翁問答 / 下卷之本
太公望、張良、項羽、諸葛孔明、義經などの如く學問を極め軍法の妙理をよく得心して、百戰百勝の功をたつるは、醫學よく極め四診の妙術を鍛鍊して百病を療治し、起死囘生の功をたてたる扁鵲、倉公、東垣、丹溪などの名醫のごとし、軍法を學びても變通の機轉なく武用にぶき大將は、醫書を廣く學びても變通の醫按にぶく療治はたらかざる醫者の如し、むかしより今に至るまで、扁鵲ほど醫學して療治はたらかざるはあるべし、やぶぐすしの療治の扁鵲の如く起死回生のはたらきあるは一人もあるまじ、太公望の書をまなびて武功にぶきはありなん、軍法學びざる大將のいくさをして太公望の如く百戰百勝の功をたつるは、一人もあるべからず、よくよく觀察あるべし。
新字:太公望、張良、項羽、諸葛孔明、義経などの如く学問を極め軍法の妙理をよく得心して、百戦百勝の功をたつるは、医学よく極め四診の妙術を鍛錬して百病を療治し、起死囘生の功をたてたる扁鵲、倉公、東垣、丹渓などの名医のごとし、軍法を学びても変通の機転なく武用にぶき大将は、医書を広く学びても変通の医按にぶく療治はたらかざる医者の如し、むかしより今に至るまで、扁鵲ほど医学して療治はたらかざるはあるべし、やぶぐすしの療治の扁鵲の如く起死回生のはたらきあるは一人もあるまじ、太公望の書をまなびて武功にぶきはありなん、軍法学びざる大将のいくさをして太公望の如く百戦百勝の功をたつるは、一人もあるべからず、よくよく観察あるべし。
書き下し
太公望、張良、項羽、諸葛孔明、義経などの如く学問を極め軍法の妙理をよく得心して、百戦百勝の功をたつるは、医学よく極め四診の妙術を鍛錬して百病を療治し、起死囘生の功をたてたる扁鵲、倉公、東垣、丹渓などの名医のごとし、軍法を学びても変通の機転なく武用にぶき大将は、医書を広く学びても変通の医按にぶく療治はたらかざる医者の如し、むかしより今に至るまで、扁鵲ほど医学して療治はたらかざるはあるべし、やぶぐすしの療治の扁鵲の如く起死回生のはたらきあるは一人もあるまじ、太公望の書をまなびて武功にぶきはありなん、軍法学びざる大将のいくさをして太公望の如く百戦百勝の功をたつるは、一人もあるべからず、よくよく観察あるべし。
現代語訳
太公望・張良・項羽・諸葛孔明・義経などのように、学問を極め、軍法の妙理をよく納得して百戦百勝の功を立てるのは、医学をよく極め、四診の妙術を鍛錬して百病を療治し、起死回生の功を立てた扁鵲・倉公・東垣・丹溪などの名医のようなものである。軍法を学んでも変通の機転がなく武の用に鈍い大将は、医書を広く学んでも変通の医案が鈍く療治の働かない医者のようなものである。昔から今に至るまで、扁鵲ほど医学をしても療治の働かない者はいるであろう。しかし藪医者の療治で扁鵲のように起死回生の働きがある者は一人もいないであろう。太公望の書を学んでも武功に鈍い者はいるであろう。しかし軍法を学ばない大将がいくさをして、太公望のように百戦百勝の功を立てる者は一人もいないはずである。よくよく観察するがよい」。
解説
この章句が説くこと
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