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名将言行録 / 『名将言行録』加藤清正 家中に示した七箇条

○清正、家中へ申渡す七箇條に曰く、大身小身に寄らず、覺悟すべき條々。第一、奉公の道油斷すべからず、朝寅の刻に起き候て、兵法を使ひ飯を喰ひ、弓を射、鐵砲を打、馬に乘るべく候、武士の嗜み能き者には、別けて加增遣はすべく候事。第二、娯に出べく候はゞ、鷹野、鹿狩、相撲、箇樣の儀にて遊山すべき事。第三、衣類の事、木綿紬の間たるべし、衣類に金銀を費し、手前ならざる旨申す者、曲事たるべく候、且つ不斷身上相應に武具を嗜む人を扶持すべく、軍用の時は、金銀遣ふべく候事。第四、常に傍輩つき合、客一人亭主の外、咄、中間數候、食は黒米飯たるべし、但武藝修行の時は、多人數出合すべき事。第五、軍體の法、侍の存じ知るべき事、入らざることは華麗を好む者、曲事たるべき事。第六、亂舞方一圓停止たり、太刀を取れば、人を斬らんと思ふ、然る上は、萬事は一心の置處より生ずるものにて候間、武藝の外亂舞稽古の輩切腹を加ふべき事。第七、學問の事精を入るべし、兵書を讀み、忠孝の心掛け專要たるべし、詩、聯句、歌を讀む事停止たり、心に華奢風流なる手弱きことを存じ候へば、如何にも女の樣になるものにて候、武士の家に生れてよりは、太刀、刀を取て死する道本意□り。常々武士道の吟味をせざれば、潔き死は仕にくきものにて候間、能々心を武に勇むること肝要に候事。右の條々夙夜相守るべく、若し右の箇條勤め難しと存ずる輩之あるに於ては、暇を申すべく速かに吟味を遂げ男道のならざる者の印を付け、追放すべき事、疑あるべからず、依て件の如しと。

新字:○清正、家中へ申渡す七箇条に曰く、大身小身に寄らず、覚悟すべき条々。第一、奉公の道油断すべからず、朝寅の刻に起き候て、兵法を使ひ飯を喰ひ、弓を射、鉄砲を打、馬に乗るべく候、武士の嗜み能き者には、別けて加增遣はすべく候事。第二、娯に出べく候はゞ、鷹野、鹿狩、相撲、箇様の儀にて遊山すべき事。第三、衣類の事、木綿紬の間たるべし、衣類に金銀を費し、手前ならざる旨申す者、曲事たるべく候、且つ不断身上相応に武具を嗜む人を扶持すべく、軍用の時は、金銀遣ふべく候事。第四、常に傍輩つき合、客一人亭主の外、咄、中間数候、食は黒米飯たるべし、但武芸修行の時は、多人数出合すべき事。第五、軍体の法、侍の存じ知るべき事、入らざることは華麗を好む者、曲事たるべき事。第六、乱舞方一円停止たり、太刀を取れば、人を斬らんと思ふ、然る上は、万事は一心の置処より生ずるものにて候間、武芸の外乱舞稽古の輩切腹を加ふべき事。第七、学問の事精を入るべし、兵書を読み、忠孝の心掛け専要たるべし、詩、聯句、歌を読む事停止たり、心に華奢風流なる手弱きことを存じ候へば、如何にも女の様になるものにて候、武士の家に生れてよりは、太刀、刀を取て死する道本意□り。常々武士道の吟味をせざれば、潔き死は仕にくきものにて候間、能々心を武に勇むること肝要に候事。右の条々夙夜相守るべく、若し右の箇条勤め難しと存ずる輩之あるに於ては、暇を申すべく速かに吟味を遂げ男道のならざる者の印を付け、追放すべき事、疑あるべからず、依て件の如しと。

書き下し

○清正、家中へ申渡す七箇條に曰く、大身小身に寄らず、覺悟すべき條々。第一、奉公の道油斷すべからず、朝寅の刻に起き候て、兵法を使ひ飯を喰ひ、弓を射、鐵砲を打、馬に乘るべく候、武士の嗜み能き者には、別けて加增遣はすべく候事。第二、娯に出べく候はゞ、鷹野、鹿狩、相撲、箇樣の儀にて遊山すべき事。第三、衣類の事、木綿紬の間たるべし、衣類に金銀を費し、手前ならざる旨申す者、曲事たるべく候、且つ不斷身上相應に武具を嗜む人を扶持すべく、軍用の時は、金銀遣ふべく候事。第四、常に傍輩つき合、客一人亭主の外、咄、中間數候、食は黒米飯たるべし、但武藝修行の時は、多人數出合すべき事。第五、軍體の法、侍の存じ知るべき事、入らざることは華麗を好む者、曲事たるべき事。第六、亂舞方一圓停止たり、太刀を取れば、人を斬らんと思ふ、然る上は、萬事は一心の置處より生ずるものにて候間、武藝の外亂舞稽古の輩切腹を加ふべき事。第七、學問の事精を入るべし、兵書を讀み、忠孝の心掛け專要たるべし、詩、聯句、歌を讀む事停止たり、心に華奢風流なる手弱きことを存じ候へば、如何にも女の樣になるものにて候、武士の家に生れてよりは、太刀、刀を取て死する道本意□り。常々武士道の吟味をせざれば、潔き死は仕にくきものにて候間、能々心を武に勇むること肝要に候事。右の條々夙夜相守るべく、若し右の箇條勤め難しと存ずる輩之あるに於ては、暇を申すべく速かに吟味を遂げ男道のならざる者の印を付け、追放すべき事、疑あるべからず、依て件の如しと。

現代語訳

清正が家中へ申し渡した七箇条に言う。大身小身によらず、心得るべき箇条。第一、奉公の道に油断してはならない。朝は寅の刻に起き、兵法を使い、飯を食い、弓を射、鉄砲を撃ち、馬に乗るべきである。武士の嗜みのよい者には、とりわけ加増を与えること。第二、遊びに出るなら、鷹野、鹿狩り、相撲、このようなことで遊山すること。第三、衣類は木綿と紬の間とすること。衣類に金銀を費やし、手元が苦しいと言う者は曲事である。また、普段から身上に応じて武具を嗜む人を扶持し、軍用のときは金銀を使うこと。第四、常に同輩と付き合い、客は一人、亭主のほか、話の相手や中間の数も少人数とし、食事は黒米の飯とすること。ただし武芸修行のときは多人数が集まってよい。第五、軍の体制の法は、侍が知っておくべきこと。不要なことで華麗を好む者は曲事である。第六、乱舞は一切停止する。太刀を取れば人を斬ろうと思う。そうである以上、万事は一心の置きどころから生ずるものだから、武芸のほかに乱舞を稽古する者は切腹を申し付ける。第七、学問に精を入れること。兵書を読み、忠孝の心掛けが専要である。詩、聯句、歌を詠むことは停止する。心に華奢風流な弱々しいことを思えば、いかにも女のようになるものである。武士の家に生まれた以上は、太刀、刀を取って死ぬ道が本意である。常々武士道の吟味をしなければ、潔い死は難しいものだから、よくよく心を武に励ますことが肝要である。右の条々を朝夕守ること。もし右の箇条を勤めがたいと思う者があれば、暇を出し、速やかに吟味を遂げ、男道にならない者の印を付けて、追放すること、疑いはない。よって件のとおり、と。

解説

清正が家中に示したと伝わる七箇条で、早起きの鍛錬、質素な衣服、華美の禁止、学問と兵書の読書が並びます。詩や歌を禁じて「女の様になる」と戒める箇所は、当時の武家の価値観の表れで、そのまま今の基準にはなりません。ただ、日々の心がけを具体的な行動に落とし、守れない者には去ってもらうと明言する点は、組織の規律の作り方として読めます。原文には字の欠けがあり、意味は前後から読むほかありません。
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この章句が説くこと

七箇条寅の刻倹約武芸学問規律

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