翁問答 / 下卷之本
體充問曰、衞靈公問陣於孔子、孔子對曰、爼豆之事甞聞之矣軍旅之事未之學也、明日遂行と論語におはしまし候へば、孔子は軍法をばしろしめさずと存候はいかゞ。師の曰、それは以ての外の大なる心得そこない也、何もといひながら、就中軍をおこし武をもちふるには、心根と時が大事にて候、仁義の心を根として順應の時にかなひて用ゆるを仁義の師と云て、正眞の軍法武篇なり、邪心欲心を本として順應の時にそむきてもちふる武篇は、强剛暴逆の師といひて盜賊おひはぎの類なり、
新字:体充問曰、衛霊公問陣於孔子、孔子対曰、爼豆之事甞聞之矣軍旅之事未之学也、明日遂行と論語におはしまし候へば、孔子は軍法をばしろしめさずと存候はいかゞ。師の曰、それは以ての外の大なる心得そこない也、何もといひながら、就中軍をおこし武をもちふるには、心根と時が大事にて候、仁義の心を根として順応の時にかなひて用ゆるを仁義の師と云て、正真の軍法武篇なり、邪心欲心を本として順応の時にそむきてもちふる武篇は、強剛暴逆の師といひて盗賊おひはぎの類なり、
書き下し
体充問曰、衛の霊公、陣を孔子に問ふ、孔子対へて曰く、爼豆の事は嘗て之を聞けり、軍旅の事は未だ之を学ばざるなり、明日遂に行くと論語におはしまし候へば、孔子は軍法をばしろしめさずと存候はいかゞ。師の曰、それは以ての外の大なる心得そこない也、何もといひながら、就中軍をおこし武をもちふるには、心根と時が大事にて候、仁義の心を根として順応の時にかなひて用ゆるを仁義の師と云て、正真の軍法武篇なり、邪心欲心を本として順応の時にそむきてもちふる武篇は、強剛暴逆の師といひて盗賊おひはぎの類なり、
現代語訳
體充が問う。「衛の霊公が陣立てを孔子に問うと、孔子は『爼豆(祭礼)のことは以前に聞いたことがあるが、軍旅のことはまだ学んでいない』と答え、翌日ついに去った、と論語にあるので、孔子は軍法をご存じなかったのだと思うが、どうか」。師が答える。「それはもってのほかの大きな心得違いである。何事もそうではあるが、とりわけ軍を起こし武を用いるには、心根と時とが大事である。仁義の心を根として、時勢に順い応じて用いるのを仁義の師といい、本当の軍法・武篇である。邪心や欲心を本として、時勢に背いて用いる武篇は、強剛暴逆の師といって、盗賊や追いはぎの類である」。
解説
この章句が説くこと
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