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翁問答 / 下卷之末之末

體充曰、全孝の心法をばいかやうに受用候はんや。師の曰、孝經曰、夫孝天之經也地之義也、民之行也、天地之經而民是則之、又曰、天地之性人爲貴、人之行莫大於孝孝莫大於嚴父、嚴父莫大於配天、又曰、孝悌之至通於神明光於四海無所不通、詩曰、自西自東自南自北、無思不服、曾子曰、夫孝置之而塞乎天地薄之而橫乎四海施諸後世而無朝夕推而放諸東海而準、推而放諸西海而準、推而放諸南海而準、推而放諸北海而準詩曰、自西自東自南自北、無思不服此之謂也、又曰、衆之本敎曰孝、其行曰養、養可能也、敬爲、難、敬可能也、安爲、難安可能也卒爲難、父母旣沒、愼行其身不遺父母惡名、可謂能終矣、仁者仁此者也、禮者、履此者也、義者宜此者也、信者、信此者也、强者强此者也、樂者自順此生、刑自反此作、

新字:体充曰、全孝の心法をばいかやうに受用候はんや。師の曰、孝経曰、夫孝天之経也地之義也、民之行也、天地之経而民是則之、又曰、天地之性人為貴、人之行莫大於孝孝莫大於厳父、厳父莫大於配天、又曰、孝悌之至通於神明光於四海無所不通、詩曰、自西自東自南自北、無思不服、曽子曰、夫孝置之而塞乎天地薄之而横乎四海施諸後世而無朝夕推而放諸東海而準、推而放諸西海而準、推而放諸南海而準、推而放諸北海而準詩曰、自西自東自南自北、無思不服此之謂也、又曰、衆之本教曰孝、其行曰養、養可能也、敬為、難、敬可能也、安為、難安可能也卒為難、父母既没、慎行其身不遺父母悪名、可謂能終矣、仁者仁此者也、礼者、履此者也、義者宜此者也、信者、信此者也、強者強此者也、楽者自順此生、刑自反此作、

書き下し

体充曰、全孝の心法をばいかやうに受用候はんや。師の曰、孝経に曰く、夫れ孝は天の経なり、地の義なり、民の行なり、天地の経にして民是に則る、又曰く、天地の性人を貴しと為す、人の行は孝より大なるは莫く、孝は父を厳ぶより大なるは莫く、父を厳ぶは天に配するより大なるは莫し、又曰く、孝悌の至りは神明に通じ、四海に光りて通ぜざる所無し、詩に曰く、西よりし東よりし南よりし北よりし、思ひて服せざる無しと、曽子曰く、夫れ孝は之を置けば天地に塞がり、之を溥くすれば四海に横たはり、諸を後世に施して朝夕無し、推して諸を東海に放りて準とし、推して諸を西海に放りて準とし、推して諸を南海に放りて準とし、推して諸を北海に放りて準とす、詩に曰く、西よりし東よりし南よりし北よりし、思ひて服せざる無しと、此の謂なり、又曰く、衆の本教を孝と曰ふ、其の行を養と曰ふ、養は能くすべきなり、敬を難しと為す、敬は能くすべきなり、安を難しと為す、安は能くすべきなり、卒を難しと為す、父母既に没して、慎みて其の身を行ひ、父母に悪名を遺さざるは、能く終ると謂ふべし、仁とは此を仁とする者なり、礼とは此を履む者なり、義とは此を宜しくする者なり、信とは此を信にする者なり、強とは此を強くする者なり、楽は此に順ふより生じ、刑は此に反するより作る、

現代語訳

體充が言った。「全孝の心法を、どのように受け用いればよろしいでしょうか」。師は言った。「孝経に言う。『孝は天の常道であり、地の義であり、民の行いである。天地の常道であって、民はこれに則る』。また言う。『天地の生むものの中で人がもっとも貴い。人の行いで孝より大きなものはなく、孝の中では父を尊ぶことより大きなものはなく、父を尊ぶことでは父を天に配して祀ることより大きなものはない』。また言う。『孝悌がきわまれば神明に通じ、四海に光り輝き、通じないところはない。詩経に「西から東から南から北から、心服しない者はない」とある』。曾子は言う。『孝は、これを立てれば天地に満ち、これを広げれば四海に横たわり、後世に施しても朝夕の別がない。推して東海に及ぼしても基準となり、西海・南海・北海に及ぼしても基準となる。詩経に「西から東から南から北から、心服しない者はない」とあるのはこのことである』。また言う。『民衆の教えの根本を孝という。その行いを養という。養うことはできても、敬うことは難しい。敬うことはできても、安んじさせることは難しい。安んじさせることはできても、終わりまで全うすることは難しい。父母が亡くなった後も、身を慎んで行い、父母に悪名を遺さないのが、よく終わりを全うするということである。仁とはこれを仁とするもの、礼とはこれを履み行うもの、義とはこれを宜しくするもの、信とはこれを信とするもの、強とはこれを強くするものである。楽はこれに順うところから生じ、刑はこれに背くところから起こる』」。

解説

全孝の心法の実践を問われ、藤樹はまず経書の言葉を並べて答える。孝経の三才章・聖治章・感応章に続き、礼記祭義に見える曾子の言葉を引く。孝は天地に満ち四海に及ぶ普遍の基準であり、親を養うより敬うこと、敬うより安心させること、さらに一生を通じて全うすることが難しいと段階を示す。仁・礼・義・信もみな孝を根として成り立つとされる。藤樹が孝経を生涯の拠り所としたことはよく知られる。身近な人への誠実さを入口にして、それを一生貫けるかが問われるという考え方は、働き方や人間関係を長い目で見直すきっかけになる。

この章句が説くこと

孝孝経曽子愛敬全孝心法

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