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十善法語 / 巻第一・不殺生戒

諸ノ國土ニ父母ナキ子ナク。親族ノ撫育ニ由スシテ長セル人ナケレハ。自暴自棄セ子ハ。自ラ父母親族ニ尊重ノ心カ生スル。親族ノ中ニ尊重ノ心アレハ孝悌ノ道カ立ス。孝悌ノ道立スレハ。忠義モ仁慈モ立スルシヤ。此仁慈ノ心ヲ擴メ充テ。禽獸諸蟲ニ至マテ。母子ノ愛アルヲ見ル。雌雄ノ親アルヲ見ル。生ヲ樂ミ死ヲ怖ルルヲ見ル。此人情ヲ以テ彼カ情欲ヲ察スル。此中不殺生戒カ自ラ顯ルルシヤ。宿福深厚ノ者ハ此中ニ因果ヲ信シ。緣起ノ趣ニ達スル。流轉生死ノ中。昇沈ノ窮リナキコトヲ知ル。此微細ノ蟲蟻ニ至マテ。本性ノ平等ナルニ達ス。是ヲ不殺生戒全キト名ツクルシヤ。

新字:諸ノ国土ニ父母ナキ子ナク。親族ノ撫育ニ由スシテ長セル人ナケレハ。自暴自棄セ子ハ。自ラ父母親族ニ尊重ノ心カ生スル。親族ノ中ニ尊重ノ心アレハ孝悌ノ道カ立ス。孝悌ノ道立スレハ。忠義モ仁慈モ立スルシヤ。此仁慈ノ心ヲ擴メ充テ。禽獣諸虫ニ至マテ。母子ノ愛アルヲ見ル。雌雄ノ親アルヲ見ル。生ヲ楽ミ死ヲ怖ルルヲ見ル。此人情ヲ以テ彼カ情欲ヲ察スル。此中不殺生戒カ自ラ顕ルルシヤ。宿福深厚ノ者ハ此中ニ因果ヲ信シ。縁起ノ趣ニ達スル。流転生死ノ中。昇沈ノ窮リナキコトヲ知ル。此微細ノ虫蟻ニ至マテ。本性ノ平等ナルニ達ス。是ヲ不殺生戒全キト名ツクルシヤ。

書き下し

諸ノ国土ニ父母ナキ子ナク。親族ノ撫育ニ由スシテ長セル人ナケレハ。自暴自棄セ子ハ。自ラ父母親族ニ尊重ノ心カ生スル。親族ノ中ニ尊重ノ心アレハ孝悌ノ道カ立ス。孝悌ノ道立スレハ。忠義モ仁慈モ立スルシヤ。此仁慈ノ心ヲ擴メ充テ。禽獣諸虫ニ至マテ。母子ノ愛アルヲ見ル。雌雄ノ親アルヲ見ル。生ヲ楽ミ死ヲ怖ルルヲ見ル。此人情ヲ以テ彼カ情欲ヲ察スル。此中不殺生戒カ自ラ顕ルルシヤ。宿福深厚ノ者ハ此中ニ因果ヲ信シ。縁起ノ趣ニ達スル。流転生死ノ中。昇沈ノ窮リナキコトヲ知ル。此微細ノ虫蟻ニ至マテ。本性ノ平等ナルニ達ス。是ヲ不殺生戒全キト名ツクルシヤ。

現代語訳

諸々の国土に父母のない子はなく、親族に育てられずに成長した人はいないから、自暴自棄しなければ、自然に父母や親族に尊重の心が生じる。親族の中に尊重の心があれば、孝悌の道が立つ。孝悌の道が立てば、忠義も仁慈も立つのである。この仁慈の心を押し広げ満たして、鳥獣や虫に至るまで、母子の愛があるのを見る。雌雄の親しみがあるのを見る。生を楽しみ死を恐れるのを見る。この人の情によって、彼らの情と欲を察する。この中に不殺生戒が自然に顕れるのである。前世の福の深く厚い者は、この中で因果を信じ、縁起の趣に達する。生死を流転する中で、浮き沈みに窮まりのないことを知る。この微細な虫や蟻に至るまで、本性が平等であることに達する。これを不殺生戒が全うされたと名づけるのである。

解説

人の尊さを思う心が、どのように広がっていくかを順に示す段である。誰にも父母があり、育ててくれた親族があるので、自分を粗末にしなければ親族を敬う心が生まれる。そこから孝悌が立ち、忠義と仁慈が立つ。その仁慈を広げると、鳥や虫にも親子の愛や生への執着があることが見えてくる。自分の情を物差しに相手の情を察するところに、不殺生戒が自ずと現れるというのである。身近な人を大切にする心を、見知らぬ人や小さな命にまで広げていく道筋である。

この章句が説くこと

孝悌仁慈不殺生平等因果共感

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