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日本伝守行矩 / 本文・教えは道に登る足場にすぎない

○道を知つて、能く天命にしたがふ人ありといへども、敎なき時は、其道を廣く人に傳ふるとなし、しかれども敎は人の作爲なす所なれば、なんぞ道を盡すに足らん、萬仭の山、左生によつて攀づべし、その嶮をわたる時、身躰これによつて、一心の賴む所なりといへども、頂上に登り至れば、その左生一棄物となり、これを見ると、わらくづの如し、しかれば道を得て立ときは、敎また何の益かあらん、益なきの敎にあらざれば、人々又道を得る事なし、敎また廢すべけんや、才子英物と稱するも、敎に因ざれば、國用をなす事なし、敎に巧拙あり、眞妄あり、知らずんばあるべからず、空理を以て質を失し、文章を以て虛照を尊ぶ、巧みなるとは則巧なり、道を得るに遠し、俗言を以て人を戒しめ、

新字:○道を知つて、能く天命にしたがふ人ありといへども、教なき時は、其道を広く人に伝ふるとなし、しかれども教は人の作為なす所なれば、なんぞ道を尽すに足らん、万仭の山、左生によつて攀づべし、その嶮をわたる時、身体これによつて、一心の頼む所なりといへども、頂上に登り至れば、その左生一棄物となり、これを見ると、わらくづの如し、しかれば道を得て立ときは、教また何の益かあらん、益なきの教にあらざれば、人々又道を得る事なし、教また廃すべけんや、才子英物と称するも、教に因ざれば、国用をなす事なし、教に巧拙あり、真妄あり、知らずんばあるべからず、空理を以て質を失し、文章を以て虚照を尊ぶ、巧みなるとは則巧なり、道を得るに遠し、俗言を以て人を戒しめ、

書き下し

○道を知つて、能く天命にしたがふ人ありといへども、敎なき時は、其道を廣く人に傳ふるとなし、しかれども敎は人の作爲なす所なれば、なんぞ道を盡すに足らん、萬仭の山、左生によつて攀づべし、その嶮をわたる時、身躰これによつて、一心の賴む所なりといへども、頂上に登り至れば、その左生一棄物となり、これを見ると、わらくづの如し、しかれば道を得て立ときは、敎また何の益かあらん、益なきの敎にあらざれば、人々又道を得る事なし、敎また廢すべけんや、才子英物と稱するも、敎に因ざれば、國用をなす事なし、敎に巧拙あり、眞妄あり、知らずんばあるべからず、空理を以て質を失し、文章を以て虛照を尊ぶ、巧みなるとは則巧なり、道を得るに遠し、俗言を以て人を戒しめ、

現代語訳

一つ、道を知って天命によく従う人がいても、教えがなければ、その道を広く人に伝えることはありません。しかし教えは人の作為によるものですから、道を尽くすには足りません。高い山は梯子によって登ることができます。険しい所を渡るときは、身体にとっても心の頼りとしても梯子が欠かせませんが、頂上に登り着けば、その梯子は一つの捨て物となり、見ればわら屑のようです。そうであれば、道を得て立つときには、教えは何の益があるでしょうか。しかし益のない教えでなければ、人々は道を得ることができません。教えをやめてよいはずがありません。才子や英才と呼ばれる者でも、教えによらなければ、国の役に立つことはありません。教えには巧拙があり、真偽があります。知らずにいてはいけません。空理で本質を失い、文章で空しい輝きを尊ぶものは、巧みではあっても、道を得るには遠いのです。俗な言葉で人を戒め、

解説

教えは頂上に登るための梯子であり、登り終えれば不要になる、という比喩が核心です。ただし梯子がなければ誰も登れない、とも述べています。研修やマニュアルも同じです。それ自体が目的になれば形だけが残り、現場の成果につながりません。逆に型がなければ、新人は力を発揮する入口にも立てません。管理職は、教えの役割は人を目的地へ運ぶことだと意識し、目的に照らして内容と手順を見直し続けるのがよいでしょう。巧みな言葉で飾った教えを選んでいないかの点検も欠かせません。
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この章句が説くこと

『日本伝守行矩』高山健貞教え道梯子真妄

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