日本伝治乱要決 / 治基卷・治基巻・人情第九と七情の統べ方
人情第九喜怒哀樂愛惡欲、これ人間の七情なり、心の物にふれて動くものなり、人の靈たるこれあるによる、人の不善をなす叉これあるによる、萬人形を異にすれば其物にふれて動く所も人々異なり、たとへば數人を集めて見るに、よろこぶ者あり、怒る者あり、かなしむものあり、樂しむものあり、一樣なる事なし、一樣ならざる者をして一やうならしめざれば、治をなすとあたわず、凡人より所ある時に情となりといへどもよく一連なす、より所を失なふ時は同情の人も各趣をとにす、一條の目當立ときは、いかつてよる者あり、喜んでよる者あり、哀んでよるものあり、樂んでよるものあり、其情甚だたがふといへども、よる所は一樣なり、人情を知る、治術の深秘なり、察せずんばあるべからず、
新字:人情第九喜怒哀楽愛悪欲、これ人間の七情なり、心の物にふれて動くものなり、人の霊たるこれあるによる、人の不善をなす叉これあるによる、万人形を異にすれば其物にふれて動く所も人々異なり、たとへば数人を集めて見るに、よろこぶ者あり、怒る者あり、かなしむものあり、楽しむものあり、一様なる事なし、一様ならざる者をして一やうならしめざれば、治をなすとあたわず、凡人より所ある時に情となりといへどもよく一連なす、より所を失なふ時は同情の人も各趣をとにす、一条の目当立ときは、いかつてよる者あり、喜んでよる者あり、哀んでよるものあり、楽んでよるものあり、其情甚だたがふといへども、よる所は一様なり、人情を知る、治術の深秘なり、察せずんばあるべからず、
書き下し
人情第九喜怒哀樂愛惡欲、これ人間の七情なり、心の物にふれて動くものなり、人の靈たるこれあるによる、人の不善をなす叉これあるによる、萬人形を異にすれば其物にふれて動く所も人々異なり、たとへば數人を集めて見るに、よろこぶ者あり、怒る者あり、かなしむものあり、樂しむものあり、一樣なる事なし、一樣ならざる者をして一やうならしめざれば、治をなすとあたわず、凡人より所ある時に情となりといへどもよく一連なす、より所を失なふ時は同情の人も各趣をとにす、一條の目當立ときは、いかつてよる者あり、喜んでよる者あり、哀んでよるものあり、樂んでよるものあり、其情甚だたがふといへども、よる所は一樣なり、人情を知る、治術の深秘なり、察せずんばあるべからず、
現代語訳
人情第九。喜・怒・哀・楽・愛・悪・欲、これが人間の七情です。心が物に触れて動くものです。人が万物の霊であるのはこれがあるからです。人が不善をなすのもまたこれがあるからです。万人は形が異なるので、物に触れて動く所も人々で異なります。たとえば数人を集めて見ると、喜ぶ者があり、怒る者があり、悲しむ者があり、楽しむ者があって、一様ではありません。一様でない者を一つにしなければ、治めをなすことはできません。およそ人はよりどころがあるときに情となりますが、よく一つに連なります。よりどころを失うときは、同じ情の人も各々の趣を異にします。一筋の目当てが立てば、怒ってよる者もあり、喜んでよる者もあり、哀しんでよる者もあり、楽しんでよる者もあります。その情は大いに違っても、よる所は同じです。人情を知ることは、治術の深い秘密です。察しないではいられません。
解説

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礼記・礼運何をか人情と謂う。喜・怒・哀・懼・愛・悪・欲、七者は学ばずして能くす。何をか人義と謂う。父は慈、子は孝、兄は良、弟は弟(てい)、夫は義、婦は聴、長は恵、幼は順、君は仁、臣は忠、十者、之を人義と謂う。信を講じ睦を脩むる、之を人利と謂う。争奪して相殺す、之を人患と謂う。故に聖人の人の七情を治め、十義を脩め、信を講じ睦を脩め、辞譲を尚び、争奪を去る所以は、礼を舎(す)てて何を以て之を治めんや。飲食男女は、人の大欲存す。死亡貧苦は、人の大悪存す。故に欲悪は、心の大端なり。人其の心を蔵して、測度すべからざるなり。美悪皆其の心に在りて、其の色に見(あら)われず。一以て之を窮めんと欲せば、礼を舎てて何を以てせんや。
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