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翁問答 / 上卷之末

陰は陽の根となり陽は陰の根となる如く、文は武の根となり武は文の根となるなり、天を經とし地を緯として天下國家をよく治めて五倫の道を正しくするを文と云、天命を畏れざる惡逆無道のものありて文道をさまたぐる時は、或は刑罰にて懲し或は軍をおこし征伐して、天下一統の治をなすを武と云、しかる故に戈を止といふ二字を合せて武の字を作りたり、文道を行はん爲めの武道なれば、武道の根は文なり、武道の威を用ひて治むる文道なれば、文道の根は武なり、その外萬事に文武の二は離れざるなり、孝悌忠信の障りとなるものを退治して、つとめ行ふは武なり、

新字:陰は陽の根となり陽は陰の根となる如く、文は武の根となり武は文の根となるなり、天を経とし地を緯として天下国家をよく治めて五倫の道を正しくするを文と云、天命を畏れざる悪逆無道のものありて文道をさまたぐる時は、或は刑罰にて懲し或は軍をおこし征伐して、天下一統の治をなすを武と云、しかる故に戈を止といふ二字を合せて武の字を作りたり、文道を行はん為めの武道なれば、武道の根は文なり、武道の威を用ひて治むる文道なれば、文道の根は武なり、その外万事に文武の二は離れざるなり、孝悌忠信の障りとなるものを退治して、つとめ行ふは武なり、

書き下し

陰は陽の根となり陽は陰の根となる如く、文は武の根となり武は文の根となるなり、天を経とし地を緯として天下国家をよく治めて五倫の道を正しくするを文と云、天命を畏れざる悪逆無道のものありて文道をさまたぐる時は、或は刑罰にて懲し或は軍をおこし征伐して、天下一統の治をなすを武と云、しかる故に戈を止といふ二字を合せて武の字を作りたり、文道を行はん為めの武道なれば、武道の根は文なり、武道の威を用ひて治むる文道なれば、文道の根は武なり、その外万事に文武の二は離れざるなり、孝悌忠信の障りとなるものを退治して、つとめ行ふは武なり、

現代語訳

「陰は陽の根となり陽は陰の根となるように、文は武の根となり武は文の根となるのである。天を経とし地を緯として天下国家をよく治め、五倫の道を正しくするのを文という。天命を畏れない悪逆無道の者がいて文道を妨げるときは、あるいは刑罰で懲らし、あるいは軍を起こして征伐し、天下一統の治めをなすのを武という。だから『戈を止む』という二字を合わせて武の字を作ったのである。文道を行うための武道であるから、武道の根は文である。武道の威を用いて治める文道であるから、文道の根は武である。そのほか万事において、文武の二つは離れないのである。孝悌忠信の妨げとなるものを退治して、努め行うのは武である。」

解説

文と武が互いに根となる関係を、陰陽の比喩で説く段である。天下を治め人倫を正すのが文、それを乱す者を刑罰や征伐で除くのが武とされ、武の字は「戈を止む」の意であるという『春秋左氏伝』由来の解釈が引かれる。武は文を行うためにあり、文は武の威によって支えられる。さらに日常でも、孝悌忠信の妨げを退ける働きは武だとされ、武を戦場に限らない内面の力として捉え直している。仕事でも、良い仕組みを築く力と、それを損なうものに毅然と対処する力は対になっている。どちらか一方では組織は守れないのである。

この章句が説くこと

文武陰陽止戈為武孝悌五倫治国

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