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日本伝治乱要決 / 應亂卷・守りの備えと夜の戦の心得

守禦第十六地戰の大事これに不過、つねに備る物の變に至て違はず其用をなす、守の意なり、敵來らざる以前に八方より攻るとも屆する所なきと決するは全守なり、故に敵千變萬化してせむるといへども、我に恐るゝ所なし、透ある物に當るべきものゝ備て變に屆く、敵のすきまへ違はずよく當るは禦の意なり、敵來らざる以前に、其虛に乘る所定るは、活禦なり、故に敵十圍五攻すれども屆する所なく、其圖のある所、間に髮をいれず、能く擊て大敵を走らしむ、地戰の大事守禦の上に出る事なし、夜軍第十七晝の反なり、非常なり、晝戰に拙き者の夜軍に功を得る事なく、晝戰に委しき者の夜軍に拙きは蓋あるべし、其時違ばなり、夜軍の主夜を頼むにあらず、夜に乘じて其業を神速にして非常のわざをあらはすにあり、夜軍の號令上下共に決得して其發打に闇が如くなるべし、人數よく熟するとも時を失つて其功なし、時はつねにあり、我より其時を起す時は打べからざるの時なし、其業を求る事なかれ、心神の屆く所暗夜白晝のごとし、

新字:守禦第十六地戦の大事これに不過、つねに備る物の変に至て違はず其用をなす、守の意なり、敵来らざる以前に八方より攻るとも届する所なきと決するは全守なり、故に敵千変万化してせむるといへども、我に恐るゝ所なし、透ある物に当るべきものゝ備て変に届く、敵のすきまへ違はずよく当るは禦の意なり、敵来らざる以前に、其虚に乗る所定るは、活禦なり、故に敵十囲五攻すれども届する所なく、其図のある所、間に髪をいれず、能く撃て大敵を走らしむ、地戦の大事守禦の上に出る事なし、夜軍第十七昼の反なり、非常なり、昼戦に拙き者の夜軍に功を得る事なく、昼戦に委しき者の夜軍に拙きは蓋あるべし、其時違ばなり、夜軍の主夜を頼むにあらず、夜に乗じて其業を神速にして非常のわざをあらはすにあり、夜軍の号令上下共に決得して其発打に闇が如くなるべし、人数よく熟するとも時を失つて其功なし、時はつねにあり、我より其時を起す時は打べからざるの時なし、其業を求る事なかれ、心神の届く所暗夜白昼のごとし、

書き下し

守禦第十六地戰の大事これに不過、つねに備る物の變に至て違はず其用をなす、守の意なり、敵來らざる以前に八方より攻るとも屆する所なきと決するは全守なり、故に敵千變萬化してせむるといへども、我に恐るゝ所なし、透ある物に當るべきものゝ備て變に屆く、敵のすきまへ違はずよく當るは禦の意なり、敵來らざる以前に、其虛に乘る所定るは、活禦なり、故に敵十圍五攻すれども屆する所なく、其圖のある所、間に髮をいれず、能く擊て大敵を走らしむ、地戰の大事守禦の上に出る事なし、夜軍第十七晝の反なり、非常なり、晝戰に拙き者の夜軍に功を得る事なく、晝戰に委しき者の夜軍に拙きは蓋あるべし、其時違ばなり、夜軍の主夜を頼むにあらず、夜に乘じて其業を神速にして非常のわざをあらはすにあり、夜軍の號令上下共に決得して其發打に闇が如くなるべし、人數よく熟するとも時を失つて其功なし、時はつねにあり、我より其時を起す時は打べからざるの時なし、其業を求る事なかれ、心神の屆く所暗夜白晝のごとし、

現代語訳

守禦第十六。地戦の大事はこれに過ぎません。常に備えるものが、変事に至っても違わずその用をなすのが、守の意です。敵が来ない前に、八方から攻められても届くところはないと定めておくのは、全き守りです。ゆえに敵が千変万化して攻めてきても、我に恐れるところはありません。隙のあるものに当たるべき備えが変事に届き、敵の隙間へ違わずよく当たるのが、禦の意です。敵が来ない前に、その虚に乗ずるところが定まっているのは、活きた禦です。ゆえに敵が十重に囲み五たび攻めても届くところがなく、その狙いのあるところは間に髪を入れる余地もなく、よく撃って大敵を敗走させます。地戦の大事は守禦の上に出ることはありません。夜軍第十七。昼の反対です。常ならぬことです。昼の戦が下手な者は夜軍で功を得られず、昼の戦に詳しい者でも夜軍が下手なことは、おそらくあるでしょう。その時が違うからです。夜軍の主は、夜を頼むのではなく、夜に乗じてその業を神速にし、常ならぬ業を現すことにあります。夜軍の号令は上下ともに会得し、その発する様は闇のようであるべきです。人数がよく熟練していても、時を失えば功はありません。時は常にあります。我からその時を起こせば、討てない時はありません。その業を求めてはなりません。心の働きが届くところは、暗い夜も白昼のようです。

解説

守りとは、事が起きる前に備えを固め、変事にも違わず対応できる状態を指し、さらに敵の隙を突く活きた守りにまで至るべきだと説く章です。夜の戦は昼とは時が違うと述べます。現代の管理職にとって、守りはトラブル前の備えと対応手順の整備にあたります。通常とは違う非常時にも動けるよう、平時から号令や役割を共有しておくことが大切です。
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この章句が説くこと

『日本伝治乱要決』高山健貞守禦夜軍備え非常時

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