導師導古典を学びたいすべての人に

翁問答 / 上卷之末

六極のうちにて惡弱の凶德をうけぬれば、のこり四つは皆其中に備はれり、至誠無息の神理をうしなひぬれば、たとひ幸にして免れながいきしても凶短折に異ならず、欲にいたゞきなく、たゞむさぶりおしむばかりなれば、財寳ありても心は貧者なり、心くらく迷ひぬれば、目にふれ耳にきくことみなくるしびとなれば、無病にてもかたちやすからず、欲心のくるしみ常にたらざれば、憂なくても心やすからず、是にて禍淫の極意を得心すべし、五福の第四に攸好德をとき、六極の終に惡弱をときたまふ、極意よくよく體察すべし。

新字:六極のうちにて悪弱の凶徳をうけぬれば、のこり四つは皆其中に備はれり、至誠無息の神理をうしなひぬれば、たとひ幸にして免れながいきしても凶短折に異ならず、欲にいたゞきなく、たゞむさぶりおしむばかりなれば、財宝ありても心は貧者なり、心くらく迷ひぬれば、目にふれ耳にきくことみなくるしびとなれば、無病にてもかたちやすからず、欲心のくるしみ常にたらざれば、憂なくても心やすからず、是にて禍淫の極意を得心すべし、五福の第四に攸好徳をとき、六極の終に悪弱をときたまふ、極意よくよく体察すべし。

書き下し

六極のうちにて悪弱の凶徳をうけぬれば、のこり四つは皆其中に備はれり、至誠無息の神理をうしなひぬれば、たとひ幸にして免れながいきしても凶短折に異ならず、欲にいたゞきなく、たゞむさぶりおしむばかりなれば、財宝ありても心は貧者なり、心くらく迷ひぬれば、目にふれ耳にきくことみなくるしびとなれば、無病にてもかたちやすからず、欲心のくるしみ常にたらざれば、憂なくても心やすからず、是にて禍淫の極意を得心すべし、五福の第四に攸好徳をとき、六極の終に悪弱をときたまふ、極意よくよく体察すべし。

現代語訳

六極のうちで悪・弱の凶徳を受ければ、残りの四つはみなその中に備わる。至誠無息の神理を失えば、たとえ幸いに免れて長生きしても凶短折と異ならない。欲に際限がなく、ただ貪り惜しむばかりであれば、財宝があっても心は貧者である。心が暗く迷えば、目に触れ耳に聞くことがみな苦しみとなるので、無病であっても身は安らかでない。欲心の苦しみが常に満たされないので、憂いがなくても心は安らかでない。これで禍淫の極意を得心するがよい。五福の第四に攸好徳を説き、六極の終わりに悪・弱を説きなさった極意を、よくよく体察するがよい。

解説

前段の五福と対になる結論で、六極のうち悪と弱という心の凶徳を受ければ、凶短折・疾・憂・貧の四つも実質的に備わると藤樹は言う。長生きしても徳を失えば若死にと同じ、財があっても貪る心は貧者、病がなくても迷いは身を苦しめるという論法である。書経洪範が五福の四番目に攸好徳を、六極の最後に悪と弱を置いた意図を、藤樹は心こそが禍福の根本だという点に読み取る。外的な損得よりも自分の心の状態が人生の質を決めるという指摘は、重圧の多い職場でこそ噛みしめたい。

この章句が説くこと

六極禍淫心欲明徳洪範

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る