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翁問答 / 上卷之本

孝行の條目數多有と雖、擧竟は二箇條につゝまれり、第一には父母の心の安穩なる樣にするなり、第二には父母の身を能敬ひ養ふなり、父母の心の安穩なる樣にするには、先我身を修め心を正して、好き人となり、夫々のすぎわいの所作を能く勤め、財用を節すれば、父母の心に子の禍にあひ、貧窮に及可き恐なし、さて妻子臣妾を能く敎化して家內の人皆聲を和らき氣をくだして、父母を愛敬し、かりそめの下知も背き怠らず、兄弟一族和睦する樣にすれば、父母の目に觸れ耳に入る事皆父母の心に叶ひ、自から父母安樂になるものなり、

新字:孝行の条目数多有と雖、挙竟は二箇条につゝまれり、第一には父母の心の安穏なる様にするなり、第二には父母の身を能敬ひ養ふなり、父母の心の安穏なる様にするには、先我身を修め心を正して、好き人となり、夫々のすぎわいの所作を能く勤め、財用を節すれば、父母の心に子の禍にあひ、貧窮に及可き恐なし、さて妻子臣妾を能く教化して家内の人皆声を和らき気をくだして、父母を愛敬し、かりそめの下知も背き怠らず、兄弟一族和睦する様にすれば、父母の目に触れ耳に入る事皆父母の心に叶ひ、自から父母安楽になるものなり、

書き下し

孝行の条目数多有と雖、挙竟は二箇条につゝまれり、第一には父母の心の安穏なる様にするなり、第二には父母の身を能敬ひ養ふなり、父母の心の安穏なる様にするには、先我身を修め心を正して、好き人となり、夫々のすぎわいの所作を能く勤め、財用を節すれば、父母の心に子の禍にあひ、貧窮に及可き恐なし、さて妻子臣妾を能く教化して家内の人皆声を和らき気をくだして、父母を愛敬し、かりそめの下知も背き怠らず、兄弟一族和睦する様にすれば、父母の目に触れ耳に入る事皆父母の心に叶ひ、自から父母安楽になるものなり、

現代語訳

孝行の条目は数多くあるけれども、結局は二箇条にまとめられる。第一には父母の心が安らかであるようにすること、第二には父母の身をよく敬い養うことである。父母の心を安らかにするには、まず我が身を修め心を正して、よい人となり、それぞれの生業の仕事をよく勤め、財用を節約すれば、父母の心に、子が災いに遭ったり貧窮に陥ったりする恐れがない。さて妻子や召使いをよく教化して、家の内の人がみな声を和らげ気をへりくだらせて父母を愛敬し、ちょっとした言いつけにも背き怠らず、兄弟一族が和睦するようにすれば、父母の目に触れ耳に入ることがみな父母の心にかない、自然と父母は安楽になるものである。

解説

孝行を二箇条にまとめ、その第一を「父母の心を安らかにすること」とする。物を与えることより先に、子がよい人となり、仕事に励み、倹約し、家族が仲良くすることで、親の心配をなくすのが孝の第一だという。親にとって最大の安心は、子が身を持ち崩さず健やかに暮らしていることだという洞察である。家の内が和やかであることも、親を安心させる大きな要素とされる。自分がきちんと働き、身を正していること自体が、周囲の人の安心につながるという考え方は、職場で信頼される人の条件にもそのまま重なる。

この章句が説くこと

孝父母安心修身家庭勤勉

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