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大和俗訓 / 巻之四・心術下

一我が身不幸にて、災にあひ、讒言にあひ、或は主君父母兄弟朋友の不仁無禮にあふとも、古來和漢の內、なほそれよりも甚しき災にあへる人を思ひくらべて、みづから心をなぐさめ安んじて、うれふべからず。是古人の說なり。君子の天命をやすんずる工夫は、別に有るべし。されど是は一のやすき手だてなり。知るべし。

新字:一我が身不幸にて、災にあひ、讒言にあひ、或は主君父母兄弟朋友の不仁無礼にあふとも、古来和漢の内、なほそれよりも甚しき災にあへる人を思ひくらべて、みづから心をなぐさめ安んじて、うれふべからず。是古人の説なり。君子の天命をやすんずる工夫は、別に有るべし。されど是は一のやすき手だてなり。知るべし。

書き下し

一我が身不幸にて、災にあひ、讒言にあひ、或は主君父母兄弟朋友の不仁無礼にあふとも、古来和漢の内、なほそれよりも甚しき災にあへる人を思ひくらべて、みづから心をなぐさめ安んじて、うれふべからず。是古人の説なり。君子の天命をやすんずる工夫は、別に有るべし。されど是は一のやすき手だてなり。知るべし。

現代語訳

わが身が不幸で、災難にあい、讒言にあい、あるいは主君・父母・兄弟・友人の不仁や無礼にあったとしても、昔から日本や中国のなかで、それよりもさらにひどい災いにあった人を思いくらべて、自分で心をなぐさめ落ち着かせて、憂えてはいけません。これは古人の説です。君子が天命に安んじる工夫は、別にあるはずです。しかしこれは一つのたやすい手立てです。知っておきなさい。

解説

つらい目にあったとき、歴史上もっと過酷な境遇にあった人と比べて心を落ち着けるという、実用的な気持ちの整え方です。益軒自身、これは君子が天命に安んじる本格的な工夫ではなく「やすき手だて」だと断っていて、その正直さに好感が持てます。現代の心理学でも、視野を広げて自分の状況を相対化することは、落ち込みから立ち直る助けになるとされます。理想論だけでなく、凡人にもできる手近な方法を示すところに、益軒の教えの温かさがあります。

この章句が説くこと

不幸天命心慰め忍耐

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