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日本伝治乱要決 / 治基卷・治基巻・地力第十と鍛鍊第十一

地力第十萬物を載て磷がず、これ地の德なり、萬物をして天命のまゝに增長なす、これ地の功なり、人天地の間に立て天命に從つて地上の物を盡す時は、地力おのづからあらわるべし、天下國家を治め萬人をして各其居をやすんぜしむる事、みな地上の物によつてなる、唯人智の不達所、あるひは地いまだ其力をつくさず、自から功を見るとなきあり、回天の力ありとも、生ずまじきの地にして物を得る事なし、山に魚を求め海に樹木を尋るの類なり、一國あれば人民あり、萬物あり、必や其國中の物にして其人民を養ふ事自然の天命なり、其地の物を以て其人民を養ふとあたはず、他國の物を求てこれを撫育せんとす、果して饑渴の災をとる、地力を盡さゞるによつてなり、有を有とし無を無として、生ずべきをよく生ぜしむる時は、諸國自から有無を通じて不足ある事なし、富國の本全く爰にあり、鍛鍊第十一人をして人の用をなさしむる、これを鍛といふ、人を集めて國の用をなさしむ、是を鍊と云ふ、人々生れながらにして知る者にあらず、業によつて心正しく氣力のぶ、始めて自己の用をなすにたれり、人々己が業に達するといへども、大衆一連せざれば國の用をなし、勝負の業をまつたくする事なし、士卒をして武術をならはしめ、農をして耕作を勤めしむるは鍛なり、士類當所を失はず、一連して上に從がひ、農一郡一村連和して相輔け相すくはしむるは鍊なり、人を治て其用をなさしむる、鍛鍊の外に出る事なし、

新字:地力第十万物を載て磷がず、これ地の徳なり、万物をして天命のまゝに增長なす、これ地の功なり、人天地の間に立て天命に従つて地上の物を尽す時は、地力おのづからあらわるべし、天下国家を治め万人をして各其居をやすんぜしむる事、みな地上の物によつてなる、唯人智の不達所、あるひは地いまだ其力をつくさず、自から功を見るとなきあり、回天の力ありとも、生ずまじきの地にして物を得る事なし、山に魚を求め海に樹木を尋るの類なり、一国あれば人民あり、万物あり、必や其国中の物にして其人民を養ふ事自然の天命なり、其地の物を以て其人民を養ふとあたはず、他国の物を求てこれを撫育せんとす、果して饑渇の災をとる、地力を尽さゞるによつてなり、有を有とし無を無として、生ずべきをよく生ぜしむる時は、諸国自から有無を通じて不足ある事なし、富国の本全く爰にあり、鍛錬第十一人をして人の用をなさしむる、これを鍛といふ、人を集めて国の用をなさしむ、是を錬と云ふ、人々生れながらにして知る者にあらず、業によつて心正しく気力のぶ、始めて自己の用をなすにたれり、人々己が業に達するといへども、大衆一連せざれば国の用をなし、勝負の業をまつたくする事なし、士卒をして武術をならはしめ、農をして耕作を勤めしむるは鍛なり、士類当所を失はず、一連して上に従がひ、農一郡一村連和して相輔け相すくはしむるは錬なり、人を治て其用をなさしむる、鍛錬の外に出る事なし、

書き下し

地力第十萬物を載て磷がず、これ地の德なり、萬物をして天命のまゝに增長なす、これ地の功なり、人天地の間に立て天命に從つて地上の物を盡す時は、地力おのづからあらわるべし、天下國家を治め萬人をして各其居をやすんぜしむる事、みな地上の物によつてなる、唯人智の不達所、あるひは地いまだ其力をつくさず、自から功を見るとなきあり、回天の力ありとも、生ずまじきの地にして物を得る事なし、山に魚を求め海に樹木を尋るの類なり、一國あれば人民あり、萬物あり、必や其國中の物にして其人民を養ふ事自然の天命なり、其地の物を以て其人民を養ふとあたはず、他國の物を求てこれを撫育せんとす、果して饑渴の災をとる、地力を盡さゞるによつてなり、有を有とし無を無として、生ずべきをよく生ぜしむる時は、諸國自から有無を通じて不足ある事なし、富國の本全く爰にあり、鍛鍊第十一人をして人の用をなさしむる、これを鍛といふ、人を集めて國の用をなさしむ、是を鍊と云ふ、人々生れながらにして知る者にあらず、業によつて心正しく氣力のぶ、始めて自己の用をなすにたれり、人々己が業に達するといへども、大衆一連せざれば國の用をなし、勝負の業をまつたくする事なし、士卒をして武術をならはしめ、農をして耕作を勤めしむるは鍛なり、士類當所を失はず、一連して上に從がひ、農一郡一村連和して相輔け相すくはしむるは鍊なり、人を治て其用をなさしむる、鍛鍊の外に出る事なし、

現代語訳

地力第十。万物を載せてすり減らない、これが地の徳です。万物を天命のままに成長させる、これが地の功です。人が天地の間に立って天命に従い、地の上の物を尽くすときは、地力はおのずとあらわれるはずです。天下国家を治めて万人にそれぞれの居所を安んじさせることは、みな地の上の物によって成ります。ただ人智の及ばない所があり、あるいは地がまだその力を尽くしておらず、自ら功を見ないことがあります。回天(世を一変させる)の力があっても、生じないはずの地で物を得ることはできません。山に魚を求め、海に樹木を尋ねるような類です。一国があれば人民があり、万物があります。必ずその国の中の物でその人民を養うことが、自然の天命です。その地の物でその人民を養うことができず、他国の物を求めて養おうとして、果たして飢えと渇きの災いを招きます。地力を尽くさないからです。有るものを有るとし、無いものを無いとして、生じるべきものをよく生じさせるときは、諸国はおのずから有無を通じて不足がありません。富国の本は全くここにあります。鍛鍊第十一。人を人の用にならせることを鍛といいます。人を集めて国の用にならせることを鍊といいます。人々は生まれながらに知る者ではありません。業によって心が正しくなり気力が伸び、はじめて自己の用をなすに足ります。人々が自分の業に達しても、大衆が一つに連ならなければ、国の用をなし、勝負の業を全うすることはできません。士卒に武術を習わせ、農に耕作を勤めさせることは鍛です。士の類がその所を失わず、一つに連なって上に従い、農が一郡一村で連なり和して、互いに輔け互いに救わせることは鍊です。人を治めてその用をなさせることは、鍛鍊の外に出ません。

解説

第十条は、国には国の土地に合った産物があり、その地力を尽くして人を養うのが富国の本だと述べます。山に魚を求めるような無理をせず、有るものを活かすという考えです。第十一条の鍛鍊は、個人の技を磨く鍛と、人を束ねて組織の力にする鍊の二つです。管理職は、自社の資源や強みを見極めて勝負の場を選び、個々の育成と、チームとして連携する仕組みづくりを両輪で進めることが求められます。
『人生の方程式』の表紙

人生を、一行の式にしてみた。

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この章句が説くこと

『日本伝治乱要決』高山健貞地力鍛錬富国資源

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