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翁問答 / 改訂翁問答丙戌冬

躰充曰、孔子かくの如く軍法に長じたまひて、衛の靈公に傳へたまはざるはいかゞ。師の曰、兵は凶器なりといへども、君子これを用れば天下の亂を定めて、凶器かへつて寶となれり、小人是を用ふれば國をみだり天下にわざはひして凶器ますます凶器となれり、然るを靈公小人にして戰伐をこのみ强剛暴逆のいくさをたくましくせんために陳をとはれたり。

新字:体充曰、孔子かくの如く軍法に長じたまひて、衛の霊公に伝へたまはざるはいかゞ。師の曰、兵は凶器なりといへども、君子これを用れば天下の乱を定めて、凶器かへつて宝となれり、小人是を用ふれば国をみだり天下にわざはひして凶器ますます凶器となれり、然るを霊公小人にして戦伐をこのみ強剛暴逆のいくさをたくましくせんために陳をとはれたり。

書き下し

体充曰、孔子かくの如く軍法に長じたまひて、衛の霊公に伝へたまはざるはいかゞ。師の曰、兵は凶器なりといへども、君子これを用れば天下の乱を定めて、凶器かへつて宝となれり、小人是を用ふれば国をみだり天下にわざはひして凶器ますます凶器となれり、然るを霊公小人にして戦伐をこのみ強剛暴逆のいくさをたくましくせんために陳をとはれたり。

現代語訳

躰充が言った。「孔子がこのように軍法に長じておられながら、衛の霊公にお伝えにならなかったのはなぜでしょうか」。師は言った。「兵は凶器であるけれども、君子がこれを用いれば天下の乱を定めて、凶器がかえって宝となる。小人がこれを用いれば国を乱し天下に災いをもたらして、凶器はますます凶器となる。ところが霊公は小人であって戦伐を好み、強剛暴逆の戦をほしいままにしようとして陣立てを問われたのである」。

解説

論語衛霊公篇で、霊公に陣立てを問われた孔子は「軍旅のことは未だ之を学ばず」と答えて翌日立ち去った。前段で孔子の軍法の才を示したので、では霊公になぜ教えなかったのかという問いが自然に生じる。藤樹は、兵は使う人によって宝にも災いにもなる凶器であり、戦好きの小人に軍法を授けることは盗人に道を教えるようなものだと答える(下卷之本にも同じ論がある)。力や技術そのものに善悪はなく、それを誰がどんな心で使うかで価値が決まる。強力な道具や権限を誰に預けるかを判断するとき、相手の心根を見る大切さを教える。

この章句が説くこと

兵君子小人孔子軍法仁義

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