和俗童子訓 / 巻之五・教女子法
一婦人に七去とて、惡しき事七あり。一にても有れば、夫より逐ひ去らるゝ理なり。故に是を七去と云ふ。これ古の法なり。女子に敎へきかすべし。一には父母に隨はざるを去る。二に子なければ去る。三に淫なれば去る。四に嫉めば去る。五に惡疾あれば去る。六に多言なれば去る。七に竊盜すれば去る。此七の内、子なきは生れつきなり、惡疾はやまひなり。此二は、天命にて力に及ばざる事なれば、婦のとがにあらず。其餘の五は、皆我が心より出づるとがなれば、愼みて其惡を止め、善に移りて、夫に去られざるやうに用心すべし。凡人の容こそ生れつきたれば改め難かるべけれ、心は變ずる理あれば、我が心だに用ひなば、などか愚なるより賢きにも遷さばうつらざらん。
新字:一婦人に七去とて、悪しき事七あり。一にても有れば、夫より逐ひ去らるゝ理なり。故に是を七去と云ふ。これ古の法なり。女子に教へきかすべし。一には父母に随はざるを去る。二に子なければ去る。三に淫なれば去る。四に嫉めば去る。五に悪疾あれば去る。六に多言なれば去る。七に窃盗すれば去る。此七の内、子なきは生れつきなり、悪疾はやまひなり。此二は、天命にて力に及ばざる事なれば、婦のとがにあらず。其余の五は、皆我が心より出づるとがなれば、慎みて其悪を止め、善に移りて、夫に去られざるやうに用心すべし。凡人の容こそ生れつきたれば改め難かるべけれ、心は変ずる理あれば、我が心だに用ひなば、などか愚なるより賢きにも遷さばうつらざらん。
書き下し
一婦人に七去とて、悪しき事七あり。一にても有れば、夫より逐ひ去らるる理なり。故に是を七去と云ふ。これ古の法なり。女子に教へきかすべし。一には父母に随はざるを去る。二に子なければ去る。三に淫なれば去る。四に嫉めば去る。五に悪疾あれば去る。六に多言なれば去る。七に窃盗すれば去る。此七の内、子なきは生れつきなり、悪疾はやまひなり。此二は、天命にて力に及ばざる事なれば、婦のとがにあらず。其余の五は、皆我が心より出づるとがなれば、慎みて其悪を止め、善に移りて、夫に去られざるやうに用心すべし。凡人の容こそ生れつきたれば改め難かるべけれ、心は変ずる理あれば、我が心だに用ひなば、などか愚なるより賢きにも遷さばうつらざらん。
現代語訳
婦人には七去といって、悪いことが七つあります。一つでもあれば、夫から離縁される道理です。それでこれを七去と言います。これは昔の法です。女子に教え聞かせなさい。一には父母(舅姑)に従わなければ去る。二に子がなければ去る。三に淫らであれば去る。四に嫉妬すれば去る。五に悪い病があれば去る。六に口数が多ければ去る。七に盗みをすれば去る。この七つのうち、子がないのは生まれつきであり、悪い病は病気です。この二つは天命であって力の及ばないことですから、妻のとがではありません。その残りの五つは、皆自分の心から出るとがですから、慎んでその悪をやめ、善に移って、夫に離縁されないように用心しなさい。およそ人の容姿こそ生まれつきなので改めがたいでしょうが、心は変わる道理がありますから、自分の心さえ用いれば、どうして愚かさから賢さへ移そうとして移らないことがあるでしょうか。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『都鄙問答』卷之一・都鄙問答ノ段聖人は人倫の至りなり。是の如く君子大徳の行跡を見、此を法として、五倫の道を教へ、天の命ぜる職分を知らせ、力め行ふときは、身脩まりて家斉ひ、国治まりて天下平らかなり。孟子曰く、先王の法に遵ひて過つ者は未だ之有らず、と。又曰く、天下の性を言ふや、故のみ、故は利を以て本と為す、と。其の性と云ふは、人より禽獣草木まで、天に受け得て以て生ずる理なり。松は緑に、桜は花、羽ある物は空を飛び、鱗ある物は水を泳ぎ、日月の天に懸かるも皆一理なり。去年の四季の行はるるを見て、今年を知り、昨日の事を見て、今日を知る。これ即ち所謂故を見て、天下の性を知ると云ふ所なり。性を知る時は、五常五倫の道は、其の中に備はれり。中庸に、所謂天の命ずる之を性と謂ひ、性に率ふ之を道と謂ふ。性を知らずして、性に率ふことは得らるべきにあらず。性を知るは、学問の綱領なり。我怪しきことを語るにあらず。堯舜万世の法となり玉ふも、是れ性に率ふのみ。故に心を知るを学問の初めと云ふ。然るを心性の沙汰を除き、外に至極の学問有ることを知らず。万事は皆心よりなす。心は身の主なり。主なき身とならば、山野に捨つる死人に同じ。其の主を知らする教へなるを、異端と云ふは如何なることぞや。
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『養生訓』巻第二・総論下一人に対して、喜び楽み甚しければ、気ひらけ過ぎてへる。我ひとり居て、憂ひ悲み多ければ、気むすぼれてふさがる。へるとふさがるとは元気の害なり。一心を静にしてさわがしくせず、ゆるやかにして迫らず、気を和かにしてあらくせず、言をすくなくして声を高くせず、高くわらはず、つねに心をよろこばしめて、みだりにいからず、悲をすくなくし、かへらざる事を悔まず、過あらば一たびは我身をせめて、二度悔まず、只天命をやすんじてうれへず、是心気をやしなふ道なり。士、かくの如くなるべし。
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『養生訓』巻第八・養老一老いての後は、一日を以て十日として、日々に楽むべし。つねに日ををしみて、一日もあだにくらすべからず。世のなかの人のありさま、我が心にかなはずとも、凡人なればさこそあらめと思ひて、我が子弟をはじめ、人の過悪をなだめゆるして、とがむべからず、いかりうらむべからず。又わが身不幸にして福うすく、人われに対して横逆なるも、うき世のならひ斯くこそあらめと思ひ、天命を安じてうれふべからず。つねに楽しみて日を送るべし。人をうらみいかり、身をうれひなげきて、心をくるしめ楽まずして、はかなく年月を過ぎなん事をしむべし。かくをしむべき月日なるを、一日もたのしまずして、むなしく過ぎぬるは愚なりと云ふべし。たとひ家貧しく幸なくして、うゑて死ぬとも、死ぬる時までは楽みて過すべし。貧しきとて、人にむさぼり求め、不義にして命を惜むべからず。
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『大和俗訓』巻之四・心術下一心は天君にて、身の主なり。つねに楽ましむべし、くるしむべからず。わが身貧賤にして、或は不意の禍ありとも、これ天命なれば、うれふべからず。楽を失ふべからず。又人の我に悪しきをば、忍びてゆるすべし。うれふべからず。かくの如くすれば、心のくるしみなく、楽多し。身のまどしきをうれひ、又みだりに人をいかり悪みて、わが心を苦めそこなふべからず。人の無礼にして、我ををかしあなどるとも、おろかなる故と思ひ、いかり悪むべからず。子弟のともがら、我におろそかなりとも道を知らざる故と思ひ、いかるべからず。心をくるしめて益なし。下部などは、に習はし悪しければ、おろかにしてさとしがたし。その悪しきを、いましめ教ふるはよし、怒りせめて、言と色とをはげしくすべからず。我が心の和楽をやぶり、人のうらみをとる。言と顔色とはげしからざれども、わが行正しく、言にたはぶれなければ人自らおそれて侮らず。
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