日本伝治乱要決 / 應亂卷・主客の利害と攻めの権謀
主客第十四勝負に主客あり、利害共に備れり、求めてなさん事を欲することなかれ、時代によつて征することあり、拒むとあり、正を以て逆を制する時は萬里に客となる、正を守て貪戰をなさゞる時は主となつて八方に敵をうくる事あり、おのづからの姿なり、主客の利害に目くるめきて兵を起すの要を失ふ時は其利却て害となる、主は堅固にして勢氣降り、客は危殆にして勢天に冲る、形を以て見る時は、衆兵つねに客たり、寡兵つねに主たり、名將は客戰多く、暗將は主戰多し、攻權第十五征伐の機密なり、見る所あつて嚴しく至る、攻擊の意なり、血氣にあらず、神のとゞく所におゐて鐵壁をも摧破なす、此位をしらざれば征戰益なし、動て其圖に叶ふものこれを權謀といふ、業以て敵勢を奪ふは攻なり、謀を以て敵の心を折くは權なり、始に勢氣を奪ひ、中頃眞鋒を折き、末に全服なさしむ、征伐の機密、攻權の外にある事なし、
新字:主客第十四勝負に主客あり、利害共に備れり、求めてなさん事を欲することなかれ、時代によつて征することあり、拒むとあり、正を以て逆を制する時は万里に客となる、正を守て貪戦をなさゞる時は主となつて八方に敵をうくる事あり、おのづからの姿なり、主客の利害に目くるめきて兵を起すの要を失ふ時は其利却て害となる、主は堅固にして勢気降り、客は危殆にして勢天に沖る、形を以て見る時は、衆兵つねに客たり、寡兵つねに主たり、名将は客戦多く、暗将は主戦多し、攻権第十五征伐の機密なり、見る所あつて厳しく至る、攻撃の意なり、血気にあらず、神のとゞく所におゐて鉄壁をも摧破なす、此位をしらざれば征戦益なし、動て其図に叶ふものこれを権謀といふ、業以て敵勢を奪ふは攻なり、謀を以て敵の心を折くは権なり、始に勢気を奪ひ、中頃真鋒を折き、末に全服なさしむ、征伐の機密、攻権の外にある事なし、
書き下し
主客第十四勝負に主客あり、利害共に備れり、求めてなさん事を欲することなかれ、時代によつて征することあり、拒むとあり、正を以て逆を制する時は萬里に客となる、正を守て貪戰をなさゞる時は主となつて八方に敵をうくる事あり、おのづからの姿なり、主客の利害に目くるめきて兵を起すの要を失ふ時は其利却て害となる、主は堅固にして勢氣降り、客は危殆にして勢天に冲る、形を以て見る時は、衆兵つねに客たり、寡兵つねに主たり、名將は客戰多く、暗將は主戰多し、攻權第十五征伐の機密なり、見る所あつて嚴しく至る、攻擊の意なり、血氣にあらず、神のとゞく所におゐて鐵壁をも摧破なす、此位をしらざれば征戰益なし、動て其圖に叶ふものこれを權謀といふ、業以て敵勢を奪ふは攻なり、謀を以て敵の心を折くは權なり、始に勢氣を奪ひ、中頃眞鋒を折き、末に全服なさしむ、征伐の機密、攻權の外にある事なし、
現代語訳
主客第十四。勝負には主と客があり、利と害がともに備わっています。求めてなそうと望んではなりません。時代によって攻めることもあり、拒むこともあります。正しさをもって逆を制する時は、万里の遠くに客となっても勝ちます。正を守って貪る戦いをしない時は、主となって八方に敵を受けることもあります。おのずからの姿です。主客の利害に目がくらんで兵を起こす要を失えば、その利がかえって害となります。主は堅固でも勢いが下がり、客は危うくても勢いが天を衝きます。形で見れば、大勢の兵はいつも客となり、少数の兵はいつも主となります。名将は客の戦が多く、暗い将は主の戦が多いのです。攻権第十五。征伐の機密です。見るところがあって厳しく至る、それが攻撃の意です。血気ではありません。心(神)の届くところでは鉄壁をも打ち砕きます。この位を知らなければ征戦に益はありません。動いてその図に叶うものを権謀といいます。業をもって敵の勢いを奪うのが攻であり、謀をもって敵の心を折くのが権です。初めに勢気を奪い、中ごろに真の鋒を折り、終わりに完全に服させます。征伐の機密は、攻権の外にありません。
解説

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