呂氏春秋 / 首時①
聖人之於事,似緩而急、似遲而速以待時。王季歷困而死,文王苦之,有不忘羑里之醜,時未可也。武王事之,夙夜不懈,亦不忘王門之辱,立十二年,而成甲子之事。時固不易得。太公望,東夷之士也,欲定一世而無其主,聞文王賢,故釣於渭以觀之。
新字:聖人之於事,似緩而急、似遅而速以待時。王季歴困而死,文王苦之,有不忘羑里之醜,時未可也。武王事之,夙夜不懈,亦不忘王門之辱,立十二年,而成甲子之事。時固不易得。太公望,東夷之士也,欲定一世而無其主,聞文王賢,故釣於渭以観之。
書き下し
聖人の事に於ける、緩なるに似て急に、遲きに似て速かに、以て時を待つ。王季歷困しみて死す。文王之を苦しみ、有た羑里の醜を忘れざれども、時未だ可ならざるなり。武王之に事え、夙夜懈らざりしも、亦た玉門の辱を忘れず。立ちて十二年にして、甲子の事を成せり。時は固に得易からざるなり。太公望は東夷の士なり。一世を定めんと欲すれども其の主無し。文王の賢なるを聞き、故らに渭に釣りして以て之を觀る。
現代語訳
聖人が事に臨むさまは、緩やかなようで急ぎ、遅いようで速く、そうして時機を待つ。王季歴は苦しんで死んだ。文王はこれを痛み、また羑里に幽閉された恥辱を忘れなかったが、まだ時機が来ていなかった。武王は紂に仕えて朝から晩まで怠らなかったが、玉門の辱めを忘れなかった。即位して十二年で甲子の日に紂を討つ大事を成し遂げた。時機はまことに得がたいものだ。太公望は東夷の士であった。世を安定させたいと願ったが仕えるべき主君がいない。文王が賢いと聞き、わざと渭水で釣りをして文王を観察した。
解説
本篇の主題である時を待つを、周の文王・武王が屈辱に耐えて好機を待ち、ついに殷を討った経緯と、太公望が釣りをしながら明君を見定めた話で示します。背景には、どれほど賢く志があっても時機が熟さねば事は成らないという歴史観があります。緩やかに見えて急ぎ、遅く見えて速いという聖人の身の処し方が印象的です。現代でも、機が熟すまで力を蓄えて待ち、来た好機を逃さない姿勢は、事業や人生の岐路における判断の要諦として通じます。
この章句が説くこと
時文王武王太公望羑里時機
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