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おもひで草 / 學問要路・学問は利害を弁え行うためにある

物學するは、萬のうへの利害得失を辨知りて利に就きて害を去ん爲也、さらば朝宵に勤勵みてよく其利害得失を辨へ置て、さて他にも言敎へ書にも書記して我の爲他の爲にも物すべきわざなりけり、さらば苟且にも其利を知らば我も速に學ぶべく他にも疾く敎べし、苟且にも其害をさとらば我も速に斥け他をも誡むべき事なるを、其利を見て學ばず其害を知りて斥けぬは、世にもて諂ふ佞人とぞ言はまし、儒佛の道もこよなき利あらば假りて用むになでふとか有ん、先王の儒佛を用給ひしも其利を見認給へば也、害あらば口を極めて斥けんになでふとかあらん、先哲の儒佛を斥けしも其害を知れば也、

新字:物学するは、万のうへの利害得失を弁知りて利に就きて害を去ん為也、さらば朝宵に勤励みてよく其利害得失を弁へ置て、さて他にも言教へ書にも書記して我の為他の為にも物すべきわざなりけり、さらば苟且にも其利を知らば我も速に学ぶべく他にも疾く教べし、苟且にも其害をさとらば我も速に斥け他をも誡むべき事なるを、其利を見て学ばず其害を知りて斥けぬは、世にもて諂ふ佞人とぞ言はまし、儒仏の道もこよなき利あらば仮りて用むになでふとか有ん、先王の儒仏を用給ひしも其利を見認給へば也、害あらば口を極めて斥けんになでふとかあらん、先哲の儒仏を斥けしも其害を知れば也、

書き下し

物學するは、萬のうへの利害得失を辨知りて利に就きて害を去ん爲也、さらば朝宵に勤勵みてよく其利害得失を辨へ置て、さて他にも言敎へ書にも書記して我の爲他の爲にも物すべきわざなりけり、さらば苟且にも其利を知らば我も速に學ぶべく他にも疾く敎べし、苟且にも其害をさとらば我も速に斥け他をも誡むべき事なるを、其利を見て學ばず其害を知りて斥けぬは、世にもて諂ふ佞人とぞ言はまし、儒佛の道もこよなき利あらば假りて用むになでふとか有ん、先王の儒佛を用給ひしも其利を見認給へば也、害あらば口を極めて斥けんになでふとかあらん、先哲の儒佛を斥けしも其害を知れば也、

現代語訳

物事を学ぶのは、あらゆる事柄の利害得失を見分け知って、利に就き害を去るためです。それならば、朝夕に励んでよくその利害得失を見分けておき、そのうえで他人にも言い教え、書にも書き記して、自分のためにも他人のためにも役立てるべきことでした。そうであれば、いやしくもその利を知ったなら、自分もすぐに学び、他人にもすみやかに教えるべきですし、いやしくもその害をさとったなら、自分もすぐに退け、他人をも戒めるべきなのに、その利を見ても学ばず、その害を知っても退けないのは、世に媚びへつらう佞人と言うべきです。儒教や仏教の道も、このうえない利があるなら、借りて用いることに何の差し支えがあるでしょうか。昔の聖王が儒教や仏教をお用いになったのも、その利をお認めになったからです。害があるなら、口を極めて退けるのに何の差し支えがあるでしょうか。昔の賢人が儒教や仏教を退けたのも、その害を知っていたからです。

解説

学問の目的は物知りになることではなく、利と害を見分けて実際に行動を変えることだと述べる一節です。有益と分かったものは自分が学び、人にも教え、有害と分かったものは自分が退け、人にも注意する、それをしないのは佞人だと厳しく言います。儒教や仏教についても、利があれば用い、害があれば退けるという実用の立場に立っています。現代の管理職も、研修で得た知見を自分の運用に反映し、部下へ共有してこそ学びが成果につながります。

この章句が説くこと

おもひで草伴林光平学問利害得失実用佞人

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