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名将言行録 / 『名将言行録』加藤嘉明 飾らぬ具足と念入りの兜

○嘉明曰く、世間に具足の物好種々する中に、金銀にて美麗に仕立たるは、我好まざる所なり、何にとなれば、美麗の具足著たる敵に逢ては、是小性廻の者か如何樣不案内の敵と見こなして、鎗も仕善きものなり、美麗は入らぬものなり、如何にも黑みたる出立は、思ひ入深きものなりと。又曰く、胄は念を入れ拵ゆべきなり、何となれば、首に付け、敵に取られ、大將の前に出るものなり、甲は麁相にすべし、是何方にも棄らるゝものなればなりと。故に、嘉明の胄は、殊の外結構なり、又陣羽織は、白木綿に、黑く紋を畫し計りなり、小袴は木綿もあり、又麻もありしが、如何にも麁相なりとぞ。

新字:○嘉明曰く、世間に具足の物好種々する中に、金銀にて美麗に仕立たるは、我好まざる所なり、何にとなれば、美麗の具足著たる敵に逢ては、是小性廻の者か如何様不案内の敵と見こなして、鎗も仕善きものなり、美麗は入らぬものなり、如何にも黒みたる出立は、思ひ入深きものなりと。又曰く、胄は念を入れ拵ゆべきなり、何となれば、首に付け、敵に取られ、大将の前に出るものなり、甲は麁相にすべし、是何方にも棄らるゝものなればなりと。故に、嘉明の胄は、殊の外結構なり、又陣羽織は、白木綿に、黒く紋を画し計りなり、小袴は木綿もあり、又麻もありしが、如何にも麁相なりとぞ。

書き下し

○嘉明曰く、世間に具足の物好種々する中に、金銀にて美麗に仕立たるは、我好まざる所なり、何にとなれば、美麗の具足著たる敵に逢ては、是小性廻の者か如何樣不案内の敵と見こなして、鎗も仕善きものなり、美麗は入らぬものなり、如何にも黑みたる出立は、思ひ入深きものなりと。又曰く、胄は念を入れ拵ゆべきなり、何となれば、首に付け、敵に取られ、大將の前に出るものなり、甲は麁相にすべし、是何方にも棄らるゝものなればなりと。故に、嘉明の胄は、殊の外結構なり、又陣羽織は、白木綿に、黑く紋を畫し計りなり、小袴は木綿もあり、又麻もありしが、如何にも麁相なりとぞ。

現代語訳

嘉明は言った。「世間では具足に様々な趣向を凝らすが、金銀で美麗に仕立てたものは、私の好まないところだ。なぜなら、美麗な具足を着た敵に出会うと、これは小姓回りの者か、よほど不案内な敵と見て、槍もつけやすいからだ。美麗なものは要らない。いかにも黒ずんだ出で立ちは、思い入れが深いものである」と。また言った。「兜は念を入れて拵えるべきである。なぜなら、首に付け、敵に取られて、大将の前に出るものだからだ。甲(鎧)は粗末にしてよい。それはどこにでも捨てられるものだからだ」と。このため、嘉明の兜はことのほか立派で、陣羽織は白木綿に黒く紋を描いただけであった。小袴は木綿のものも麻のものもあったが、いかにも粗末であったという。

解説

嘉明は、見栄えのための装いを退け、実戦で意味のあるところにだけ手をかけました。美麗な具足は敵に侮られて的になり、兜は討たれた後に大将の前に出るものだから念入りに、鎧は捨てられるから粗末に、という理屈です。現代でいえば、見かけより中身に資源を割く姿勢です。ただし、見た目で信頼を得る場面もありますから、兜の部分の手入れに相当する、最後に評価される箇所を見極める力が要ります。なお、この逸話は嘉明の言葉として伝わるもので、細部の確かさは慎重に見る必要があります。
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この章句が説くこと

嘉明具足実質重視兜と鎧飾らない優先順位

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