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日本伝治乱要決 / 自立卷・己を正して道による将の自立

夫人君治道に達するといへども、己正しからざる時は、何によつてか政を執て國人を治むる事を得んや、しかれども治道に不達して己を正せんとする時は、亦獨善者の位をまぬかれず、舊典に曰、人間の靈魂ある、思て道による時は其明天下を照すべし、おもはずして情に任ずる時は其暗身を亡すに至るといへり、道によるときは心おのづから形骸につく事なし、私を放れて國にあたる萬德自然にあらはる、人主の爰にくらき時は何ぞ其治をよくするにたらん、何ぞ亂に應じて逆を制せん、夫可不愼哉、眞妄第一物の精粹これを眞といふ、精粹を失なふ是を妄といふ、人は萬物の靈なり、よく天命にしたがつて地上に立時は三才の德をあらはす、天地に代つて萬物を撫育す、其性を盡すと云ふべし、明將の德天地に渾融する爰を以て也、其靈たる事昭然たり、人天命に從がふ事あたはず、我當所に立ず、人と爭て天地の道に背く、靈にして其靈をうしなふ、愚將の我情にひかれて道に放るゝ爰によつてなり、將たる人國家に立て萬民を敎育せん事こゝに眼をひらかずんば、千想萬思徒らに無用の勞とならん、

新字:夫人君治道に達するといへども、己正しからざる時は、何によつてか政を執て国人を治むる事を得んや、しかれども治道に不達して己を正せんとする時は、亦独善者の位をまぬかれず、旧典に曰、人間の霊魂ある、思て道による時は其明天下を照すべし、おもはずして情に任ずる時は其暗身を亡すに至るといへり、道によるときは心おのづから形骸につく事なし、私を放れて国にあたる万徳自然にあらはる、人主の爰にくらき時は何ぞ其治をよくするにたらん、何ぞ乱に応じて逆を制せん、夫可不慎哉、真妄第一物の精粋これを真といふ、精粋を失なふ是を妄といふ、人は万物の霊なり、よく天命にしたがつて地上に立時は三才の徳をあらはす、天地に代つて万物を撫育す、其性を尽すと云ふべし、明将の徳天地に渾融する爰を以て也、其霊たる事昭然たり、人天命に従がふ事あたはず、我当所に立ず、人と争て天地の道に背く、霊にして其霊をうしなふ、愚将の我情にひかれて道に放るゝ爰によつてなり、将たる人国家に立て万民を教育せん事こゝに眼をひらかずんば、千想万思徒らに無用の労とならん、

書き下し

夫人君治道に達するといへども、己正しからざる時は、何によつてか政を執て國人を治むる事を得んや、しかれども治道に不達して己を正せんとする時は、亦獨善者の位をまぬかれず、舊典に曰、人間の靈魂ある、思て道による時は其明天下を照すべし、おもはずして情に任ずる時は其暗身を亡すに至るといへり、道によるときは心おのづから形骸につく事なし、私を放れて國にあたる萬德自然にあらはる、人主の爰にくらき時は何ぞ其治をよくするにたらん、何ぞ亂に應じて逆を制せん、夫可不愼哉、眞妄第一物の精粹これを眞といふ、精粹を失なふ是を妄といふ、人は萬物の靈なり、よく天命にしたがつて地上に立時は三才の德をあらはす、天地に代つて萬物を撫育す、其性を盡すと云ふべし、明將の德天地に渾融する爰を以て也、其靈たる事昭然たり、人天命に從がふ事あたはず、我當所に立ず、人と爭て天地の道に背く、靈にして其靈をうしなふ、愚將の我情にひかれて道に放るゝ爰によつてなり、將たる人國家に立て萬民を敎育せん事こゝに眼をひらかずんば、千想萬思徒らに無用の勞とならん、

現代語訳

君主が治道に達していても、己が正しくなければ、何によって政を執り国の人を治めることができるでしょうか。しかし、治道に達しないまま己を正そうとするときは、また独善者の位を免れません。旧典(古い書物)に、人間に霊魂があって、思って道によるときは、その明るさは天下を照らすでしょうし、思わずに情に任せるときは、その暗さは身を亡ぼすに至る、とあります。道によるときは、心は自然と形骸(肉体)に引かれることがありません。私を離れて国に当たれば、あらゆる徳が自然に現れます。君主がここに暗いときは、どうしてその治をよくできるでしょうか。どうして乱に応じて逆らう者を抑えられるでしょうか。慎まずにいられましょうか。真妄第一 物の精粋を真といいます。精粋を失うことを妄といいます。人は万物の霊です。よく天命に従って地上に立つときは、三才(天・地・人)の徳を現します。天地に代わって万物をいつくしみ育てます。その性を尽くすというべきでしょう。明将の徳が天地に溶け合っているのは、このためです。その霊であることは明らかです。人が天命に従うことができず、自分の立つべき所に立たず、人と争って天地の道に背くときは、霊でありながらその霊を失います。愚将が自分の情に引かれて道から離れるのは、このためです。将たる人が国家に立って万民を教え育てようとするとき、ここに眼を開かなければ、千の想い万の思いもむなしく無用の労となるでしょう。

解説

君主が治道を知っていても、己が正しくなければ人を治められず、かといって治道を知らずに己だけ正すのは独善に終わると、序は述べます。真妄の章は、人は万物の霊であり、天命に従えば徳が現れ、情に引かれれば霊を失うと説きます。管理職にとっては、知識や手法と、人格の修養の両方が必要だという意味です。私情を離れて職務に向き合うほど、周囲に自然と信頼が集まります。
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人生を、一行の式にしてみた。

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この章句が説くこと

『日本伝治乱要決』高山健貞真妄治道己を正す修養

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