翁問答 / 下卷之本
唐土にても日本にても、名將とひゞく程の人に、軍法學びざるはなし、陣かずの功者ばかりにては、大軍を自由自在にとりまはし武略をめぐらし、大敵强敵にあひて百戰百勝の功をたつる事、中々及ばぬ事なり、大將の軍法を知らざるは闇の夜に灯なくてふみなれぬ道をゆくが如し、軍法をしらずしても、仕合よくて敵に勝、國をとり威をふるふ人あいだにあり、これは運命の力と敵のさせる功名なり、此の如くなる人を見て何の吟味もなく、軍法は知らでも苦しからずなど思へるは株を守るなる可し、
新字:唐土にても日本にても、名将とひゞく程の人に、軍法学びざるはなし、陣かずの功者ばかりにては、大軍を自由自在にとりまはし武略をめぐらし、大敵強敵にあひて百戦百勝の功をたつる事、中々及ばぬ事なり、大将の軍法を知らざるは闇の夜に灯なくてふみなれぬ道をゆくが如し、軍法をしらずしても、仕合よくて敵に勝、国をとり威をふるふ人あいだにあり、これは運命の力と敵のさせる功名なり、此の如くなる人を見て何の吟味もなく、軍法は知らでも苦しからずなど思へるは株を守るなる可し、
書き下し
唐土にても日本にても、名将とひゞく程の人に、軍法学びざるはなし、陣かずの功者ばかりにては、大軍を自由自在にとりまはし武略をめぐらし、大敵強敵にあひて百戦百勝の功をたつる事、中々及ばぬ事なり、大将の軍法を知らざるは闇の夜に灯なくてふみなれぬ道をゆくが如し、軍法をしらずしても、仕合よくて敵に勝、国をとり威をふるふ人あいだにあり、これは運命の力と敵のさせる功名なり、此の如くなる人を見て何の吟味もなく、軍法は知らでも苦しからずなど思へるは株を守るなる可し、
現代語訳
唐土でも日本でも、名将と響くほどの人で軍法を学ばなかった者はいない。陣数の功者であるというだけでは、大軍を自由自在に動かし武略をめぐらし、大敵・強敵に当たって百戦百勝の功を立てることは、なかなか及ばないことである。大将が軍法を知らないのは、闇夜に灯火もなく、踏みなれない道を行くようなものである。軍法を知らなくても、仕合わせよく敵に勝ち、国を取り威をふるう人も時にはいる。これは運命の力と、敵がさせた功名である。このような人を見て何の吟味もなく、軍法は知らなくても差し支えないなどと思うのは、株を守るたぐいであろう。
解説
この章句が説くこと
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