、下部は常に温暖であることを要する。まさに知るべきである。元気を下に充たしめることが、生を養う至要であることを。ともすれば人は、神丹は五行が合わさって練られるとだけ聞いて、水火木金土の五行がすなわち眼耳鼻舌身の五根であることを知らない。五根を集めて神丹を練るとはどういうことかといえば、五つの無漏の法がある。眼はみだりに見ず、耳はみだりに聞かず、舌はみだりに言わず、身はみだりに触れず、意はみだりに思慮しない時、混然たる本元の一気が静かに目の前に充ちる。これがすなわち、あの孟子のいう浩然の気である。これを導いて臍輪・気海・丹田の間に収め、年月を重ね、これを守って守一とし、これを養って無適とすれば、知らぬ間に丹竈をひっくり返し、内外中間、八方四隅、すべてこれ一枚の大還丹、自己すなわち、天地に先立って生ぜず、虚空に遅れて死なない長生久視の大神仙であることを悟るだろう。ここにおいて大洋をかきまぜて乳酪とし、厚い土を変じて黄金とする。このゆえに『還丹の一粒、鉄に点じて金と成す』という」。白玉蟾は「養生の要は、まず形を練るにしくはなく、形を練る妙は神を凝らすにある。神が凝れば気が聚まり、気が聚まれば丹が成り、丹が成れば形が固まり、形が固まれば神が全うされる」という。まさに知るべきである。丹は決して外の物ではないことを。思うに地には玉田と粱田があり、玉田は珠玉を産する地、粱田は穀物を実らせる場である。人には気海と丹田があり、気海は元気を収め養う宝所、丹田は神丹を精錬し寿命を保護する城府である。古にいう、「江海がよく百谷の王たりうる所以は、それがよく下にあるからである」と。大海はすでに万水の下を占めて百川を含み容れ、増えも減りもしない。気海はすでに五臓の下に居て真気を収め、飽きることがない。ついに神丹を成就し仙都に入る。丹田なる者は一身に三か所ある。私がいう丹田は下丹田である。気海・丹田はともに臍の下にあり、一つの宝にして二つの名があるようなものである。丹田は臍下二寸、気海は一寸半、真気が常にこの内に充ち宝として、身心が常に平らかな時は、百歳を過ぎても鬢髪は枯れず、歯は動かず、眼力はいよいよ鮮明で、皮膚はしだいに光沢が出る。これがすなわち、元気を養い得て神丹が成熟した効験である。寿命に限りはない。ただし修養の功が精密か粗雑かにかかっているだけである。
解説

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
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『夜船閑話』序稿中何の説く処ぞ。曰く、大凡生を養ひ長寿を保つの要、形を錬るにしかず。形を錬るの要、神気をして丹田気海の間に凝らしむるにあり。神凝る則は気聚る。気聚る則は、即ち真丹成る。丹成る則は形固し。形固き則は神全し。神全き則は寿がし。是仙人九転還丹の秘訣に契へり。須らく知るべし、丹は果して外物に非ざることを。千万唯心火を降下し、気海丹田の間に充たしむるに有るらくのみ。
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遠羅天釜・『遠羅天釜』軟酥丸の観想で気を養う其後病中などに此物語りを思ひ出し侍れば忽ち慚愧の心起りて病苦も輕く成行樣、に覺へ候故あらまし書付け遣す事延壽堂中の人々病中の道情の一助ともなれがしの心にて侍り去乍ら、如上は正受老漢平生受用底の施藥にして甚だ一味單方攻擊の冷劑なり茲に又一方あり尤も虛弱の人に宜し心氣の勞疲を救ふ事甚だ妙なり上昇を引下げ腰脚を溫め腸胃を調和し眼を明かにし眞智を增長し一切の邪智を除く事大に効あり軟酥丸一劑諸法實相一斤我法二空各々一兩寂滅現前三兩無欲二兩動靜不二三兩絲瓜の皮一分五蘊放下着一斤右七味忍辱の汁に浸す事一夜陰乾して抹す例の通般若波羅蜜を以て調鍊し丸じて鴨卵の大さの如くならしめて頂上に安着す初心の行者は藥種如何斤兩如何を觀ずべからず只色香微妙の軟酥鴨卵の大さの如くなる者我頂上に頓在すと觀ず病者此藥を用ひんと要する時厚く坐物を敷脊梁骨を竪起し目を收めて端坐し徐々として身心を淘定めて須く思惟すべし大凡生を保つの要氣を養ふにしかず氣盡る時は身死す民衰る時は國亡るが如しと此語を三復し了つて正に此觀を成すべし彼頂上に安着する軟酥鴨卵の如くなる者其氣味微妙にして遍く頭顱の間を潤し浸々として潤下し來つて雨肩及び雙臂兩乳胸膈の間肺肝腸胃脊梁臀骨次第に沾注し將去る此時胸中の五積六聚疝癖塊痛心にしたがつて降下する事水の下にをもむくが如し歷々として聲あり遍身を流へ潤して下つて雙脚を溫む足心に至つて即ち止行者再び此想念をなすべし彼浸々として潤下する所の餘流積り湛へ暖醺して恰も世の良醫の種々妙香の藥物を聚め是を煎湯にして浴盤の中に盛湛へて我臍輪以下を漬浸が如しと此觀を作す時唯心所現の故に鼻根希有の香氣を聞身根妙好の輭觸を受身心共に調適なり忽ち積聚を消融し腸胃を調和し肌膚光澤を生じ大に氣力を增す若し時々に此觀を成熟せば何れの病か治せざらん何れの仙か成せざらん此は是養性の秘訣にして長生久視の妙術なり此方始め金仙氏に起つて中頃天台の智者大師に到つて大に勞疲の重痾を治し且其兄陳秦が必死を救ふ澆末難遭の靈方なり宜哉此道今人知得する底希なる事を老僧中頃道士白幽に聞き效驗の遲速は行人の勤と怠とに在く而已怠らざれば長壽を得道ことなかれ鵠林老去て大ひに老婆禪を說と恐くは知音の一見して手を拍して大笑するあらん何が故ぞ不臨亂不見貞臣操不臨財不知義士志
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『夜船閑話』本文是を真正丹竈功成る底の時節とす。豈に風に御し霞に跨がり地を縮め水を踏む等の瑣末たる幻事を以て懐とする者ならんや。大洋を攪いて酥酪とし、厚土を変じて黄金とす。前賢曰く、丹は丹田なり、液は肺液なり。肺液を以て丹田に還へす。是故に金液還丹と云ふ。
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遠羅天釜・『遠羅天釜』臍下に据える内観の公案只返々も內觀の眞修寔に放過すべからざる至要なり內觀の眞修とは吾此臍輪以下丹田氣海及び腰脚足心總に是趙州の無字無字何の道理かある吾この臍輪以下丹田氣海及び腰脚足心總に是自己本來の面目面目の鼻孔何の處にかある吾此臍輪以下丹田氣海及び腰脚足心總に是吾唯心の淨土淨土何の莊嚴かある吾此臍輪以下丹田氣海及腰脚足心總に是吾已身の彌陀彌陀何の法をか說吾此臍輪以下丹田氣海及び腰脚足心總に是吾本分の家鄕家鄕何の消息かあると咳唾掉臂寤時寐時男子たる者の思ひ立たる事を遂ずや置べき仕果ずやあるべきと決烈勇猛の大憤志を奮つて間もなく進み給はゞ平生の心意識情すべて行れず胸襟分外に清涼に分外に皎潔にして萬里の層氷裏にあるが如く縱ひ亂軍の場に入り歌舞遊宴の歌吹海に入るといへども人なき處に在が如く雲門大師の氣字王の如しと道底の大機は求めざるに煥發せん此時に當つて諸佛衆生もと是幻生死涅槃猶如昨夢天堂地獄を徹見し佛界魔宮を銷融し佛祖の正眼を瞎却し恣に百千無量の法門微塵恒沙の妙義を說き宣一切の含識を利益し塵沙劫を經て退屈せず永劫大法施を行じて曾て乏しき事なく空華の萬行を展開し谷響の度門を建立し臂に奪命の神符を掛け口に法窟の爪牙を咬鳴して十方參玄の衲子を惱害し釘を拔き楔を奪て毫釐も假事なく一箇半箇牙劒樹の如く口血盆に似たる底の凶惡無義の鈍暗漢を打出して以て佛祖の深恩を報答す是を佛國土の因緣菩薩の威儀と云ふ是はこれ萬夫に傑出する底の大丈夫兒生平の懷素なり