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翁問答 / 改訂翁問答丁亥春

問曰、四書五經は世間に流布して讀もの澤山なれども、此實義明かならずして、世俗の學問をそしるはいかゞ。答曰、世俗の學問をそしるは世俗のあやまりにあらずや、學問する人のあやまりなり、世間の學問をする人を見るに、學問の實義を知て學問に志す方はまれなり、多分ものよみ奉公の望か、または醫者のかざりか、或はだて道具か、此三つを志として學問するによつて、學問第一義の明德を明かにする事は、始終とりさたなき事なれば、心をたゞしく身をおさむる益はなくて、文藝を高滿する病のかさむ計なり、

新字:問曰、四書五経は世間に流布して読もの沢山なれども、此実義明かならずして、世俗の学問をそしるはいかゞ。答曰、世俗の学問をそしるは世俗のあやまりにあらずや、学問する人のあやまりなり、世間の学問をする人を見るに、学問の実義を知て学問に志す方はまれなり、多分ものよみ奉公の望か、または医者のかざりか、或はだて道具か、此三つを志として学問するによつて、学問第一義の明徳を明かにする事は、始終とりさたなき事なれば、心をたゞしく身をおさむる益はなくて、文芸を高満する病のかさむ計なり、

書き下し

問曰、四書五経は世間に流布して読もの沢山なれども、此実義明かならずして、世俗の学問をそしるはいかゞ。答曰、世俗の学問をそしるは世俗のあやまりにあらずや、学問する人のあやまりなり、世間の学問をする人を見るに、学問の実義を知て学問に志す方はまれなり、多分ものよみ奉公の望か、または医者のかざりか、或はだて道具か、此三つを志として学問するによつて、学問第一義の明徳を明かにする事は、始終とりさたなき事なれば、心をたゞしく身をおさむる益はなくて、文芸を高満する病のかさむ計なり、

現代語訳

問うて言う。「四書五経は世間に流布して読むものは多いのに、その実義が明らかでなく、世俗が学問をそしるのはどうしてか」。答えて言う。「世俗が学問をそしるのは、世俗の誤りであろうか。学問する人の誤りである。世間の学問をする人を見ると、学問の実義を知って学問に志す者はまれである。多くは物読みとして仕官する望みか、医者の飾りか、あるいは伊達の道具か、この三つを志として学問するので、学問の第一義である明徳を明らかにすることは、始終取りざたされない。それゆえ心を正しくし身を修める益はなく、文芸を鼻にかける病が重なるばかりである」。

解説

学問が世間から悪く言われるのは世間が悪いのではなく、学ぶ側に原因があると藤樹は言い切る。学ぶ動機が仕官、医者としての箔付け、見栄の三つに偏れば、心を正し身を修めるという本来の目的は置き去りにされ、知識を誇る病だけが重くなる。動機が学びの質を決めるという指摘である。資格取得や転職のための勉強も、それ自体は悪くないが、それだけが目的になると人格の成長には結びつかない。学ぶ人が周りから敬遠されるとき、責めるべきはまず自分の学び方だという厳しさを受け止めたい。

この章句が説くこと

学問明徳実義動機修養心

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