日本伝治乱要決 / 治基卷・成敗・知機・不朽の三つの見極め
成敗第十四國を治て廣く事にわたるに及んて、物のなるべきあり破るべきあり、なるべきをわきまへず、敗るべきをかへり見ず、積て國害をなすあり、心道にある時は、なるべきをなして破るべきを保つ、これに依て國治る、心情にひかるゝ時は、なるべきを知てなす事あたわず、敗るべきを知て保つ事あたわず、依之國亡ぶるに至る、よく成敗の機に達する人は何國へ行としてか、治をなす事あたはざらんや、知機第十五有萌は萬人の見て知る所なり、未萌は萬人の見る事あたはざる所なり、事の顯はるゝ時に當つてこれに應ぜんとなすは、驢馬の驥足を追にひとし、おくれて其用をなす事なし、未萌に達する時は其事來らざる前に應ずる事そなはる、故に時に當つてこれに應ずると水の火を鎭むるが如し、其業悉く圖に叶ふ、治は亂の機なり、豐は凶の機なり、生は死の機なり、何ぞ遠きにあらん、咫尺皆機にあらずといふ事なし、不朽第十六治をなすの大なる、一代にして其功を見るとなかれ、世々にして德澤下に溢れ、至治自然になる、道はよく不朽をなし、巧業は必ず短折す、おのれを正して來るに應ず、我より彼を貪るにあらず、かれ來て我に合ふ、善治をなさんと欲する者、爰にくらき時は千萬業を盡すとも、國家永久の政を執る事あたわず、
新字:成敗第十四国を治て広く事にわたるに及んて、物のなるべきあり破るべきあり、なるべきをわきまへず、敗るべきをかへり見ず、積て国害をなすあり、心道にある時は、なるべきをなして破るべきを保つ、これに依て国治る、心情にひかるゝ時は、なるべきを知てなす事あたわず、敗るべきを知て保つ事あたわず、依之国亡ぶるに至る、よく成敗の機に達する人は何国へ行としてか、治をなす事あたはざらんや、知機第十五有萌は万人の見て知る所なり、未萌は万人の見る事あたはざる所なり、事の顕はるゝ時に当つてこれに応ぜんとなすは、驢馬の驥足を追にひとし、おくれて其用をなす事なし、未萌に達する時は其事来らざる前に応ずる事そなはる、故に時に当つてこれに応ずると水の火を鎮むるが如し、其業悉く図に叶ふ、治は乱の機なり、豊は凶の機なり、生は死の機なり、何ぞ遠きにあらん、咫尺皆機にあらずといふ事なし、不朽第十六治をなすの大なる、一代にして其功を見るとなかれ、世々にして徳沢下に溢れ、至治自然になる、道はよく不朽をなし、巧業は必ず短折す、おのれを正して来るに応ず、我より彼を貪るにあらず、かれ来て我に合ふ、善治をなさんと欲する者、爰にくらき時は千万業を尽すとも、国家永久の政を執る事あたわず、
書き下し
成敗第十四國を治て廣く事にわたるに及んて、物のなるべきあり破るべきあり、なるべきをわきまへず、敗るべきをかへり見ず、積て國害をなすあり、心道にある時は、なるべきをなして破るべきを保つ、これに依て國治る、心情にひかるゝ時は、なるべきを知てなす事あたわず、敗るべきを知て保つ事あたわず、依之國亡ぶるに至る、よく成敗の機に達する人は何國へ行としてか、治をなす事あたはざらんや、知機第十五有萌は萬人の見て知る所なり、未萌は萬人の見る事あたはざる所なり、事の顯はるゝ時に當つてこれに應ぜんとなすは、驢馬の驥足を追にひとし、おくれて其用をなす事なし、未萌に達する時は其事來らざる前に應ずる事そなはる、故に時に當つてこれに應ずると水の火を鎭むるが如し、其業悉く圖に叶ふ、治は亂の機なり、豐は凶の機なり、生は死の機なり、何ぞ遠きにあらん、咫尺皆機にあらずといふ事なし、不朽第十六治をなすの大なる、一代にして其功を見るとなかれ、世々にして德澤下に溢れ、至治自然になる、道はよく不朽をなし、巧業は必ず短折す、おのれを正して來るに應ず、我より彼を貪るにあらず、かれ來て我に合ふ、善治をなさんと欲する者、爰にくらき時は千萬業を盡すとも、國家永久の政を執る事あたわず、
現代語訳
成敗第十四 国を治めて広く事に及ぶと、物事には成るべきものも破れるべきものもあり、成るべきものを弁えず、破れるべきものを顧みず、それが積もって国の害となることがあります。心が道にあるときは、成るべきものを成し、破れるべきものを保ちます。これによって国は治まります。心が情に引かれるときは、成るべきことを知っても成すことができず、破れるべきことを知っても保つことができません。これによって国は亡ぶに至ります。よく成敗の機に達した人は、どの国へ行っても治を行えないことがあるでしょうか。知機第十五 萌しがあるものは万人が見て知るところです。まだ萌さないものは、万人が見ることのできないところです。事が顕れたときになってこれに応じようとするのは、驢馬が驥(千里の名馬)の足を追うのと同じで、遅れて役に立ちません。未萌に達するときは、その事が来る前に応じる備えができます。ゆえに、事に当たって応じるのは水で火を鎮めるようなもので、その業はことごとく図に叶います。治は乱の機であり、豊は凶の機であり、生は死の機です。どうして遠いことがありましょう。身近なものはみな機でないものはありません。不朽第十六 治を行う大事は、一代でその功を見ようとしてはなりません。代々にわたって徳沢が下に溢れ、至治が自然に成るのです。道はよく不朽をなし、巧みな業は必ず短命に終わります。己を正して来るものに応じます。我から彼を貪り求めるのではなく、彼が来て我に合うのです。善い治を行おうとする者が、ここに暗いときは、千万の業を尽くしても、国家永久の政を執ることはできません。
解説

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