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夜船閑話 / 本文

蓋し五無漏の法あり。儞の六欲を去け、五官各々其職を忘るゝ則は、混然たる本源の眞氣彷彿として目前に充つ。是彼の大白道人の謂ゆる我が天を以て事る所の天に合する者なり。孟軻氏の謂ゆる浩然の氣是をひきいて臍輪氣海丹田の間に藏めて歳月を重ねて、是を守一にし去り、是を養て無適にし去て、一朝乍ち丹竈を掀飜する則は、內外中間、八紘四維、總に是一枚の大還丹。此時に當て初て自己卽ち是天地に先つて生せず、虚空に後れて死せざる底の眞箇長生久視の大神仙なることを覺得せん。

新字:蓋し五無漏の法あり。儞の六欲を去け、五官各々其職を忘るゝ則は、混然たる本源の真気彷彿として目前に充つ。是彼の大白道人の謂ゆる我が天を以て事る所の天に合する者なり。孟軻氏の謂ゆる浩然の気是をひきいて臍輪気海丹田の間に蔵めて歳月を重ねて、是を守一にし去り、是を養て無適にし去て、一朝乍ち丹竈を掀翻する則は、内外中間、八紘四維、総に是一枚の大還丹。此時に当て初て自己即ち是天地に先つて生せず、虚空に後れて死せざる底の真箇長生久視の大神仙なることを覚得せん。

書き下し

蓋し五無漏の法あり。儞の六欲を去け、五官各々其職を忘るゝ則は、混然たる本源の真気彷彿として目前に充つ。是彼の大白道人の謂ゆる我が天を以て事る所の天に合する者なり。孟軻氏の謂ゆる浩然の気是をひきいて臍輪気海丹田の間に蔵めて歳月を重ねて、是を守一にし去り、是を養て無適にし去て、一朝乍ち丹竈を掀翻する則は、内外中間、八紘四維、総に是一枚の大還丹。此時に当て初て自己即ち是天地に先つて生せず、虚空に後れて死せざる底の真箇長生久視の大神仙なることを覚得せん。

現代語訳

思うに、五無漏の法がある。おまえが六つの欲を退け、五官がそれぞれの働きを忘れれば、混然とした本源の真の気がありありと目の前に満ちる。これはかの太白道人の言う、自分の天をもって、仕えるところの天に合する、ということである。孟子の言う浩然の気を、臍輪、気海、丹田の間に導いて収め、年月を重ねて、これを守って一つにし、これを養ってとらわれのない状態にしていけば、ある朝ふいに丹を練る竈をひっくり返したように、内も外も中間も、八方も四隅も、すべてが一枚の大いなる還丹となる。このときに初めて、自分こそが、天地に先立って生まれず、虚空に後れて死なない、真の長生久視の大神仙であることを悟るであろう。

解説

六欲を去り、五官の働きを静めると、本源の気が満ちてくる。孟子の浩然の気を丹田に収め、長い年月をかけて守り養えば、ある日、自分と世界の区別がなくなるような大きな転換が訪れる、と説く。儒教の孟子、道教の太白道人、仏教の無漏と、三つの教えの言葉を自在に組み合わせているのが白隠らしい。欲や感覚に振り回されず、根気よく内側を養い続けた先に開ける境地を描いた段である。

この章句が説くこと

浩然の気丹田孟子三教転換守一

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