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翁問答 / 上卷之末

是を人衆則勝天天定亦勝人といふなり、そのうへ五福のうちの攸好德だにうけぬればのこりの四つは其うちにそなはれり、明德すでにあきらかなれば、至誠無息長在不滅なり、これ無上のながいきなり、大富貴を得て小富貴をわすれぬれば、これまた無上の富貴なり、一朝のうれひ心のくるしびとならざれば、心上の康寧は事上の康寧にまさりたり、考終命の事は德あるうへは云にをよばず、是にて福善の極意を得心すべし、

新字:是を人衆則勝天天定亦勝人といふなり、そのうへ五福のうちの攸好徳だにうけぬればのこりの四つは其うちにそなはれり、明徳すでにあきらかなれば、至誠無息長在不滅なり、これ無上のながいきなり、大富貴を得て小富貴をわすれぬれば、これまた無上の富貴なり、一朝のうれひ心のくるしびとならざれば、心上の康寧は事上の康寧にまさりたり、考終命の事は徳あるうへは云にをよばず、是にて福善の極意を得心すべし、

書き下し

是を人衆ければ則ち天に勝ち、天定まれば亦た人に勝つといふなり、そのうへ五福のうちの攸好徳だにうけぬればのこりの四つは其うちにそなはれり、明徳すでにあきらかなれば、至誠無息長在不滅なり、これ無上のながいきなり、大富貴を得て小富貴をわすれぬれば、これまた無上の富貴なり、一朝のうれひ心のくるしびとならざれば、心上の康寧は事上の康寧にまさりたり、考終命の事は徳あるうへは云にをよばず、是にて福善の極意を得心すべし、

現代語訳

これを「人衆ければ則ち天に勝ち、天定まれば亦人に勝つ」というのである。そのうえ、五福のうちの攸好徳さえ受ければ、残りの四つはそのうちに備わる。明徳がすでに明らかであれば至誠無息、長く在って滅びない。これこそ無上の長生きである。大富貴を得て小富貴を忘れれば、これもまた無上の富貴である。一時の憂いが心の苦しみとならなければ、心の上の康寧は事の上の康寧にまさる。考終命のことは、徳がある以上は言うまでもない。これで福善の極意を得心するがよい。

解説

人衆ければ天に勝ち、天定まれば亦人に勝つとは、史記伍子胥列伝に見える申包胥の言葉にもとづく句で、一時は人の勢いが天に勝っても、天の定めが整えば最後は天が勝つという意味である。藤樹はさらに、五福の要は攸好徳、つまり徳を好む心にあり、それを得れば他の四福は自ずと備わると説く。明徳が明らかなことが無上の長生きであり、心の富こそ大富貴であり、憂いに乱されない心が真の康寧である。待遇や環境に振り回されず、仕事の中で自分の心を磨くことに幸福の軸を置く考え方として読める。

この章句が説くこと

攸好徳明徳五福康寧心天命

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