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翁問答 / 下卷之末

體充曰、先生の敎を承候へば佛は聖人より二位ほどしたなる見性成道なり、しかるに佛者曰、釋尊の佛力をもて佛弟子三人を大唐へつかはし老子孔子、顏子三聖人と化身させて、大唐の衆生を化度したまふと云儀なり、此經文にて見れば、孔子、顏子も皆釋尊の御弟子なり、加樣の因緣を辨へずして、孔門の儒者みだりに佛法をしりぞくるは、さたの限りなりと高ぶりあざけり候、何とて加樣なる因緣もあることにて候や。

新字:体充曰、先生の教を承候へば仏は聖人より二位ほどしたなる見性成道なり、しかるに仏者曰、釈尊の仏力をもて仏弟子三人を大唐へつかはし老子孔子、顔子三聖人と化身させて、大唐の衆生を化度したまふと云儀なり、此経文にて見れば、孔子、顔子も皆釈尊の御弟子なり、加様の因縁を弁へずして、孔門の儒者みだりに仏法をしりぞくるは、さたの限りなりと高ぶりあざけり候、何とて加様なる因縁もあることにて候や。

書き下し

体充曰、先生の教を承候へば仏は聖人より二位ほどしたなる見性成道なり、しかるに仏者曰、釈尊の仏力をもて仏弟子三人を大唐へつかはし老子孔子、顔子三聖人と化身させて、大唐の衆生を化度したまふと云儀なり、此経文にて見れば、孔子、顔子も皆釈尊の御弟子なり、加様の因縁を弁へずして、孔門の儒者みだりに仏法をしりぞくるは、さたの限りなりと高ぶりあざけり候、何とて加様なる因縁もあることにて候や。

現代語訳

體充が言った。先生の教えをうかがうと、仏は聖人より二位ほど下の見性成道である。ところが仏者は、釈尊が仏力によって仏弟子三人を中国へ遣わし、老子・孔子・顔子の三聖人に化身させて、中国の衆生を教化なさったのだと言う。この経文によれば、孔子も顔子もみな釈尊の御弟子である。こうした因縁もわきまえずに孔門の儒者がみだりに仏法を退けるのはもってのほかだ、と高ぶって嘲っている。どうしてこのような因縁があるのだろうか。

解説

体充が持ち出すのは、釈尊が弟子を中国に遣わして老子・孔子・顔回に化身させたという仏教側の説である。儒学の聖人を仏の弟子に位置づけ、儒者の排仏を封じようとする論法といえる。藤樹は前の段までで、釈迦を見性成道は得たが聖人には及ばない「狂者」の位に置いてきた。体充はそれと正面からぶつかる主張を示し、師の判断を求めている。相手の権威を自分の体系の下に組み込む議論は今も珍しくない。出どころと筋道を確かめずに序列の主張を受け入れないことが、判断の第一歩である。

この章句が説くこと

仏教儒教狂者見性成道権威学問

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