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翁問答 / 下卷之本

運命の力つよければ、わけもなき暗將にても威勢をふるふは、たとへば矢はかれたる竹にて飛ぶものにてはなけれども、射手の力にて三町も四町もとび、玉は鉛にて人を殺すものにてはなけれども、火と藥との力にて楯をも介をもうちぬきて人を殺すが如し、また敵のさせる高名は、碁象棋の勝負にて考へ知るべし、下手にあひてはかちぎは一段見事なれども、上手にあひては見苦しくまくるがごとし、大かた合戰の勝負かくの如し、

新字:運命の力つよければ、わけもなき暗将にても威勢をふるふは、たとへば矢はかれたる竹にて飛ぶものにてはなけれども、射手の力にて三町も四町もとび、玉は鉛にて人を殺すものにてはなけれども、火と薬との力にて楯をも介をもうちぬきて人を殺すが如し、また敵のさせる高名は、碁象棋の勝負にて考へ知るべし、下手にあひてはかちぎは一段見事なれども、上手にあひては見苦しくまくるがごとし、大かた合戦の勝負かくの如し、

書き下し

運命の力つよければ、わけもなき暗将にても威勢をふるふは、たとへば矢はかれたる竹にて飛ぶものにてはなけれども、射手の力にて三町も四町もとび、玉は鉛にて人を殺すものにてはなけれども、火と薬との力にて楯をも介をもうちぬきて人を殺すが如し、また敵のさせる高名は、碁象棋の勝負にて考へ知るべし、下手にあひてはかちぎは一段見事なれども、上手にあひては見苦しくまくるがごとし、大かた合戦の勝負かくの如し、

現代語訳

運命の力が強ければ、わけもない暗将でも威勢をふるうのは、たとえば矢は枯れた竹であって自ら飛ぶものではないが、射手の力で三町も四町も飛び、弾は鉛であって自ら人を殺すものではないが、火と薬の力で楯も鎧も打ち抜いて人を殺すようなものである。また敵がさせる高名は、碁や将棋の勝負で考え知るがよい。下手と当たっては勝ちぶりがひときわ見事だが、上手と当たっては見苦しく負けるようなものである。おおかた合戦の勝負はこのとおりである。

解説

学ばない大将が威勢をふるうことがあるのはなぜか。藤樹は二つのたとえで説明する。一つは運命の力で、枯れ竹の矢が射手の力で遠くへ飛び、鉛の弾が火薬の力で鎧を貫くように、暗愚な将も運に押されて勝つことがある。もう一つは敵の弱さで、碁や将棋が下手な相手には見事に勝てても、上手には無様に負けるのと同じだという。自分の力と、外から加わった勢いや相手の弱さとを区別できなければ、追い風がやんだときに崩れる。好調なときほど、その成果のうち自分の実力はどれだけかを見極めたい。

この章句が説くこと

運命軍法実力勝負自省たとえ

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